境界緑地 ─ 苔×公共物 ─

「都市に苔のユートピアをつくる」ことをビジョンに掲げるデザインプロジェクトMOSSTOPIAは、これまで苔×公共物という製作フォーマットをベースに、未来の都市をつくるプロトタイプ「Future Prototype」を製作してきました。
ナナナナ祭では、GREEN×EXPO 2027にも展示する「苔コーン」「苔灰皿」「苔ライト」「苔ウォール」「苔パネル」のプロトタイプを展示。都市の未利用な境界から、苔を増殖させていく未来を描くというコンセプトから「境界緑地」とタイトルを名付け、プロトタイプの展示を実施しました。その展示風景や今後のビジョンを、MOSSTOPIAの上野祥太が振り返ります。

今回のナナナナ祭では、これまでMOSSTOPIAとして製作や実験を行ってきた「苔コーン」に加え、GREEN×EXPO 2027に向けて製作を行う「苔灰皿」「苔ライト」「苔ウォール」「苔パネル」を含む計5種のFuture Prototypeを展示しました。
展示タイトルは「境界緑地」と名付け、都市の未利用な境界──道路と歩道のあいだ、建物と建物のすきま、人と人を隔てる仕切り──から苔を増殖させていく未来を描くこと。また、公共物でもあり、同時に苔の増殖装置でもある「AでありBでもある」バウンダリーなものであることも、この言葉に託しました。
今回の展示に向けてMOSSTOPIAでは、既存の苔コーンに加えて、計5種類のFuture Prototypeを製作しました。これまで、苔コーンでは解決できていなかった、苔の着生の安定化という課題に向き合い、3Dプリンタを用いた内部構造の設計によって、糸などを使わない苔の壁面への定着方法を開拓。さらには、苔の生育の観点から、保水性の高い炭とコンクリートを配合した、炭コンクリートという素材の開発も行いました。
・苔コーン

苔と三角コーンを掛け合わせた「苔コーン」。都市の隙間に大量に存在する未利用資源である苔を、新たな都市における苔の増殖装置として捉え、タクティカルアーバニズム的に都市に介入していくための未来のプロトタイプです。
・苔灰皿

都市の喫煙所に置かれている灰皿に苔を着生させた「苔灰皿」。喫煙所でしか利用されないモノに苔を組み合わせることによって新たな価値を生み出し、喫煙所自体を従来とは違う新しい都市空間へと作り変えることを目的として製作しました。
・苔ライト

夜間にしか機能を発揮しない、公園や遊歩道などに設置されるボラードライトに新たな価値を付与した「苔ライト」。本来、苔が自然に根付くには不安定な環境であるライトの足元に、苔が生育しやすい環境を外殻によって整え、苔を増やすことを目指しています。
・苔ウォール

3Dプリンタならではの造形構造であるジャイロイドを使用し、糸などの支えを使用しなくても、苔と土台がしっかりと定着する技術を用いた、「苔ウォール」。都市の未利用な壁面から新たなみどりを増やしていくことを目指しています。
・苔パネル

空間を分けるために使われるパネルと苔を掛け合わせて製作した「苔パネル」。回転する機構を設けることで、日本らしい可変的で曖昧な空間の仕切りを行う。両面に苔を設置することで、効率的に都市に苔を増やしていくことができます。
プロジェクトが立ち上がって、ナナナナ祭のタイミングでちょうど1年程になるMOSSTOPIAは、2027年5月にGREEN×EXPO 2027への出展を予定しています。しかし、これまで大学の研究ベースで推進してきたプロジェクトだからこそ、社会実装に向けて、世界中の人々が集まるイベントで新たなチャンスを掴む上では、出来ていないことが山積みでした。
そこで、ナナナナ祭を1つの目標に製作を進めるだけでなく、新たな実証実験やコラボレーションの可能性を探る機会として捉え、少し背伸びをしてでも複数のプロトタイプを製作、ビジョンや活動に共感してもらえる仲間を探すことを重視していました。

今回の「境界緑地」という展示を振り返って、プロトタイプの「数」が世界観の解像度を変えるということに大きな発見がありました。 これまで展示や実験を行ってきた「苔コーン」だけでは、MOSSTOPIAの未来を想像してもらうには足りていませんでした。しかし、5つのFuture Prototypeを同時に展示したとき、初めて「苔のユートピア」という世界観が空間のなかに立ち現れた気がしました。モノ単体ではなく、複数の公共物が苔に覆われている風景を見せることで、10年、20年先のビジョンをも実感を持って共有できることが大きな気づきでした。
また、この結果として、新たな視点での議論やコラボレーションのきっかけにまで繋げることができました。これまで苔コーンだけを展示していた際には、そのものが良いか悪いかという議論にばかり終始してしまっていました。しかし、苔を増やす手法の選択肢が増えたことで、「『苔ウォール』を地方に新たに建設されているデータセンターの建造物の壁面に使えれば、環境への影響を抑えられそうで良い」「都市の生物多様性を増やすのに良さそうだから、何か一緒にやりたい」など、これまでになかった会話が展示中、何度も生まれていました。

今回のナナナナ祭での展示を振り返って、MOSSTOPIAの課題とこれから先、GREEN×EXPO 2027に向けて取り組むべきことが明確になりました。まず、課題には、実際に社会に実装を行う上での耐久性や管理性の検証が不十分であることが最も顕著に現れました。導入の可能性が話に上がっても、耐久性や管理性に関することを断言できないために、次のステップに進めない。この課題を、来年の花博に向けて解消すること、実証を進めていくことが今後の取り組みとして明確に定まりました。
これから先、MOSSTOPIAの活動を研究段階で終わらせないために、実証実験の連携や新たなコラボレーションの機会など、積極的に募集しております。もし何かしら話したいということがあれば、気軽にご連絡いただけると幸いです。
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