恐怖心・好奇心と向き合う体験型アトラクションで
未来の人々の好奇心や生きる力を育む
Omoracy
恐怖心・好奇心と向き合う体験型アトラクションで
未来の人々の好奇心や生きる力を育む
これからの100年をつくる、U35の若手リーダーのプロジェクトを推進するアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」。プログラムを終えたメンバーは、現在どんな活躍を見せているのでしょうか?
「Omoracy 」プロジェクトの野々村哲弥(株式会社ロジリシティ)に100BANCHでのGARAGE Programで得られたことや、現在も続く100BANCHとの関わり方、プロジェクトの状況や今後の展望をお聞きしました。
野々村哲弥 Omoracy 代表、株式会社ロジリシティ 代表取締役。「奇」の探求家。体験クリエイター。 1984年、兵庫県川西市出身。 同志社大学卒業後、(株)ジャパンエフエムネットワークに入社しラジオ営業や番組制作や新規事業(中国向け広告)等幅広い業務に携わる。 2018年、独立しOmoracyを始動。2019年10月、総務省 異能vation『2019年度 異能ジェネレーションアワード』ノミネート。現在は株式会社ロジリシティとしてVRバンジージャンプ装置『どこでもバンジーVR』の事業化に取り組みながら、体験型エンタメ・体験型アートの創作やオンラインコミュニティの立ち上げなどにも挑戦中。 |
野々村:現在、私はVRのバンジージャンプの事業開発に取り組んでいます。体を真っ逆さまに反転させる装置とVRプログラムを組み合わせたバンジージャンプという世界のどこにもないアプローチを考案して商業的にコツコツ広げている真っ最中です。ありがたいことにメディアにも多数取り上げていただきました。
プロジェクト名はOmoracy(オモラシー)といって、「人生を冒険的に生きてみたくなる」体験や現象をつくるプロジェクトです。人生の冒険は好奇心からはじまるべきだと思っており、「おもしろい」「あたらしい」といったワクワク湧き上がる好奇心をプロジェクトの名前に込めて、Omoracyと名付けました。
Omoracyとして、100BANCHに入居することになったきっかけや、入居中のエピソードを教えてもらいました。
野々村:私は2007〜2018年まで会社員をしていて、2018年5月に100BANCHを知りました。30歳を超えてこのまま会社員をやっていていいのかなとモヤモヤしてたときにスマホのニュースで見かけ、応募の門戸が開かれてるんだと知ってその月に応募しました。メンターさんが面談してくださって、企画修正をした上で採択の通知をいただいたのが7月の上旬です。あまりないケースですが、私は事務局さんに相談して入居期間を遅らせてもらいました。退職スケジューリングの都合で10月入居にさせてもらい、Omoracyとしての活動が始まりました。応募を考えている方には、「そんなやり方もあるのか」と思ってもらえれば幸いです。
入居してからのことを振り返ると、自分のプロジェクトとしての研究や創作活動についてと、周りのプロジェクトへの興味についての大きく二つがあります。
自分の性格的なこともありますが、私の場合は会社を辞めてから100BANCHで活動を始める選択が本当に良かったと思っています。自分の中で毎日12時から18時まで100BANCHに来るぞという縛りを作って活動に没頭していきました。
また、周りのプロジェクトへの興味が刺激になって、たくさん交流もできて良かったです。100BANCHにはとにかく様々なジャンルのユニークな活動が集まっていて、そのプロジェクトについて話をしたり、それぞれの活動のテーマに関する人やものを紹介し合ったりしました。それぞれのプロジェクトは身近な生活と必ず接点があり、例えば自分の日々のインプットの中で銭湯に関する情報があったら、銭湯の活動してるメンバーに共有してみたりとか、美容室に関するプロジェクトをしているメンバーには美容室の店長をしてる友人を紹介してみたりとか、そういうこともすごく楽しかったですね。お互い取り組んでいることもフェーズも違いますから、利害関係のない間柄として協力し合える関係が育まれたかなと思います。
入居してると周りのプロジェクトからのイベント開催情報を小耳に挟むので頻繁にイベントに足を運び、そこで感じたことを後日100BANCHでフィードバックしたり議論したり、と日々楽しんでいました。自分のプロジェクトも、周りのプロジェクトにかなり助けられましたね。私のやってたことには被験者がとにかく必要でした。「こんなのを作ってみたからやってみてください」と被験者の募集を100BANCHの中でも協力してもらい、単純に人手が必要なときもみなさん自然と手を貸してくださることが本当に多かったです。
100BANCH2階のガレージはミーティングスペースとしても活用できるのですが、来客時は100BANCHを紹介することによって、自分の信用を高めることを意識していました。当時私は、会社を辞めてバンジージャンプ作ると言い出している「変わったヤツ」でした。でも、「パナソニックが100周年で作ったプロジェクトに私は採択されています」と言うと理解していただけることも多かったです。周りの成功しているプロジェクトと並列で自分のプロジェクトを紹介することで、私もこの場の一員なんだと、相手の方に思っていただけるようにつとめていました。(笑)
