未来の「成績表」と「先生」を、子どもたちの元へ。教育更新への一歩を踏み出す!
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未来の「成績表」と「先生」を、子どもたちの元へ。教育更新への一歩を踏み出す!
学校の枠にとらわれず、教育・学びの機会を創出しようとしている若者たちが、100BANCHには多く集まっています。教育を受ける年代でもあるZ世代のメンバーたちが教育現場に新しい風を吹かせようという取り組みの背景には、どのような想いや目指す未来があるのでしょうか?
ナナナナ祭2024の3日目となる7月9日にはトークイベント「Z世代による教育論」を開催。教育分野における様々な活動の実践者として活躍する若者たちをパネリストとし、それぞれが捉えた教育の理想と現実を語り合いました。本レポートではそのトークをピックアップしてお届けします。
登壇者 福島 創太|教育社会学者 田中 あゆみ|lightful プロジェクトリーダー /一般社団法人lightful 代表理事/GARAGE Program13期生 安田莉子|Online Yomikikase YOMY! プロジェクトリーダー /株式会社YOMY CEO/GARAGE Program 62期 堀口 野明|Classroom Adventures MOGURAプロジェクトリーダー/Classroom Adventure CEO/GARAGE Program69期生 中津井 楓真|HsP’eers プロジェクトリーダー/学生団体 HsP’eers 代表/GARAGE Program 71期 |
──教育社会学者の福島さんがファシリテーターとなり、教育に関する取り組みをするZ世代の登壇者に問いかけていくかたちでイベントが始まります。
福島:本日のテーマは「Z世代による教育論」。自分もZ世代という方は共感や同じ時代を生きる中こんなことをやっているんだと発見や驚きがあるかもしれません。違う世代の方々は、Z世代すごいな、そういう問題意識なんだ、と気づきがあったり、今の学校教育に対する問題提起が見えてくるかもしれません。教育はすべての市民にとって非常に重要なテーマだと思います。本日のこのイベントの中で、問題意識や、何か取り組んでみよう、という芽が生まれてきたら良いなと思っています。
ぼくは大学院の博士課程に在籍して教育社会学を専攻しており、教育政策や生徒に教育プログラムを提供して、事前事後の調査をしながらどんな取り組みができたのか研究しています。最近よく行われている「探求学習」で使われる教材を開発したり、先生向けの研修などもやっています。教育というテーマの実践者かつ研究者でもある側面から、みなさんの実践に問いかけていければと思います。まずはみなさんの現在の取り組みを教えてください。
田中:私は「生徒1人1人にスポットライトを」というビジョンを掲げ、一般社団法人lightfulの代表理事を務めています。高校生の頃、なんで生徒が納得しない学校があるんだろう、なんで先生とこんなにぶつかるんだろう、と思っていました。でも、先生のことは大好きで、学校の先生の発言が本意ではないことに気づいてこの団体を立ち上げました。学校インターンのしくみ作りをしたり、学校のOG・OBが母校を手伝えるようなしくみをつくったり、課題解決型教員研修「LEAMP」という研修プログラムをつくったり、もっと簡単に学校と学生が繋がれるようなプラットフォームを開発したりしています。また、愛媛県にあるFC今治高校で学校の先生もやっています。自分が助けたいと思っている学校の先生という存在になってみて色々とわかってきたこともあるので本日はその視点でもお話できたらと思います。
安田:私は株式会社YOMYの代表を務めながら大学院生でもあります。慶應義塾大学の理工学部でAIの研究をしながら、子ども向けの読み聞かせサービスを立ち上げました。家事に仕事に子育てに、とにかく忙しいママ、パパの悩みを解決したいと思って立ち上げたのが読み聞かせサービス「YOMY!」です。日本で読み聞かせといえば、大人が読んで子どもは静かに聞くイメージですが、海外の教育を取り入れて、絵本を読むだけにとどまらず、アウトプットの時間を取り入れたレッスンを届けています。
