VR×Space Education Project by Yspace
宇宙×VRで、新しい教育の形を実現します。
夢とロマンが詰まった未知なる空間「宇宙」。巨大宇宙船の開発や宇宙旅行など、最近では空想の世界が現実になるようなニュースも多く耳にするようになりました。未来を思い描く100BANCHメンバーも、まだ見ぬ可能性に心躍るテーマです。
ナナナナ祭2024の5日目となる7月11日にはトークイベント「宇宙へ行こう!」を開催。100BANCHで活動する宇宙関連のプロジェクトと有識者が混じり合い、なぜ宇宙に魅せられるのか、その理由と挑戦の先にある可能性を語り合いました。本レポートでは、イベントでのダイアローグをピックアップしてお届けします。
登壇者 黒田有彩|宇宙タレント 嶋田敬一郎|将来宇宙輸送システム株式会社 最高事業責任者CBO 川崎吾一|VR×Space Education Project by Yspaceプロジェクトメンバー /株式会社Yspace 代表取締役CEO /GARAGE Program25期生 阿依ダニシ|ARES Projectプロジェクトリーダー /GARAGE Program70期生 松広航|ICHIGIKUプロジェクトリーダー /GARAGE Program80期生 |
──本イベントは「宇宙タレント」として宇宙や科学の魅力を発信する黒田有彩さんがモデレーターを務めました。
黒田:昔から科学が好きで、中学生の時に科学に関する作文コンクールに応募したところ、賞をいただいてNASAに連れて行ってもらえるという体験をしました。そこから宇宙の虜になっていき、現在は「宇宙タレント」という職業を自分で作り、宇宙や科学の魅力の発信を積極的に行っております。
──イベント冒頭では、国立天文台のソフトウェア「4次元デジタル宇宙ビューワー:Mitaka」を使って宇宙空間を探検。地球や月、火星の位置関係などを会場の参加者の皆さんと改めて共有しました。
──登壇者によるパネルトークでは「未来の宇宙に関する問い」について、各々の考えを語っていきます。
黒田:今回のトークでは時間軸を未来に置いて、宇宙の可能性について話し合っていきたいと思います。まずは宇宙へ行くことが当たり前になった時、宇宙旅行はどうなっていると思いますか?皆さんの本気の妄想を教えてください。
嶋田:未来の宇宙旅行は、地球には戻らない「片道切符」なのかなと思いました。宇宙にハマると、月に行って、火星に行って、その先に対してどんどん興味が湧いて地球から離れていくような感じで探索をしていくんじゃないかなと思います。宇宙に行くのが当たり前になっていくと、宇宙のさらに奥に行きたくなるんじゃないかなと思って、そうなるともう地球には戻らないのかな、と。
阿依:宇宙に行くのが当たり前になってくると、月、火星ぐらいだったらおそらくみんなが行くじゃないですか。月がどういう世界で、火星がどういう風景かというのは想像がつくと思うんですよ。それより先の、天王星や海王星、木星や火星の衛星なんかに人が降り立ったら何が見えるのか、というのが興味あるところです。
黒田:ダニシくんが1番行ってみたい惑星はどこですか。
阿依:ぼくは土星の衛星のエンケラドゥスに行きたいです。生命体がいる可能性があるのと、やっぱり自分の作ったロボットを試すっていうのをやりたいですね。
川﨑:宇宙旅行が当たり前になると多分、「宇宙に行くことが目的ではなくなってくる」と思います。今で言うとハワイ旅行に行く感覚で、未来では「宇宙ホテルに行く」となってくるんじゃないかと思います。南極大陸に行きたがるような人たちは将来、惑星探査ツアーとかに行くのかなと思います。ハワイ旅行は1人300万円もする時代があったんですよね。だけど現在は、安いものだと1人往復で9万円で行けることもあります。そんな風に、おそらく500万円払ったら宇宙空間に行ける時代がこの20年で来ると思うので、そこまでみなさん健康でいましょう。