そして、100BANCHのありがたい点の一つが入居期間を過ぎた後でも関われる点です。100BANCHは常にオープンで3カ月のアクセレーションプログラムが終了したOB・OGにも開放されている場所なので、私は今でもちょっとした打ち合わせや作業で立ち寄って、偶然居合わせた人たちとの交流を楽しんでいます。「最近どんな感じ?」という会話からお互いの壁打ちがはじまるのが日常茶飯事で楽しいです。
Omoracy のプロジェクトの具体的な活動の一つが、VRのバンジージャンプづくり。そもそも、なぜVRのバンジージャンプをつくろうと思ったのか、野々村はその理由を話します。
野々村:なぜバンジージャンプなのかというと、僕自身がスカイダイビングやスキューバといった数々のアクティビティを体験する中で、「バンジージャンプは本物の冒険だ」とリスペクトしている存在だからです。実はバンジージャンプの発祥は1979年。イギリスのオックスフォード大学学生の向こう見ずな好奇心によって現代の商業バンジージャンプが誕生したと言われています。バンジージャンプの体験には、大きく三つの要素があります。まず、ジャンプ台に立ったときの形容しがたい非現実感。目の前の現実があまりにも怖すぎて現実なのに現実と思えない。他では味わえないリアリティを体感することができます。そして、その上で自分の意思で能動的に非現実的な現実に飛び込んでいくという凄まじさが二つ目にあります。三つ目は最終的に得られる圧倒的達成感。これらの体験がバンジージャンプを構成していて、私はそんなパンジージャンプ、あるいはバンジージャンプ的なものをつくっていく活動をOmoracyでやっています。その第1弾の活動がVRバンジージャンプとその事業化です。
元来、VRのバンジージャンプは椅子に座った状態で楽しむものでしたが、自分自身で体験してみた際、「おいおいバンジーのすごさってこんなもんじゃないよ」と強く思い、自ら飛び込んでいくスタイルのVRバンジージャンプをつくろうと決めました。
野々村:体験装置の試作開発を重ね、最終的には大型のキューブの中でバンジージャンプをVRで体験できるアトラクションを世の中に出しました。VRで見る景色は、静止画だけではそこまで迫力は感じられませんが、VRゴーグルをつけて体感すると、本当に迫力があって面白いです。これを「どこでもバンジーVR」というサービス名にして2019年の秋にセールスをスタートしました。
大きな体験装置が最終形でしたが導入コストが高くてなかなか売れず、加えてコロナ禍という状況もあり、葛藤の末にお蔵入りになりました。結果的に現在は小型版シーソーのアプローチを主力に展開している最中です。小型版ではありますが、回転の勢いによってアトラクションとしての落下感や浮遊感を実装することができており、何より搬入搬出も運営もローコストでできる利点もあります。
実装例として「東京タワーバンジーVR」というコンテンツがあり、有料で毎週末開催しております。現在はリニューアル準備中ですが、東京タワーの展望台からバンジージャンプができるアトラクションを開催しており、昨年4月のオープンから1年半で1万2,000人以上に体験していただいています。また大阪にある、日本一高いビルあべのハルカスに今年の夏、「ハルカスバンジーVR」をオープンし、夏休み43日間の間、毎日開催し期間中に4,000人以上に体験していただきました。今後は東京大阪以外のエリアや、海外に観光体験をDX化するコンテンツとして広げていくこと、単発の出張イベントにも力を入れていきたいと思っています。現状は手動で体験装置を動かしていて、その面白さを売りにしている部分もありますが、クラシカルな手動も残しつつ、地方や海外進出を見据えた自動化も進めています。
つづいて、野々村は将来に思い描いていることについても紹介してくれました。
野々村:まだ世にない、つくりたい「バンジージャンプ的な体験」がたくさんあります。なかなか言語化が追いついていない部分もありますが、例えば、火にくるまれてみたいと思っていて、何かそのような体験ができるアトラクションがあってもいいと思っています。さらに言うと、現実世界にイースターエッグを隠すような体験、というか、「アトラクションであると思っていなかったところに、そういうアトラクション的なものがあるような体験」もつくりたいと思っています。今後は「アート」としても「商業」としても今までにないような、人をドキドキさせる体験をこの人生でたくさん創っていきたいし、それがもっと創りやすくなるようなしくみをつくっていきたいというのが Omoracyとして非常に強く思っていることです。そのためにもまずは「どこでもバンジーVR」を商業的に成功させなければいけないので、皆様に応援していただければうれしい次第です。
野々村:100BANCHとは今も関係が続いていて、卒業後も、年に1回のナナナナ祭に参加することができるのもユニークな点だと思っています。初回は一人の参加者でしたが、2〜4回目は出展者としてイベントを企画したり、他のプロジェクトとコラボして企画をやったりと、出展するたびに良い学びがあります。
総括すると、100BANCHはそれぞれのプロジェクトの1人1人がすごい場所で、加えて自分の活動を「未来をつくる実験」と掲げることによって、自分の生き方に変化をもたらしてくれていると感じています。今後も現役のプロジェクトや入居していくプロジェクトに恥じないように私も気を引き締めていかなくてはと思っています。そんな、時空を超えた切磋琢磨でみなさん頑張っていきましょう。100BANCHはそんな場所です。
野々村の今回のお話の内容は、YouTubeでもご覧いただけます。