堀口:Classroom Adventure MOGURAの堀口です。ぼくたちは教育コンテンツを楽しいものにして学校に届ける活動をしています。大学の同じ研究室の3人で始め、今は10人ほどの団体になりました。メンバーの教育のバックグラウンドが多様なことが特徴で、例えばぼくは18年間アメリカで生まれ育って3年前に初めて日本に来ました。他のメンバーもカナダや中国の学校に通ったりと色々な教育的バックグラウンドを持っています。そんな中共通しているのは「学校が面白くなかった」という経験があることです。だから自分たちでもっと面白いものをつくっちゃおう、という団体です。
例えば、メディアリテラシーの授業を楽しいものにするため、アニメの世界で冒険するような2時間のコンテンツで学べるプログラムを作って届けています。去年の4月、初めて学校に導入していただき、現在約3,000人がそれを使って学んでいます。6カ国3言語に対応したコンテンツで、週1〜2程度のペースで学校を回って授業もやっています。
中津井:今年の3月に高校を卒業し、現在、学生NPOのHsP’eers の代表理事を務めています、中津井楓真です。HsP’eers は学校教育を中心に教育現場改革を行っている団体です。ぼくは小5の時に日本の学校で不登校を経験しました。香港で生まれて日本に来た後、幼少期のほとんどをアメリカで過ごしてまた日本に帰ってきました。最初はすごく楽しく通ってたのに急にパタンと不登校になってしまいました。中学校でも自分自身が何者かもわからず、行ったり来たりの生活をしている時、HSPという気質の存在を知りました。世界の人口の5人に1人がHSPと言われていて、不登校の数も毎年爆増しているということもわかり、不登校をなんとかできないかと考え、公教育の小学校、中学校、教育委員会などに講演やプレゼンテーションを行っています。
プロダクトとしては、メタバース空間でみんなで通いやすい学校をつくっています。現実の学校と理想の学校を比較した時の「差」がみんなが抱えているモヤモヤや生きにくさの部分です。生徒主体で、どうやってそこにたどり着けるかみんなで考える45分〜2時間ぐらいのものを提供しています。
福島:みなさんそれぞれ、今やっている取り組みの形になった理由を聞きたいです。
中津井:経済的にも人材的にも教育現場は本当に逼迫していると思います。しかし、ぼく自身は政治家でもないのでそこはなかなか変えることができません。ではぼくがどこに課題設定を置いてるかというと、学校への行きづらさや抱えてるモヤモヤを認知して言語化する生徒自身の能力の向上です。たくさんの不登校の方と話をしていますが、どうして学校に行けないのかスパッと答えられる人は1人もいません。理想としては、自分たちに合った教育環境を客観的・主観的に選択して自走できるような教育現場が整ったらすごくいいなと思っています。
福島:学校へ行きづらいことに対して、「どうやったら学校に行きやすくなるんだろう」というアプローチがあると思いますが、「なぜ学校に行きたくないのかが言語化できない」からのアプローチはすごく面白いですね。どうしてそのように考えたのですか。
中津井:最初は「HSPの不登校0人」を掲げていたんですが、試行錯誤して活動の方針をめちゃくちゃ変えまくったんです。最近は環境活動家やLGBTQ、ブラック・ライヴズ・マターなど「私たちを理解しろ」という方が活発になってきています。そういったアプローチには理解を示す人がいる一方、反発も起きたりするんです。HsP’eersも最初は「HSPを理解しろ」という事業でしたが、これでは反発が起きてしまうと思ったので方針を変えました。
堀口:ぼくはアメリカで生まれ育ち日本の学校教育を3年も受けていないので、今回は現役女子高生のメンバーにどういう不満があるか聞いてみました。最初は「面白くない」「眠い」みたいな抽象的なことを言っていましたが、聞いていくとどんどん話が溢れてきました。大きく2つポイントがあって、1つは将来何をやりたいかが全然見えてこないこと。生徒たちは大学に入ることが目標になっていて、今後やりたいこと、大学でやりたいことを立ち止まって考える余裕がないと話してくれました。もう1つは実践や発散する機会がない、ということです。探究学習で実践を増やそうという動きはあるのですが、なんだか受け身で、学んだことをどこかで発散する機会もありません。基本的に今の高校生は授業中に授業以外のことをどうバレずにやるかを考えているそうです。他にも課題だらけですが、ぼくの団体は実践を中心に学べるものをつくっていこうとしています。
福島:野明くんたちは、多様なバックグラウンドのメンバーでみんな共通して学校がつまらないと感じた経験があったという話がありましたが、その経験は日本の学校教育と同じですか?それとも違いがありますか?
