EVENT REPORT

2022.07.22 Fri

環境にいいだけでは支持されない!「 ゴミからはじまるモノづくり」イベントレポート

  • #ナナナナ祭2022

  • #Diversity & Inclusion

  • #COMMUNICATION

ナナナナ祭2022の4日目となる7月4日には、ゴミとの付き合い方や次の時代のモノづくりを再考するシンポジウム「ゴミからはじまるモノづくり」が開催されました。ゴミの問題に注目した商品やサービスを生み出す、そんなチャレンジをしている3つのプロジェクトの活動紹介や、大山貴子さん(株式会社fog 代表取締役)によるインプットトーク、登壇者によるクロストーク等が行われました。

「なっとう娘」という名前で納豆インフルエンサーとして活動している鈴木真由子さんは、納豆の会社のSNSブランディング、納豆に関するウェブ媒体での執筆や、納豆の商品開発、テレビ番組などでの納豆の紹介といった活動をされています。

自身がおいしいと思った納豆や、納豆にまつわるアパレルグッズを取り扱う通販サイトも展開しており、この日も「納豆天国」のTシャツを着て登壇。ナナナナ祭で販売している「竹紙納豆」の活動について話してくれました。

鈴木:私は納豆が大好きで1日5〜6パックとか食べる日があるんですが、発泡スチロールのパックがすごい量になるんですね。これが紙のパックだったらもっとコンパクトにできるのにと思ったのが、竹紙納豆を開発した最初のきっかけです。また、食べることで社会貢献ができるような商品ができたらいいなと思っていたときに「竹」が放置されたり廃棄されている「竹害」の問題を知ったんですね。それで竹を使った紙パックの納豆ができないかと調べていたら、竹で紙を作ってる会社に出会い、そこにご協力いただきながら実験をしています。

鈴木さんは実際の「竹紙納豆」を見せながら「茶色の部分が竹紙で、この白い部分も本当は竹紙にしたいんですが、加工できる会社が見つかっておらず、(一般的な)紙の状態なんです。ゆくゆくは商品化したいと思っているので、その際にはこの両方の部分とも竹紙で作れたらいいなと思っています」と説明しつつ、「別の新しい形もあるかも、と試行錯誤しながら竹紙納豆と向き合っている日々です」と話しました。

続いてパナソニックの山本英郎さん(パナソニックホールディングス株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部 成形技術開発センター 成形技術開発・事業 企画責任者)が登壇。植物由来のサステナブルなプラスチック「Kinari」の開発について説明しました。今回のナナナナ祭で使われている100BANCHのカップも「Kinari」の材料を使って作られています。

近年、トウモロコシなどに代表されるバイオ系プラスチックなどが注目されていますが、これらは食物を原材料としているために価格の不安定に繋がったり、環境には優しいものの経年劣化で風化しやすく機能面で優れない等の課題があるそうです。

そこで、環境にも優しく、機能面でも優れた、長く使える新しい材料を研究してきた、と山本さんは話します。

山本:私達が木を分解して作る「セルロースファイバー」という材料に注目しました。セルロースファイバーを1000分の1ミリの単位まで分解したものが「セルロースナノファイバー」を混ぜ込むことで、植物由来の環境に優しく軽く強い材料にならないか、と研究してきました。

山本:従来のセルロースファイバーは10〜20%ぐらいしか樹脂に混ぜられなかったと言われてたんですが、ある研究者がふと、たくさん混ぜてみようと実験してみたところ、85%ぐらい混ぜることができたという小さな発見から、「セルロースナノファイバー」の研究をはじめています。現在は85%混ぜられるだけでなく、乾燥工程も減らしてCO2の排出を抑えた生産ができるところまで来ています。

山本:こうしてつくった「Kinari」は、石油由来の樹脂の使用量を大きく減らせて環境に優しく、さらに繊維を加えているから強度も優れています。セルロースは紙や植物の実や茎、コーヒー豆のカス、衣類など、世の中のいろんな製品や廃棄物からも抽出できるので、これらからセルロースを抽出して再び樹脂に戻してあげようというような取り組みも、いろんな企業や国、地方団体とやっています。

また「Kinari」は「生分解性」と「資源循環」という点にもあわせて取り組んでいます。

山本:新しい樹脂のジャンルとして普及した場合、環境に悪いんじゃないかという声もあったので、仮にゴミとして流出しても再度分解されるようにしたい、と考えて開発してきました。同時に「資源循環」ということで世の中に出回っているいろんな樹脂を分別するような装置も開発しています。

