落書きを犯罪として無視するのでなく、
その魅力を体験し、街の見方を変える
Post-Graffiti
落書きを犯罪として無視するのでなく、
その魅力を体験し、街の見方を変える
現代の街中にあるグラフィティを再構築するプロジェクト「Post-Graffiti」が、初のイベント 「Outside IN」を100BANCHで開催しました。
Outside INは、室内でストリートを身近に感じてもらうことを目的としたイベントです。イベント会場となった100BANCHの「Gallery」には、「街の落書き」「ゴミ」「交通ルール」「コンクリートに出来た模様」「信号機の光」といった街のパーツが集められ、グラフィック、アート、パフォーマンスとして室内に再構成されました。
さらにイベント当日は、DJ taomoをゲストに招き、ギャラリーとしてだけではなく音楽イベントとしても構成することで、ここでしか体験できないポストグラフィティーショーを実現しました。
Post-Graffitiでは現代の街中にあるグラフィティの表現を別視点から解釈し、再構築するプロジェクトです。
1980年代にグラフィティの犯罪性の払拭を掲げ、美術界へと持っていくムーブメントとしてPost-Graffitiは生まれたものの、あまり注目を得ずに終わってしまいました。
そんなPost-Graffitiを私たちが表現を拡張し、グラフィティ文化をより多くの人に理解してもらうのがこのプロジェクトの目的です。街の小さな花を知ろうとする様に、私たちは無視され続けるグラフィティを理解し新たなる文化を咲かせるのです。
プロジェクト代表者の野口陽向が大学の卒業制作で作ったグラフィティクッションからPost-Graffitiは始まりました。100banchのGarage programでは、作品制作からグラフィティの研究、Post-Graffitiの概念を構成し新たなる表現の発掘し実現してきました。
100BANCHにてプロジェクトを進めて行く中で、初めはグラフィティクッションだけで進めていたPost-Graffitiも作品数が増え、コンセプトもある程度固まってきた中、次のステップとしてそれを公開する事が目標となり、Post-Graffitiをどう第三者に知ってもらうかを考えた結果、展示イベントを開催することになりました。
Post-Graffitiを展示をするにあたっては、グラフィティ文化からあまりにも解離しすぎてしまわないよう、場所や空間の使い方に気をつける必要がありました。100BANCHの3階は比較的に使用できる自由度が高く、空間も整備されすぎていない環境だったので、私たちの需要にぴったりでした。
今回行った「Outside IN」は、名前の通り外を内へと変え、私達が思う理想の公共性、街のあり方を訴えると同時にPost-Graffitiを知ってもらうコンセプトでした。
グラフィティが単なる落書きではなく、しっかりとした文化が存在し立派な表現方法である事を来場者に理解をしてもらい、街のグラフィティの見方を変える事が目的でした。そのため3階に壁を作り、道を設けることで、そこを来場者が思いのまま空間を過ごし、Post-Graffitiを全身で体験して知ってもらうことを心がけました。また、会場の扉を開けた瞬間から空間を設定することで、3階そのものを作品としました。
ステートメント
Post-graffitiでの作品制作をする際、私たちはグラフィティとは何かを見直さなければならない。表現に飢えた青年たちが美術の高等教育を受けずに街を学びの場とし、キャンバスに置き換えた。規制が増え、不自由な学びの場と変わってしまった。グラフィティのバラエティにも限界が見えてしまい、どれも同じ様なものとなっているのも現実だ。私たちはそこで表現の場、方法を失ったと捉えてはいけない。グラフィティの態度、表現方法から学び、更なる表現の発展を町に繰り出し街に表現の熱を復活させなければならないのである。
Post-Graffitiとは何か