松広:川﨑さんがおっしゃったように、今は宇宙に行くことが目的ですが、その先には文化がどのようにできていくんだろうと想像してみました。アメリカがアポロ計画をやった時にアラン・シェパードという宇宙飛行士がこっそりゴルフクラブを持っていって、月面でゴルフをプレーしたんですよ。月は重力が1/6なんで、地上でゴルフが上手くない方も月に行ったらめちゃめちゃ楽しくなるんじゃないかなとか、スポーツのあり方が変わるんじゃないかな、みたいなところも見てみたいなと思いました。
また、まだ宇宙ってどの国のものでもないし、文化がないので、いろんな国の人が宇宙で会ってお茶会しようってなった時に、どういうお茶会のあり方があるんだろうか、と想像するだけでもちょっと面白いんじゃないかと思いました。お茶会ってアフタヌーンティー、中国茶、抹茶などどの国にもいろんな形でありますよね。それと、もし火星人がいたらちょっと文化交換で、ぼくらが火星に行くだけじゃなく火星人にも地球へ来てもらいたい。交換留学してお互い「どうだった?」みたいな感じで会話ができるといいなと思いました。
黒田:未来の宇宙旅行の形や宇宙での文化などリアルな妄想を語り合ったところで、次は「暮らし」に焦点を当てて考えてみたいと思います。旅行ではなくて暮らすとなったら実際、どうでしょう?
川﨑:やっぱり人間が1番求めているのは人とのコミュニケーションだと思います。宇宙空間にいる人と地球にいる人のコミュニケーションがすごく大事になって、宇宙に行った人が体験したものを次の人に伝えることだったり、自分の子どもの代にどんどん体験を繋げれらるような形が、今後の宇宙での楽しい暮らしに繋がっていくのかなと思っています。
嶋田:環境がガラッと変わると、それに適したものが絶対必要になってくると思うんです。宇宙旅行に行く際に持って行くもの、身につけるものが宇宙に適してなければ、楽しむことはできないと思います。例えば、宇宙に行くのにこんな厚底の靴はいらないよね、みたいな。そういったところから変えていくのが1つのチャンスでもあり、当社が今取り組んでるところでもあります。いわゆる微小重力とか無重力空間での日用品の商品企画は全く進んでいないので、そういったところがどんどん進めば宇宙旅行を楽しめる下地ができていくんじゃないかと考えています。
松広:やっぱり宇宙でも服は着ると思うのでファッションは大事だと思います。着心地的な要素は宇宙で楽しく暮らすためには必要だと思います。例えば月面は重力が6分の1なので、普通に歩けずにスキップのようになります。そうすると、靴は重い方がいいんじゃないかとか、機能的に違ったものになるかもしれません。また、ファッションは自己表現のツールでもあると思っています。せっかく無重力になるので、鉄の服だったり、孔雀みたいな服が当たり前になるみたいな、ファッションの選択肢や自由度が高まると思います。そう考えるとファッションが好きな人は実は宇宙と相性がいいかもしれません。
阿依:今まで色々な宇宙飛行士の方と会って話したことがあるのですが、彼らは宇宙空間で色々なことを我慢する能力がある人たちで流石だと思います。ただ1つ、どうしても抗えないのは「体の崩壊」です。無重力や微小重力の空間だと、それまでかかっていた重力がなくなるので、骨や筋肉がどんどんなくなっていきます。今の宇宙飛行士は、毎日トレーニングを行ってギリギリ耐えている状態なんです。その人たちですら、地球に帰ってきたらふらふらして歩けなかったりするので、宇宙旅行には運動は欠かせません。だから楽しく運動ができるものがあると良いですよね。
黒田:居住と深く関係してくるものと言えば人間関係ですね。宇宙に挑戦する人と、地球にとどまる人。関係性はどうなっていくと思いますか?
