• リーダーインタビュー

「MonoConnect」リーダー竹内国貴: 未来に訪れる自由なモノづくりの世界で、中心にいたい

一点モノのオーダーメイド商品が誰でも簡単に手に入れられる自由なモノづくりの世界――。

3Dプリンターが世に登場して以来、多くの人が夢見てきたそんな世界を、作りたい人と作れる人をマッチングすることで実現するプロジェクトが「MonoConnect」です。リーダーの竹内国貴は、オリジナルの3Dデザインを「作れる・選べる・売れる」オンラインショップ「MonoSalon」を運営する、モノづくり系スタートアップMonovationの代表を務める起業家。

2017年9月末「GARAGE Program」からの一旦卒業のタイミングで、見事「MonoConnect」をサービスとしてローンチ。合わせて同居する他のプロジェクトのオリジナル3Dロゴをサービス事例の一環でプレゼントとしてあげるなどのアニキ的存在でもありました。そんな粋な彼に、未来づくりの源泉と、将来のビジョンについて語ってもらいました。

新技術はベンチャーの領域、3Dプリンターで新しいものづくりを着想

――MonoConnect」のサービスローンチおめでとうございます。100BANCH「GARAGE Program」からの一旦卒業となるわけですが、ぜひ竹内さんの未来へ向かうモチベーションの源泉と、目指すビジョンをお聞きできればと思います。そもそも竹内さんは京都大学を卒業後に、コンサル会社を経て起業されたんですよね。

竹内:京都大学の学部時代は工学部物理工学科機械システム学コース、大学院ではマイクロエンジニアリング専攻で、具体的には精密計測加工学研究室で立体物を削って形作っていくNC工作機械やレーザーを用いた精密計測の研究をしていました。なので、3次元でモノを作ることはずっと好きでしたし、それこそ遡れば幼少の頃からプラモデルなど工作が好きで今でも根底にあるものづくりへの愛情は変わっていないと思います。

大学時代は、卒業したら、エンジニアになるのかなと思っていたんです。だけど、就職活動をする中で、ビジネスモデルの構築とか、技術をどう使っていくのかみたいな視点が、日本企業には欠けているんじゃないかと思えてきて、それでコンサル会社に入りました。理系からコンサル業界にいく人って結構多いんですよ。

――コンサル時代は主に製造業関連のプロジェクトに携わっていたんですよね。

竹内:はい。コンサルに入って製造業で、日本のモノづくりの技術戦略みたいなことをやりたいと思っていたんです。

というのも、ソニーとか最近こそ持ち直していますけど、結構どん底みたいな時期もありましたし、大手のメーカーのほとんどは2010年前後は苦しくなってきていて、それがすごく悔しくって……。

日本企業は技術力は高くて先駆的な製品も作っているのに、それこそアップルとか後から出てきた米国の企業に負け続けてしまっている。自分で技術戦略を描けたら……、と思っていたんです。

――大手自動車メーカーに出向をしていて、そこで今のビジネスを着想したとか。

竹内:2015年から1年半、経営企画部に社員として出向していました。そのメーカーはグループ全体としてITを含むあらゆる産業に携わっていますが、その中で3Dプリンターをどのように使っていくかというプロジェクトに参画することになったんです。

例えば、金属の3Dプリンティングは金属粉末をレーザーで固めていくんですけど、溶けた金属を型に流し込んで造形する鋳造と大体同じようなことができるんですね。鍛造は鍛冶職人さんが叩いてやるイメージの工法で、シャフトなど強度が求められるモノは鍛造が必要なのですが、3Dプリンターでも型に流し込む鋳造と同レベルのモノが造形できるため「3Dプリンターもなかなかすごいぞ!」と、メーカーのみなさんもざわついていました。

最終的にはまだまだ実用化するには先が長いということ、かつ、関係のある町工場などの仕事がなくなることに繋がるかもしれないので、最新技術は把握しつつ静観しようみたいな感じになっていったんです。

それでも、僕としては元々そういう研究をしていたこともあって3Dプリンターを見ているだけで楽しかったし、「大企業がしがらみによって活用できない新技術って、ベンチャーの定石じゃないか」と気付きになって、最初のビジネスの着想につながりました。

 

データづくりが3Dプリンターの要、ビジネスコンテスト受賞から起業へ

――技術戦略家としては、大企業がしがらみによって新技術に手をつけられない状況に燃えてくるものがあったんですね。

竹内:そうですね。やっぱり3Dプリンターというのは、モノづくりの領域の中でもデジタルに近い存在で、インターネットとうまく絡めないといけません。

3Dプリンターには確かに、造形に縞ができるとか、作るのに時間がかかるとか、意外とコストがかかるとかいろんな課題はあるんですけど、最大の課題はデータづくりです。まさに「プリンター」なのでソフトのところが何よりも大事。そこで、インターネットとの親和性は高いので、何らかのやりようはあるんじゃないかと考えました。

「MonoConnect」とは別にやっている「MonoSalon」というオンラインショップで、お客さん自身に3Dデータのカスタマイズをオンラインでやってもらう。その上で、モノを作るところをMonoConnectを通じて外部と上手くマッチングしながらやれば、これはいけるんじゃないか、と思いました。

