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青くさくてもいい!私たちは文化をつくるんだ!——8/100BANCH BOOK 発刊記念レセプション

今年の7月で8年目を迎えた100BANCH。日々、100BANCHで生まれる多様な活動の軌跡は、1年ごとに振り返り、アニュアルブック「100BANCH BOOK」として記録しています。オープンから毎年継続して制作し、今年も8冊目となる「8/100BANCH BOOK」が11月17日に完成しました。そして、BOOKの刊行を記念し、11月27日に刊行記念レセプションを開催。100BANCHを日頃から応援してくださる方々や制作にご協力いただいたパートナーの皆さん、誌面に登場する100BANCHメンバーらが集まり、さまざまな話に花を咲かせました。この記事では、そのイベントの様子を、BOOK制作の舞台裏と合わせて事務局の大塚がレポートします!

制作開始!今年ならではの色を求めて

アニュアルブック「100BANCH BOOK」は、前年の7月からその年のナナナナ祭まで、100BANCHで行われる数々の実験と見えてきた未来の兆しを1年ごとに記録しているものです。

今年のBOOK制作は8月末から制作を始め、10月末には校了、そして11月17日に発刊するという短期集中スケジュールで全176ページを完成させました。

100BANCHとは何か、どんな価値があるのか、社会にとってどんなインパクトを与えうる存在になるのか、それらの答えを求め、表現し、メンバーの変容を追いかけていきます。

全てのページの企画・執筆を日頃から100BANCHの運営に携わる事務局・編集部で行っているのも100BANCH BOOKのこだわり。活動をずっと見ているからこそ感じる変化や日々の実験も余すところなくお伝えしたいと、私も知恵熱が出そうになるくらい原稿に向き合って書き上げました。

BOOKの中には、100BANCHの運営に欠かせない場の根本と視座を定めた7つの原理が実体化したエピソードを紹介する「100BANCHの7原理」や、1年間で入居したプロジェクトの活動を紹介した「未来をつくる実験」など、初期から変わらないコンテンツもありますが、一部は毎年その年のカラーが出るように全く違うテイストの特集コーナーを企画し、掲載しています。

今年のBOOKでは2025年ならではのコンテンツとして大阪・関西万博を取り上げ、100BANCH メンバーが携わった企画やイベントを紹介しました。関連作品に関するマップだけでも数ページにわたる充実ぶり。未来をつくる実験区として誕生した100BANCHにとって、未来社会の期待や可能性を一堂に集めた万博の開催は非常に意義深く、100BANCHから羽ばたいたメンバーの活躍はとても誇らしいものでした。

万博でのメンバーたちの活躍についてはBOOKの特集以外に、こちらの記事でも紹介していますのでぜひあわせてご一読ください。

アングリーから未来はつくられる・・・?

11月27日に行った刊行記念レセプションには約50人が参加。BOOKの刊行を記念したイベントは8冊目にして今回、初めて開催したものですが、BOOKを片手にみんなで1年を振り返り、現在地を確認したり、次への企みが生まれることを願った企画です。

オープニングではBOOKの中のエピソードに登場するメンバーをゲストにクロストークを実施しました。

 登壇メンバー
 株式会社積彩 大日方 伸(GARAGE Program40期生 | Color Fab)
 Academimic合同会社代表 浅井 順也(GARAGE program59期生)
 Sadamaranai Obake リーダー 趙 愛玉(GARAGE Program61期生)
 100BANCHオーガナイザー 則武里恵

則武:100BANCHでは、ストレートに自分のやりたいこととか「こういう未来をつくりたいんだ」ってことを言葉にする人がすごく多い。でも、外では「何を青臭いこと言ってんだ」とか「理想論だ」って言われることもあるかもしれない。でも、青臭くていいじゃないですか? 8/100BANCH BOOKの「おわりに」には文化をつくろうとするみんなへのエールも込めて、そんな思いをしたためました。