阿依:このままでは、地球と宇宙で普通に争うと思います。ものすごい技術革新がなければ、月や火星から地球に来るのには時間がかかるので、ほぼ一生を火星で過ごすような人も出てくるわけです。でも地球に行けば、もっと純度の高い水や必要な資源がある、となったり、逆に地球の人たちが火星から少し燃料持って帰ってきて、みたいな感じで喧嘩になると思います、今、国連でもそういったことが起きないように宇宙法を作ろうとしていますが、やっぱり窮地に立たされた人間は争う、というところは変えられないかなと思いました。現在の国際宇宙ステーションのように一時的に行って帰ってくる、というスタンスでいた方が安全だと思います。
川﨑:火星で生まれたり、月面で生まれたり、というのはいずれは来るかなと思っています。その時、市民権はどこにあるのか、税金はどこに払うのか。そういう話になってくるだろうし、地球人、月面人、火星人、みたいなSFっぽい話も出てくると思います。その時、火星や月面に住む人のために地球からロケットで物資輸送するわけです。今は、1キロあたりの輸送費が1.5億円ぐらいかかるんです。国際宇宙ステーションでペットボトルを飲むのに大体136万円ほどかかります。月面生活してる人たちが豊かに生活するために地球の人たちの税金を使わなきゃいけない、という話になってくるとすごくめんどくさいことが起きるなと思いました。
嶋田:ぼくはちょっと皆さんと考え方が違います。地球の人類の歴史って争いと歩み寄り、開拓と侵略を繰り返しています。その中で多様性が進み、一部で紛争と戦争は起きているものの、地球全体としては多様性への理解は進んでいるんですね。数十年とか100年でいえば火星にいる人類と地球に残る人類というのは、何かしら意識の齟齬は生まれると思うんですが、その先を見ると、惑星に人類が移り住むというのは、地球の人類の歴史の開拓と侵略と全く一緒だと思います。人類という軸から考えると、地球の表面、いわゆる平行に2次元的に侵略と開拓を進めてきたのが、単に三次元になるだけなので、そんなに変わらないかなと思っています。
松広:確かに、すごく関係性が悪くなるかも、とも少し思いつつも、その先にちょっと期待したいなという思いがあります。宇宙を考えた時、例えば地球を丸く見ることって地球上にいると絶対に見られないんです。地球を宇宙空間から見るというのは、少し俯瞰的に見られるようになるので、考え方や哲学のレイヤーが一つ上がるんじゃないかなと思います。日々、目の前の人と争っていたけれど、宇宙から客観視すると、争いなんてやめようという気持ちになる、ということが起こるんじゃないかなと思っています。
最初は仲が悪くなりそうな気がしたんですが、例えば地上で解決できない問題が起きた時に、地球上で文化を作ってきた人間ではなくて、火星で生まれた人たちが地球をなんとかするための貴重なアドバイザーになりうるような存在なんじゃないかなと思っています。今まで解決できなかったことも別の視点から見られたり、いざという時に助けになる存在というのが実は宇宙空間の人たちだというのは未来でありうるんじゃないかと思いました。
黒田:ワクワクする宇宙の可能性ですが、まだハードルが高いことも多くあります。それでも登壇者の皆さんを夢中にさせるものは何でしょうか?
嶋田:ぼくは世界発、地域発、産業発というテーマを持って仕事をしてきましたが、地球上のオポチュニティはどんどん減ってきています。だけど、宇宙であれば、何をやろうと思っても、結構その先駆者になることができるんです。もう一つは、宇宙産業そのものが、日本では特にまだ村社会で、事業面で多様性が生まれていないと思っています。なので、いくらでもやりようがある、というのがやっぱりあるんですよね。白いキャンバスに、これから描いていけるような感じに思っています。
阿依:何が楽しくて宇宙を選ぶか。ロボット開発なんて、火星探索のローバを作るよりも地球のレストランで配膳してくれる使いやすいロボット作った方がいいですし、探査が好きだったら海底や地球上でわかっていないことを調べるという選択肢はいくらでもあったんです。ただ、やっぱり宇宙にはロマンがあったんですよ。自分たちが知らない世界が無限に広がっていたし、ビジネスのチャンスも大きかったですし、それこそいろんなアイデアも浮かんでいて、何が正解かまだ固まっていません。そこに挑戦したいと思うからこそ昼夜問わずやるんですね。自分たちが作ったものがもしかしたら正解になるかもしれないし、大失敗に終わっても将来の足掛かりになる可能性すらある。そうなる可能性の大きい宇宙にロマンを感じています。そして、自分が月ではなく火星を選んだのは、まだ人類が行ったことがないからです。今は月が盛り上がってると思いますが、やっぱり火星に人を送ることは人類全体が挑戦したい1つの目標だと思います。