続いて傘のシェアリングサービス「アイカサ」CEOの丸川照司さんが登壇、サービスの紹介と現在の取り組みについて話しました。

丸川:「アイカサ」は、使い捨て傘を0にする、雨の日を快適にハッピーに、をミッションに掲げて展開している事業です。ミッションの達成を目指しつつ、いろんな社会課題に対して「ビジネス」というアプローチで解決できることを人生をかけてやっていきたいと思っています。

日本では年間約8,000万本ものビニール傘が消費されていて、その安易な廃棄がゴミ問題に繋がっている、と丸川さんは言います。電車文化や雨の日が多いという風土、コンビニの発達で手軽にビニール傘が買えるようになったといった背景から、使い捨て傘が広がったのはここ30年くらいで発生するようになった問題だそうです。

丸川:日本では雨が降ると傘を買う人がけっこう多くて、一回の雨で50万本ぐらい買われてるんです。日本全国で毎年8,000万本の傘の廃棄が生まれていて、資源の無駄、景観としてのゴミ問題、傘の製造過程でのCO2排出などといった課題があります。

これらを0にするためにはどうしたらよいか。「アイカサがコンビニ以上の網羅率、インフラになれば良いんじゃないか」と丸川さんは仮説を立てました。

丸川:目の前に「アイカサ」があれば、傘を買うよりも安くて便利で、環境にも良いという、メリットしかないサービスです。そんな圧倒的な優位性を持つことができれば自然と「何で傘買うんだっけ?」という未来を作れるんじゃないかと思っています。

現在「アイカサ」は、約1万5,000本の傘を用意、300〜400駅、計約 1,000ヶ所の場所に設置され、会員登録が30万人を突破しました。また、こだわりとして修理ができて1本で3〜5年ほど使える傘を採用しているそうです。

丸川:傘1本の資源を何百回と使うため、排出するCO2もかなり少ないです。また、サプライチェーン上のGHG(温室効果ガス)を概算し、その分の植林を行ってオフセットしています。利用者の99%の方がまた使いたいとおっしゃっていただく等、好感度指標も高く、サービスを一度体験してもらえると変わっていく習慣なのかなと思っています。

丸川さんは「傘自体がまだ新資源が使われています。この点も環境へのインパクトを最小化していきたい。」と今後の展望を話しました。

インプットトークとして、過去には100BANCHにも入居してフードロス解決のプロジェクトに取り組まれていた大山貴子さん(株式会社fog 代表取締役)が登壇。今回のナナナナ祭でも反毛(はんもう)という技術を使ったサステナブルなTシャツの制作支援や、イベント全体のガイドライン制作にも携わっていただきました。

大山さんは、最近ゴミの問題が注目されている理由として、今後20年でゴミの最終処分場の容量がいっぱいになってしまうと言われていること、海洋プラスチックゴミによる環境汚染での生態系の破壊、生産・焼却におけるCO2排出での気候変動などがあることを紹介し、サステナブルという文脈でゴミを使ったモノづくりが増えてきた、と話を進めます。

大山:(資源をリサイクルなどで再利用して循環させる)サーキュラー・エコノミーの話をすると、アムステルダムや北欧の事例がよく出てくるんですが、日本におけるサーキュラー・エコノミーはちょっと視点が違うなと思います。70%が森だという国土的な観点から、資源からはじまるサーキュラーというのがすごく日本らしく、ゴミから始めるモノ作りに対して、一つのポイントなんじゃないかなと思っています。

大山:森の木はCO2を吸収する貯蓄材として注目されていますが、樹齢20年ぐらいがそのCO2吸収のピークだそうです。それ以上経つとほとんど吸収しないので、高度成長期以前に植えられた木は実はゴミの山なので早く処理しなきゃ、みたいな点も日本の自然やサーキュラーの目線では大切なポイントですね。

続けて、大山さんはサーキュラー・エコノミーおよびその問題点について説明します。製品購入後のサーキュラーが見えなかったり、必要かどうかはっきりしないのに「サステナブルだから正しい」という潮流で生み出される製品も多いといいます。

大山:廃棄物や汚染を生み出さない設計、製品および原材料を使い続ける、自然のシステムを再生する、というのがサーキュラー・エコノミーの三つの原則と呼ばれますが、これけっこう難しいと思うんです。100%リサイクルされてますっていう製品もよくよく聞いてみると工場内のリサイクル率が100%なだけでそれが全体の20%ぐらいだとすれば、残りの80%っていうのはけっきょく購入された後に捨てられてゴミになってしまう。また、サステナブルやSDGsを謳う商品が色々登場していますが、「そもそもそれ必要なの?」という問いがサービス設計の前にされていない商品が多いのも最近のサーキュラーの問題点です。