大日方:「おわりに」の文章、めっちゃよかったです。泣きそうになりました。続けていくことって本当に難しい。色々言われたりもするし、自分のモチベーション的にもダレちゃう場合もある。人はどうして続けられるんだろうって考えたときの則武さんの答えが詰まっている気がしました。

僕が「文化をつくる」と言って続けられているのって、半分カウンターカルチャーというか、よくわかんない怒りがずっとあるから動けてる気がしています。無償の愛とか綺麗な言葉だけでは続かない。怒りとか、やるせなさが続ける原理になってるんじゃないかと思うんですが、そういうのってあるんですか?

則武:多分あると思う。怒りというか、不条理みたいなのを感じるところを見過ごせない。自分としては、未来のあり方は「こういうのがいい!」というのより、「こういうのは絶対嫌」という方が強い感情としてあったりします。戦争は嫌とか、記憶を売買するような未来は嫌とか、来てほしくない未来を考えた時の方が強いモチベーションになる気がしています。

大日方:すごくわかります。7原理では「Willから未来はつくられる」と言ってるけど、僕としては「アングリーから未来はつくられる」というのも提唱してみたいです。

常識の塊がAI。そこからこぼれ落ちるところに宿る価値

ー次に話題は7原理の「常識にとらわれない」について、そのコーナーに登場したAcademimicの浅井が考えを語ります。

浅井:研究界隈にもマニュアルや作法のようなものがあって、それに従わないと研究として評価されない。ただ、常識に従い続けていたら、新しいことは絶対生まれてこない。成長していくには常識を意識してやってくれる人もいつつ、破壊してくれる人も少なからず必要。常識とか、逆に常識を疑うとか破壊するってことのどちらかを是としすぎないような世の中をつくれないかなと考えることがあります。

大日方:僕は「常識」とか是とされているものの究極がAIだと思っています。例えば、ChatGPTで文章を書くと、すごいChatGPT味がある文章になりません? 正解みたいなものが出てくるんだけど、綺麗過ぎるというか……。その綺麗な言葉の中には、「自分が言葉にできなかった何かが選択されなかった」みたいな寂しさを感じます。

浅井:大学などでは論文をChatGPTで書くためのプロンプトを公開しているところもあって、もう推奨はしていますよね。そうするとどんどん均質化されていくだろうから、どこに個々の余白があるんだろう、って思います。でも「人間味がある」のは序論。序論は人となりが出ると思っていて、むしろあそここそ本質になってくるんじゃないかと思います。

:デジタルで感情が見えにくくなるとか、コミュニケーションが綺麗に見えすぎるっていう課題はあるなと思います。100BANCHの合宿みたいなアナログの密度——「久しぶりに人と話した!」っていう時間でしか出てこない感情や気づきがある。触れ合った時の温度感に勝るものはないと思うので、今後も未来にとって大切なら、AIの利用を少しセーブしつつ、アナログなコミュニケーションを大事に増やしていくといった向き合い方が、福祉や医療の分野では特に大事なんじゃないかと感じました。

ーこのテーマに関連して、死のリデザインに取り組んでいる趙は近年のお墓を取り巻く問題について共有。

:最近、墓じまいが進んでいて、お墓がどんどんなくなっている。お墓参りに行ったら、お墓がなくなっていた、聞かされてなかった、という話もありました。お墓というのは文化の一つで、先人が築いたフォーマットでしたが、それがなくなった時、次の世代はどうやって弔うのか、という課題にぶつかっていくと思います。

浅井:機能性だけを追求したらお墓っていらなくなるかもしれない。同じように、AIに都度聞いて都度最適化していくと、文化的なものが希薄になってしまう気がします。だからこそ、偏りを付加した100BANCH AIみたいなものをつくって、偏りを育てていくというのも面白いんじゃないかなと思っています。