松広:高校生の時の現代文の授業で「無知の知」の話があって面白いと思いました。自分が知ってることを円で表した時、たくさん知れば知るほどその円が大きくなるとしたら、知れば知るほど知らないことが増える、みたいな話でめちゃめちゃ面白いなと思ったんです。その未知の探求は人類最大のエンタメだと思っているんですが、宇宙は本当にそういう対象だと思っています。宇宙のことが全て分かってしまったら、興味を失いそうではあるんですが、どうもそんな感じにはならなそうなので、今すごく魅力を感じるものになっています。
川﨑:今、宇宙で楽しく自分の好きなことができて、ロマンを持って月面探査、火星探査できている人たちというのは、残念ながら政府機関の人たちなどにまだ限られています。一方、我々民間企業の役割は何かというと、産業を作っていくのがすごく大事なんですよね。産業を作るとそこに市場が生まれ、その先に売上が上がってきて、人がごはんを食べられる世界が広がっていく。日本だとそれがまだまだ少ないと思っていて、まだまだ宇宙産業は産業として成り立っていません。なので、沼らせてるのは何かというと、苛立ちに近いかなと勝手に思っています。
──会場の参加者からは、SFでよくある「ワープ」についての質問や、法整備がされていない宇宙空間についての倫理などについての質問があがり、登壇者とも意見を交換して盛り上がりました。
松広:人間が想像できることは、人間が必ず実現できると思っています。「ワープ」に関しては昔から想像されているので、実は実現に近いところにいるのかもしれません。
──登壇者それぞれの宇宙への熱を感じるメッセージでイベントはエンディングを迎えました。
嶋田:宇宙はものすごく未開の地ではありますが、何かアイデアがあったら起業するのはとてもいいことだと思います。当社の社長も元々、経産省の役人で宇宙法の整備をやっていましたが、会社を立ち上げて2年ですでに90名ほどメンバーがいるんです。今、追い風で政府もJAXAも頑張っていますし国際競争力を高めていかなければいけない重要な時期なので、みなさんも知恵やアイデアがあればぜひ宇宙に挑戦してみてください。
松広:宇宙はビジネスで考えるとハードルが高くて投資してもなかなか回収できない、かなり難しい領域ではありますが、逆に今宇宙に挑戦している人たちの情熱に支えられている分野だと思います。最近はだんだん変わってきていて2040年くらいには宇宙産業も今の自動車産業と同じぐらいの市場規模になると言われています。これからどんどん関わるチャンスがあると思うので、ぜひ何らかの形で関わっていただきたいなと思います。
川﨑:これから宇宙産業を作っていくのは、政府機関はもちろんですが、我々、宇宙ベンチャーや一般企業だと思っています。たまに「文系なんですけど」といった質問がありますが、文系理系はあまり関係ありません。自分の今持っているスキルをどう宇宙業界に活かすかとか、こういうことをやってみたいからとか、起業してみるのもいいかなと思うので、今日が何かのきっかけだと思って、挑戦するところからはじめていただければと思います。
阿依:宇宙はいろんな意味で、ものすごく広いと思います。ぼくは学生の頃からずっと宇宙開発をやってきましたが、今日も学ぶことが多かったです。ビジネス、学者、エンジニア、と入り方はいろんな手段がありますが、はっきり言ってハードルは高いと思います。失敗することも多いと思いますが、それだけチャンスが大きく広がってると思ってほしいです。ぼくが宇宙に沼っている理由も「ロマン」ですが、みなさんも宇宙のロマンをちょっと日常生活に取り入れると、ロマンあふれる不思議な毎日がやってくるんじゃないかと思います。
──会場では宇宙関連イベントのチケット獲得をかけた、ジャンケン大会も行いました。知らないこともまだ多い宇宙について、様々な可能性を感じてワクワクする時間となった本イベント。未来を大きく描いてどんどん実験していきましょう!