60年代から現在でも見られる様な街の壁に落書きをかくグラフィティアーティストが出没する様になった。表現に飢えた青年たちとグラフィティが相まって街を学びの場とし、キャンバスへと置き換え、街は一瞬にして染まっていった。だが80年代になるとグラフィティへの規制が厳しくなり、多くの若者が取り締まられる事となる。そこで密かにムーブメント化したのがPost-Graffitiである。ニューヨークのシドニー・ジャニス・ギャラリーでPost-Graffiti展が開催され広がっていった言葉だったが、結局のところ公共の壁からリーガルウォールやキャンバスへグラフィティを描いたものに過ぎなかった。それにはグラフィティ文化の考慮が為されておらずその求められた結果、単なる絵画へと変貌していったPost-Graffitiの普及は困難だったのも仕方ない。
そこで私たちが提唱するPost-Graffitiはグラフィティの視覚デザインのみにこだわる事なく文化そのものを再解釈し再構築を繰り返すことにより新たなる可能性を見出していく。野口陽向のグラフィティを立体にし、視覚デザインの定着性を見出したGraffiti Cushionから派生し、私たちは映像や音楽、紙、パフォーマンスへと拡張してきた。今回の展示では100Banchの会場を様々な人が集える公共空間と捉えて革新的なPost-Graffiti表現をお披露目していきたい。
3階のドアを開けた場所には、斎藤さんの作品をプロジェクターで投影。会場がパブリックスペースである事を意識させるために、渋谷で街中で撮った作品を映し出しました。会場に入った左側は天板で壁を作ることで会場が入った瞬間はまだ作品が見えない状態にしておき、展示スペースに沿った形で壁を配置する事で展示ルートを作りました。
壁には野口さんのグラフィティのポスターとイベントの概要、そしてグラフィティ文化を理解するために必要な用語を掲示しました。また、左側の展示スペースには寺田さんのコラージュを配置し、道を進む上でも作品と触れ合える様にしました。
道を抜けるとメイン会場となって、横断歩道や信号機を設置することで会場を街へと変貌させました。斎藤さんが制作してくれたARを空間にかざすと、アバターが踊り始めたり横断歩道を渡ったりします。野口さんが制作したグラフィティクッションは会場に散りばめられていて、来場した方が座ったり、一緒に写真を撮るなど触れ合えるようにしました。
会場自体がかなり大きく、どの様に埋めるかが一つの課題でもありましたが、多くのゲストを迎えたことで、ポストグラフィティで空間を埋める事ができました。また、数名のサポートに協力していただいたおかげで、会場の流れもスムーズに行え、来場者対応も不満の無い展示ができました。
音楽やパフォーマンス、体験型の展示でもあったため、来場者のほとんどは長い間滞在していただき、私たちも展示やPost-Graffitiの説明をしっかりできたことで、多くの方々に理解していただいた実感を強く感じる事ができました。
当日のギリギリまで不安になりながら準備をしていましたが、来場者も40人近くいらっしゃっていただき、初めてのイベントとしてはとても満足行く結果になりました。
一方で、準備時間の問題や私達の願望が追いつかず、急ピッチに進んでしまった事もあって、会場の展示物、空間がどうPost-Graffitiに関連するのかを説明する部分が甘くなってしまいました。
音楽と映像がメインになり過ぎてしまった部分もあり、視覚だけで私達の作り上げた概念が伝わったかは少し不安が残るものでした。
100人を定員としていましたが、実際の来場者数は半分以下だったのも反省点です。イベントのプロモーション自体が遅れてしまったのが1番の原因であり、来場した方ほとんどが、プロジェクトメンバーが招待した方でした。老若男女関わらず、なるべく多く多様性のある来場者を迎えようとしていた今回のイベントでは少し後悔の残る結果となりました。
今後の展示はPost-Graffitiが何であるかを理解してもらえるよう、更なるグラフィティの考察とPost-Graffiti作品の制作を励んでいきます。また、様々な広告媒体を利用して早めのプロモーションを行うことで、より多くの人にPost-Graffitiを知ってもらえるようにしていきます。