「イノベーションの装置」としての100BANCH。それぞれの変容

ー今回のBOOKの中で、「100BANCHはイノベーションの装置である」と表現されていたことに関連し、それぞれが100BANCHにおいてどのように変容したかのエピソードを語り合いました。

:100BANCHに来てありがたかったのは「お尻を叩いてくれる」ことだと思っています。アイデアはどんどん湧いてくるけど、最終的にこの時までに実装しなければならないという締切とフィードバックがある。ナナナナ祭などでも実装に向けてみんなが一斉に向かって行けるのはすごいことだなと思いました。

大日方:僕の変容でいうと、メンターの存在が大きかったですね。叱られたというか、厳しいフィードバックももらったんです。最近、教育現場でもなかなか叱れないって聞くけど、「それダメ」「つまんない」って言ってもらえるのは貴重。ちゃんと向き合って批評してもらえたのがうれしかったです。

浅井:100BANCHではWebサイトで自分がやってきた活動がプロジェクトの歩みとして一覧できるようになっているんです。活動の初期って、あれやってみよう、これもいいかも、みたいにショットで活動することが多いと思うんですが、活動が点で終わらず、履歴として残って、つながりとして見えてくるのがすごくいいなって思っています。自分の活動がナラティブを持って整理されていく仕組みって意外とない。稀有な仕組みだと思います。

日の当たらない日々の先に生まれる文化

則武:「文化をつくる」ことを目指そうと思ったら、ずっと続けていかないとそこに到達しない。継続するだけなら「やればできる」って思われるかもしれないけれど、やり続けるのって実はすごく大変なんだよって言いたくなります。

大日方:始めることは多分誰でもできるし、ないものを投げかけるから、そのときは注目されるんです。でも、「続ける」って褒められないし、注目もされない。 そこからは、自分たちで自分たちをモチベートして、いかに続けるかが重要ですよね。

:私はプロジェクトを続けるか解散しようか迷っていたことがあったんですが、100BANCHで相談する中で「一旦休止」って考え方もあるということに気づきました。その後、また新しい挑戦ができているので、緩急はあっても続けて良かったなと思っています。

浅井:僕は逆に、いつでもやめてやろうって思ってます。法人化して「生き永らえること」が目的になると本末転倒。やめられるから、いい仕事ができる部分もあるんじゃないかと。文化って言葉、簡単に言いやすいけど、語源を調べたら「耕す」。成果物は副次的で、耕し続ける過程が文化につながる。だからやっぱり、続けてること自体が文化なんじゃないかなって、聞いてて思いました。

則武:続けることがもっと賞賛される感じになるといいよね。その過程はすごく地味で日の当たらない日々が多いと思うんだけど、その先にしか文化はできないはず。だから、100BANCHでは日の当たらない毎日の面白さを分かち合いながら、一緒に未来をつくっていけたらいいなと思っています。

その後の懇親会では、食事を囲みながら、お互いの活動について相談したり近況を語り合いました。今回のケータリングは、「旅するおむすび屋」として食の大切さや楽しさを届ける活動を行う菅本 香菜(GARAGE Program 2期生|MUSUNDE HIRAITE)様々な種類のおむすびを提供。100BANCHの場所から着想したテーマで、この日のためにメニューを考案してくれたそうです。

7原理の「視点が交差し混じり変化する」にあるように、生の体験やコミュニケーションからしか生まれない化学変化や新たな繋がりは、それぞれの思考や行動を加速させるはずです。この日も最後まで会話が尽きる様子はなく、こうした場で生まれる熱量や温度感をこれからも大切にしていきたいと感じました。

青くさいと言われてもいい、私たちは文化をつくるんだ ──! 8/100BANCH BOOKには、思わずこう叫んでしまうほど、メンバーたちの汗と涙、制作チームの熱い気持ちが詰まっています。ぜひ手に取って、未来に向けたエネルギーを感じ、その熱の高まりをお楽しみください。以下のショップのリンクからもご購入いただけます。

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