インプットトーク終了後、100BANCHの則武さんがモデレーターとなり、登壇した4名のプロジェクトやインプットトークについてクロストークが交わされました。

則武:大山さんのインプットトークの中で、モノづくりの目的は課題の解決なのに手段であるはずのサーキュラー・エコノミー自身が目的化してしまうケースが多い、という話がありました。

大山:納豆が大好きで食べ続けるためにこうなったという「なっとう娘」はすごく正しいロジックで、順番として正しいなって思います。ふとした思い、自分の違和感が起点となり、結果として環境負荷がかからないような商品ができたっていう順番は、すごく理想的ですね。

則武:サステナブルとかSDGsとかすごく言われすぎてるが故に目的化してる事例みたいなのは確かにあるかもしれませんね、ファッションというか。

大山:そういうことですね。サステナブルっていうのが前提条件になっちゃうとなんとなくファッションになっちゃって、すぐ終わってしまうというか、賞味期限の短い商品になってしまう。

則武:例えば「アイカサ」だと、自分が購入して持ってる傘とシェア傘ってぜんぜん扱い方が違いますよね。そういう傘の扱いを再設計する必要があると思うんですが、ユーザーさんに対してどうやったら行動変容をもたらせるのか、これまでやってきた中でここが肝だなって思うことはありますか?

丸川:私たちは順番を意識してますね。お客さんはまず「雨に濡れたくない」という瞬間の気持ちが強いんです。カフェに行くとか色んな選択肢がある中、一番最初に「アイカサ」を選んでもらうっていうのが大事で、その上で返却時に「使い捨て傘を減らすためやっています」とか「傘を買わなくて済んだ分、CO2に貢献しました」っていう表示をすることで、まずお客さんのニーズを満たしつつ、その上で私たちの想いを伝える、という順でやってます。

鈴木:私は竹紙納豆を「竹から作った紙で包んだ納豆です」みたいに売り出したんですが、通りがかる人は「竹紙で包むと納豆がおいしくなるの?」と、味に対して反応していたんです。食べてくれる人のニーズを満たしつつ、実は自分たちはこういう想いやこだわりがあるんです、って伝えていく方が、より多くの方に届けられるのかなっていうのを考えさせられました。

則武:すごくいい話ですね。実際に私も食べさせてもらったんですが、多分、鈴木さんが推してるところと私が「すごくいい」って思ってるところは微妙にずれてたりしますよね。納豆パックを変えたことで、なんかすごく食べやすくなったんですよ。

鈴木さんは「竹紙納豆」を手に実演しながら説明します。

鈴木:竹紙の片側を全部開けて、もう片方を閉じるとカップみたいになるんです。この中にお醤油入れて混ぜてもらったりすればすぐに食べられる納豆になって。このパッケージを則武さんや他のお客さんもとても気に入ってくれて。自分としては「竹紙で包んだ」ってことをすごく推したいけど、みんなにとっては「便利」「食べやすい」「おいしい」みたいなところが刺さりやすいんだなってのは今回すごく気づきがありました。

丸川:実は私、たまたま大山さんと同じブランドのサステナブルな靴を履いてるんですが、履いてる理由はそもそも靴として気持ち良かったり、出来が素晴らしいからなんです。

大山:これはオールバーズというスニーカーで、素材も全てサステナブルだし、生産におけるCO2の開示も全て行ってるような靴です。確かにすごく履き心地が良くて種類も豊富で完成度もとても高いんです。なので「サステナブルだから履いている」というより「履きやすくて、街歩きにちょうどいい」から履いてるっていう意識が強いですね。

則武:みなさんのやってることは循環型のモノ作りやサービス作りだなと思うんですが、実際に循環させようとしたとき、すごく大変なところがあるのではないかと思うんです。山本さん、いかがでしょうか?

山本:「Kinari」をサーキュラーにするためには、やっぱり「エコノミー」というか経済的に好循環させないといけない。本当にいいものだなと、ユーザーにその価値を感じていただいて、回す。そういうことが大事だというのは本当に感じます。「環境に優しい材料なんです」っていうだけじゃ「結局、いくらなの?」っていつも言われてしまうので、強い、軽い、等の価値と共にサーキュラーを考えないといけないのかなと考えています

イベントの最後には、参加者が複数のグループに分かれてディスカッションをするグループワークが行われました。イベントの登壇者や100BANCHのメンバーもディスカッションに参加し、気になっているゴミの問題や未活用資源の可能性について語りました。

いまや大きな社会問題となっているゴミと資源の問題ですが、「環境にいい」だけではなかなか人は動かない、というのが登壇者の共通の意見です。ユーザーにとって魅力的であり、それでいて環境にもいい。両方を実現するのは簡単なことではありませんが、そんな難しい課題に試行錯誤を繰り返しながら挑戦し続ける登壇者の活動から、資源問題解決の可能性が感じられたイベントでした。