堀口:基本的には同じですが、つまらないと感じた時の生徒の行動に違いがあります。アメリカの高校では後ろの席でタバコを吸っていたり明らかに聞いてない姿勢を示します。一方、日本ではバレないようにこっそり塾の勉強をしていたりします。
福島:面白いですね。アメリカでは反骨、抵抗の姿勢を示しているのに、日本人は示せていない。その違いって何から来ていると思いますか?
堀口:アメリカだと大学入学が決まって高校を卒業した後、ギャップイヤーを取る人が多いです。3分の1ぐらいの人がそのタイミングでアメリカを1周するなど学校以外の経験をします。大学の学費が日本の10倍ほど高いこともあって、進学についてあらためて考えたりもします。そういう社会状況などにも違いがありますね。
田中:私は、「なぜこういう授業をするのか」という話を中学、高校時代から直接先生にしていました。その時にきちんと向き合ってくれる先生がいたのは私にとって幸運だったと思います。「公には言えないけど、こういう事情があるんだよね」など先生が伝えてくれました。その後、私が浪人時に受験の関係で学校に行った際、先生と話したのですが「忙しくて寝れてない、どうしよう。」と言われたんですよ。その時、教え子に対して先生が一瞬でもしんどい思いを漏らしてしまうのは、環境が悪いと思いました。先生はまったく悪くなくて、「環境をどう変えていくか」という方に向いていきました。
福島:怒りや問題意識があった時に、「でもこれって構造的に起きているのでは、環境の問題なのでは。」と意識を変えられるのはすごいことだと思います。
田中:どうにかして先生も生徒もどっちも幸せにできたらいいのにな、と心から思いました。
福島:次は、YOMYの安田さんですね。問題意識や理想を教えてください。
安田:今、3人の話を聞いていて問題意識は同じだなと思いました。私はその根源を探して幼児教育にたどり着きました。アメリカの保育園、小学校では「Show and Tell」という時間があっておもちゃや好きなものをみんなの前で発表するんです。そこで、お友達の話を聞いたり、「なんでそれ好きなの?」と質問したり、やりとりをするんですね。そういった土台が幼少期から当たり前にあります。日本でもそういった環境を作りたいと思いYOMY!をはじめました。
福島:家庭教育ってアプローチがすごく難しいと思うんです。家庭ごとに思想や常識があるのでそこに何か違うものを持っていくと「私たちの教育が悪いの?」と言われたりしませんか。
安田:そうですね、だから私がやりたい教育を家庭に導入するには、お母さんお父さんの悩みを同時に解決するのがいいのではないかと考えました。最近は「子どもがYouTube中毒になっちゃったんです」という悩みもよく聞くので、そこも一緒に解決できないかなと。ママ・パパも子どももハッピーにできるようなしくみを作りたいと思いました。
福島:みなさん学校教育への問題意識は共通していますが、その問題に対しての関わり方はそれぞれ違うのが面白いですね。どうして現状のようなアプローチになったのでしょう?