――ビジネスコンテストにも出場されましたね。

竹内はい、プリンター1、2台はそんなにお金もかからないし、在庫も抱えないし、これは2人で始めるスモールスタートとしては現実的なアイデアなのではということで、プランを詰めて、昨年ビジネスコンテストに何度か出してみました。

そしたら賞をいただいて、ソフトバンク系列の企業にオフィスの一室も貸してもらえて。当時はまだサラリーマンだったんですけど、ソフトバンクの方にも「これからどうするの?」って言われて、「ここは行くか!」と。まだ30代前半ですし、失敗してもやり直しもきくだろうと思って、思い切って起業したのが昨年12月です。

 

手描きのアイデアも3Dデータに、MonoConnectは中小企業も視野

――MonoConnectは、いわゆる作る人と作りたい人のマッチング。作る人というのは、どのような人たちでしょうか。

竹内:基本的にはメーカーさんです。今、少しずつ入ってきている注文は、正直まだうちのプリンターでさばけるくらいのボリュームなんですけど、これがどんどん増えていくとデータがあるのに作れないという状況に陥るはずなんですね。

だったらそれをメーカーさんにお願いしたいなと。3Dデータは確かに3Dプリンターで作れるんですけど、モノによってはNC工作機械で削っても作れる。そういうことも含めて、データを持ってフロントとして立っている自分たちの強みを生かし、どんどん作れる人をマッチングしていきたいと思っています。

――これまで具体的にはどんな案件がありましたか。

竹内:例えば、歯医者さんなんですけど、手描きの看板のデザインを持ってこられて、「これの立体版を作ってください」といったご依頼がくるんですね。他にもとある中小企業さんが、同じようにスマホケースの試作品を作りたいと手描きのデザインを持ってこられて。

これをきちんとデータにする必要があり、CADにして、3Dプリンターで作るというのを、今は僕一人でやっているというところなんですけれども(笑)でも実際に出来上がった立体物を目にすると感動しますよ。

CADを扱えない人たちにも3Dの立体物を届けられるというのも、他社にない強みかもしれません。

――初めの構想から軌道修正したところはありますか。メンターの高宮さんからのアドバイスも参考にされたそうですが

竹内:MonoConnectは当初、個人のお客さんを相手にBtoCでやろうと思っていて、ある種、個人間のクラウドソーシングみたいなモデルを想定していたんです。だけど、高宮さんから利用シーンのイメージが湧かないと鋭い指摘を受けました。

それで、オンラインかつオーダーメイドでやってるTシャツプリント屋さんなどにオーダーメイドのシステムを売るようなBtoBのモデルも考えたんですが、そうこうしているうちに先ほどの歯医者さんの立体看板やスマホケースの試作品のオーダーが入り、「スケールするかは分からないけれど、確かに需要はある」という確信が生まれました。

このサービスに数万円払ってくれる全く顔の知らない人がいる。ということは、日本に少なくともあと数十人はいるだろう、と。それで今は初心に返り、個人や中小企業のクラウドソーシングみたいなモデルにもう一度戻そうかと思っています。

――竹内さんと同じようなことを考えているようなプレーヤーは他にいるんですか。

竹内:広い意味ではカブクさんとか近いですね。差別化のポイントはデータ作成までやるかやらないか。カブクさんは自動車とか航空宇宙とか、大手メーカーが顧客ですが、我々はCADを扱えない中小企業もターゲットにしています。

9月末にローンチした「MonoConnect」のサイトトップ

個性重視の時代には、大量生産より一点モノ

――大量生産ではない、本当に自分が欲しいものを手に入れたいと思っている人たちは山ほどいると思います。

竹内:はい、世界は絶対にそっちに行くと思っています。誰かが持ってるものを欲しいという時代ではもうない。SNSでもいかに自分は他の人と違うことをやったかをアピールする時代じゃないですか。

たとえ僕らじゃなかったとしても、30年後とかに同じようなサービスは絶対あると思うんですよ。もちろん自分たち自身で実現していたいなとは思うんですけど。

――竹内さんの志向はやはりC(一般消費者)に向いているんですか。

竹内:そうですね。極論すれば、個々人はすべて異なる存在なので、そうならざるを得ないと思っています。個人店舗さんも含めてですが。店舗にだって一点モノのプロダクトはありますし、個人の身のまわりにあるものとなればすべてが一点モノになる可能性はありますね。

――目指す世界観の実現に向けて、今求めているものは何でしょうか。

竹内:まずは、サービスがエポックメイキングに使われる事例をつくりたいです。結構自由度が高くて新しいことをやっているがゆえに、3Dプリンターで何をしているのか伝わりにくいこともあるのですが、例えば、有名人の方などがキャッチーな使い方をしてくれたら、「あ、こういうことなのね」と、みなさんに分かってもらえるかな、と。100BANCHの一旦の卒業に合わせて、他のプロジェクトの3Dロゴを作って差し上げたのも、実体験としてその喜びを得て欲しかったからなんです。

今後はそれこそ、ネット注文をしたことがないようなおじさん世代も巻き込んで、彼らの間に立ってマッチングできる存在になれれば、と思っていますね。

Monovationhttp://monovation.co.jp/

MonoSalonhttps://salon.monovation.co.jp/

MonoConnecthttp://connect.monovation.co.jp/

 

原稿構成:山本直子、岡徳之(Livit)

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