100BANCH farm
みんなでつくってみんなで食べるシブヤ系循環型農園
DESIGNART TOKYO2024の最終日、100BANCH前の渋谷リバーストリートでは、「秋のマルシェ&収穫祭」を実施しました。100BANCHの目の前に、誰でも自由に野菜づくりにかかわることができる移動型の農園「100BANCH farm」を設置し3年。食欲の秋!ということで、埼玉の野菜仲間の農家さんが育てた野菜を販売するマルシェと、100BANCH farmのお野菜をトッピングしたラープとガパオのお弁当を食べる収穫祭を開催しました。「シブヤ系循環型農園」を目指した「100BANCH farm」の3年目の挑戦や取り組みのコンセプト、実施して考えたことをこの取り組みをリードする「Yasai no CANVAS」プロジェクトの瀬戸山がレポートします。
こんにちは。Yasai no CANVASプロジェクトリーダーで、100BANCH farm -秋のマルシェと収穫祭-を企画した瀬戸山です。
私たちは、農と食を媒介に地域のつながりを育むことをテーマに活動しており、特に地域コミュニティにおける贈与経済のきっかけとして「農」というカルチャーを活用できないかと、日々実験と実装を繰り返しています。
3年前に100BANCHとの共同企画として渋谷川沿いに設置した「100BANCH farm」という移動式の農園。今回は100BANCH farmで育てた野菜やハーブを収穫してラオス料理の「ラープ」や「ガパオ」にトッピングし食べたり、埼玉で育てた野菜を販売する「秋のマルシェと収穫祭」を実施しました。
「循環」というテーマの原点は、瀬戸山が学生時代に滞在していたラオスの農村にありました。農村では、家族の食事の残飯を飼っている家畜にあげて、その糞を堆肥にして畑に撒き、その畑で育った野菜を家族で食べるという暮らしのリズムがありました。
本企画のコンセプトである「シブヤ系循環型農園」では、「土」に地域の落ち葉を使用しているだけでなく、農園の「素材」はパナソニック社の人造大理石の廃材をアップサイクルして、シブヤの特徴である多様な 「人」が関わりやすい設計にすることで、廃材と人の関わりについても循環することを要素に加えました。なお、100BANCH farmは、移動式農園の中に水を貯めて底面吸水する仕組みになっており、水も循環する構造となっています。
春先に種をまき、苗を植えた野菜が次々と実を付け、8月末に夏野菜を収穫し、9月頭に秋と冬の野菜を植える。そんなリズムができはじめた100BANCH farmが迎える3回目の秋。100BANCHのPS(プロジェクトスタッフ)さんを中心に、LINEオープンチャットのチームで成長を見守り、管理してきたおかげで、例年よりも「畑感」のある100BANCH farm。
猛暑を乗り越えて最後にひと踏ん張りしている息の長い夏野菜や、9月に植えたまだちょっと早熟な秋野菜を収穫し、今回は「ラープ」「ガパオ」というラオスとタイを代表するエスニック料理に添えて食べました。ラープにはミント、ガパオにはバジルという自社農園で育てたそれぞれのハーブを使いました。東南アジア・ラオスの家庭料理「ラープ」は、瀬戸山の思考の原点でもあり、ラープは、鶏肉とハーブ類(ミント)と野菜をナンプラーとライムで和えたサラダのようなさわやかな味わいの料理で、その語源には「混ぜる」という意味と「幸せ」という意味の2つがあると言われています。
2(瀬戸山の畑産):7(市販):1(100BANCH farm産)くらいのバランスを混ぜ合わせた今回のラープ。一食の中で3割だけ知り合いの育てた食材に置き換えると、料理に愛着がわく。これは、「田舎」「地方」でなければできない、ということではありません。食に関して、渋谷は消費の地として認識されていますが、生産と再度つながることで、豊かな「食卓」に再構成されるのではないでしょうか。それはまさに、旧くて新しい文化。
今回のマルシェでは、埼玉の畑で仲間と育てた野菜を販売しました。渋谷からは電車で一時間以内でいける都市近郊で採れた野菜や果物。地方への移住やハイテクな植物工場を作らなくても、都市部で暮らしながらも自然を取り入れることはできます。100BANCH farmは、都会で暮らしていても農村的につながれる、都会暮らしか田舎暮らしかの二者択一ではない新しい選択を生み出していけるのではないかと期待し、また野菜を育てていきます。