田中:私は学校の先生になりたいと思っていたのですが、高校生の頃、「この働き方じゃ先生になれない、なったとしてもつぶれる」と思ったんです。それなら自分が将来、学校の先生になりたいと思える社会を作ろうと思って学校を外から支える選択をしました。しかし、全然変わらなくて、最初は出張授業のようなことからはじめたけど違和感があって。「それなら、こう変えよう。次はここが違和感だ、こうやって変えよう」とやってきました。その中でいろんな仲間ができ、教育とずっと関わってきた私だからできることを考えて、私自身がもっと学校の先生たちに寄り添って、先生たちが輝ける社会を作ることで生徒たちとつなげる架け橋になれないかなと、少しずつ学校との関わり方を模索中です。
安田:私は先生のことをすごく尊敬していて、いい先生がたくさんいるなと思っています。でもその尊敬する先生たちでもしくみを変えられないんだ、と感じたので、しくみを変える側になろう、と理工学部に行きながら教職をとろうとしました。何かテクノロジーで変えられないかなと思って。それで教職をとろうとしましたが、教職の授業が昔ながらの考え方が強すぎて面白くなくて、大学生活の貴重な時間を割くのはもったいないと思って教職をとるのをやめてしまいました。
福島:なるほど。「変えられる・変えられない」という論点もあるし、先生になるプロセスの中の苦しさや、「もっと有益に過ごせないんだっけ」みたいなこともあったと。
安田:そうですね。そこで100BANCHのメンターでもある水野さんのライフイズテック株式会社でインターンをした時に「民間企業からこんなに学校・教育を変えられるんだ」とすごく面白く感じ、私も民間で何かしたいと思うようになりました。
福島:日本ではなかなか学校教育にお金が流れませんが、それでも民間で「やってやるぞ」というプレイヤーが増えてきていますね。野明くんと楓真くんは、「学校教育を変えるぞ」みたいな想いとかはあるんですか。
堀口:ぼくは学校教育を変えるというよりは、「思い出に残る体験をみんなにばらまきたい」みたいなイメージです。
福島:学校教育云々というよりも、そこにいる子どもたちに何か体験を。そのために学校というしくみをチョイスしたのはなぜですか。
堀口:ぼくがアメリカの小学校に通っていた時にレーザーショーのサーカスが回ってきたのですが、それがすごく思い出に残っていて。大学生になった時に、それを思い出して、自分たちならもっと面白いものを作れるんじゃないかという気持ちになって。そんなコアメモリーを生徒たちにも届けたいという想いです。
福島:なるほど、自分の原体験から学校でというアプローチになったと。
堀口:そうです。ぼくの中ではあまり面白くなかった学校という場所に最高の体験を届けたら、もっと面白く感じるんじゃないかな、と。
福島:面白いですね。楓真くんは、学校を変えたいですか?
中津井:まったく変えたいと思っていません。不登校をどうにかしたい、という時に、何かを変えてしまうと、それに適応する人もいれば適応できなくなってしまう人もいます。じゃあどうしようかとなった時に、コミュニティの1人1人のコネクションをより豊かなものにできないかなと考え今のHsP’eersの授業をやらせてもらっています。なんで学校教育を選んだかというと、すごくシンプルな理由です。高1で活動を始めた時に、「インスタの友達が4〜500人で影響力もない、どうしよう」と思ったんですね。でも影響力がなくても学校にOKさえもらってしまえば100〜200人を集めてプレゼンテーションできる、と考えて出張授業をはじめました。
福島:学校教育と一緒にやっている2人(中津井・田中)がそんなに学校を変えたいとは思っていなくて、どちらかというと学校と距離がある2人(堀口・安田)は学校を変えたいと思っているんですね。
安田:しくみは変わった方がいいのではとは思いますが、私は今見えていない部分があるから学校に入りこんでいっていない、というのもある気がします。例えば100BANCHにはPSさんがいてスタッフさんがいて、イベントがあって、というデザインがあるからこそ、お互いのプロジェクトが交わって、アクセラレートしていくという唯一無二なデザインがあると思っています。そういうしくみをもっと学校に作っていきたいけれども、私もその答えがわからないので、色々なところからデザインを重ねていくことで、理想的なデザインができるんじゃないかなと思っています。
福島:いいですね。素晴らしいですね。
中津井:ぼくが高校で受けた教育は国際バカロレアという教育プログラムですが、めちゃくちゃ楽しかったんですよね。勉強嫌いなぼくが2年間、授業中寝たこともなく、たくさん発言もしました。教育のプログラムが設定された時にうまく回らない理由は、1つのプログラムをみんなに当てはめようとするから、そこからフォールアウトする人が出てきてしまうことにあるのでは、と思います。プログラムを押し付けるのではなくコミュニティを変えてあげよう、という方が色んなプログラムのセットもあって、かつ属人性のコミュニティがレベルアップしていった時にどれにも対応できる、最強の社会みたいになるんじゃないのかと思っています。
福島:面白いですね。プログラムとコミュニティというフレーズが出ましたが、コミュニティを変えるためには何が必要だと思いますか。
中津井:先ほどの「Show&Tell」のような要素だと思います。 ぼくもアメリカに住んでいたのですが、小学校の教育はとても良いです。「Show&Tell」の時間があることで、自分自身が何をしたいのか、自分の意見をはっきり言える人が多いです。日本でどのようにコミュニティを変えていくべきかという時にはやっぱり「Show&Tell」がすごく鍵を握っていると思います。自分を押し付けすぎてしまうと反発が起きてしまいますが、自分が大事とする友達や家族とか限られた人の間だけでも「Show&Tell」がちゃんとできる関係を築いていくことは、ある意味、コミュニティがすごく良くなっていくんじゃないかと思います。
福島:なるほど。野明くんの「Show&Tell」体験はどんなものでしたか?
堀口:小1の時にやりました。ぼくは親が日本人で当時は英語が話せなかったのですが、それでも同級生から拍手をもらったのを覚えていて、その一瞬がすごく記憶に残っています。
福島:一方で、自身の教育体験にはネガティブな印象もあるわけじゃないですか。それは「Show&Tell」の時は良かったけれど、中高がだめだったということなんですか。
堀口:ぼくは先生に対するヘイトはなくて、単に内容的に嫌いな科目が多かったんです。数学とか物理は大好きですが、嫌いなものはもうめちゃくちゃ嫌いで、それで寝てたり、わからなくなって面白くなくなった、みたいな感じです。先生はすごく頑張っていたり、いい人たちがいっぱいいると思いますね。
田中:これは本当にそうなんです。自分が何の科目を受けてる時にどうなっていて、どういうことを感じているかというのは、小学校の時はもちろん、大学生になってもわからないことがあります。何が得意で何が苦手かはわかりやすいかもしれないけど、「自分が何をしている時にワクワクするか」はわかりづらいんです。自分の体の変化のデータをとって自己理解のために使えたら面白いなと思って私は大学院で研究をしています。
福島:最近、日本の学校教育は個別最適化の議論がすごくよくされています。個別最適で多様性が大事なのは多分そうで、主体性も多分大事。でも、全力でそちらに振り切った時に失うものもあるんじゃないか、という警鐘だと思ったんですが、みなさんはご意見ありますか。
田中:FC今治でもそれはけっこう突っ込まれます。「実践知」「みんなで共有・体験」などという学校では、今の社会人が普通に持っているスキルを学べないのでは、という議論があります。私はそんなことないと思っていて、そこから生徒がどう学んでいくかが今までの教育と違うだけなのかなと思っています。
中津井:ぼくは個別最適は、学校教育のプラスアルファの部分かなと思っています。アメリカってスポーツがシーズン制なんです。秋だったら何、夏だったら何、みたいに、野球、サッカー、サマーキャンプ、とすごくいろんなものに触れていきました。それでどうなったかというと、本当に自分が好きなものをちゃんと見つける能力が身についたと思っています。サッカーなんて、ぼくは最初の1時間で向いてないなあ、とやめました。日本の教育は、忍耐力と我慢を一緒にしちゃっているのが問題だと思っています。部活に入った子どもが、合わないと言っているのに「あと1ヶ月頑張ってみなさい。」みたいな。それってただ我慢させているだけで、じゃあ、一旦違う部活を体験させてあげればいいんですよ。それで戻ってきたら、それが自分に合ってるんだとわかってくると思うんですね。
安田:個別最適については、時期が大切だと思います。小学校高学年であれば、だんだん自分のこともわかってくるし、選択肢があった中で最適なものを選びやすい。でも、幼児期だと難しい、というところで、私たちは子どもたちは少人数で、集団で、お互いの違いを楽しもうね、とアクセラレートしています。同じ4歳の子でも、絵本に違う肌の色の人が出てきた時に「なんか変だね」と言う子と「いろんな国の人がいるね」と言う子がいて、その時点で違います。まだ知らないという状況で個別最適をしてしまうと、まだまだもっと世界が広がるのになあと思うので、その時期も大切なんだと思います。
──パネリストたちのトークの後、会場の参加者の方々も率直な気持ちや疑問などをグループをつくって話し合って発表、会場全体で意見を交換しました。その後、学校や教育問題に対する理想やどうしたらよいかというアクションを言語化するワークショップを全員で行いました。
参加者①:今回トークイベントに参加して、アクションしようと思ったことがあります。1つ目が、言語化の機会の創出。2つ目が、広い分野での経験や活動を通し、アウトプットの機会を作ったり自分の好きや得意を知る力をつけること。そして3つ目が、本日のこのような場、世界を知ってもらう機会を作ることです。
参加者②:教育の問題の本質を解決するには、教育が制度や構造に組み込まれているので難しいと思いました。でも、今の自分にできることはとにかく情報を集めること。情報を集める際は、フィルターバブルに陥らないように気をつけたいと思います。
参加者③:私は子どもたちに楽しみ方を学ばせたいなと思います。たとえば植物に、単子葉類と双子葉類があると思いますが、その2つには生存戦略的な違いがあって、構造が違うんです。そういう面白いことを学校では教えていないので、面白いと感じている人が子どもたちに教えてあげられると、すごくいい社会になると思っています。
──最後はZ世代のパネリストの4人が会場に向けて感想を話し、イベントを締めくくりました。
田中:この2時間半で自分の考え方がアップデートされ、整理されました。私はFC今治高校で4月から先生・コーチをやっています。先生とコーチたちと1番近い状態で彼らと一緒に学校をつくっていける立場だと思うので、いろいろできそうだなと思ったし、それを踏まえた上でlightfulでやっている先生たちのサポートや先生になりたい大学生のサポートをさらに進めていけたらいいなと思いました。
安田:こんなに教育について考える機会は普段取れないので、貴重な時間をありがとうございました。今日はアプローチが違うみなさんと話せて、すごく刺激的でした。でも目指してるものは近かったり、作りたいものは同じだなと思う部分もたくさんあって、どこかでまたご一緒できたらいいなとワクワクもあり、今日は帰ってまた考えたいと思います。
堀口:ぼくが学校の面白いプログラムをやりたいと思ったのは、自分が学校にいて面白くなくて、めっちゃ面白いものを作ろうと思ったからです。今はまわりの新入社員が「新人研修がめちゃめちゃ面白くない」と言っているので、次のターゲットは研修だなと思っています。これからめちゃめちゃ面白い研修を作って提供していきたいです。
中津井:本日はありがとうございました。多分、教育はどこかからぱーんと変えられるわけではなくて、内からも外からも、さらにその大外からも考えて、少しずつ変わっていくものだと思います。それぞれのやり方でそれぞれの教育にアプローチしていけるといいですね。いろんな人の意見がぶつかり合うことで、より多くの人が通いやすい学校が生まれてくると思いました。