
- イベントレポート
“好き”が拓く道「第4章:[偏愛×創造] わたしだけの熱狂が社会を揺らす」──ナナナナ祭2025アーカイブ
「未来をつくる実験区」として日夜、未来への仮説を検証するためのさまざまな実験を繰り返している100BANCHですが、ナナナナ祭はその実験を広く公開し、多くのご来場者に参加いただくことで、メンバーたちの活動を加速させる重要な役割を担っています。
だからこそ、ナナナナ祭をどのようなお祭りとして設計するかは100BANCH事務局にとって、大事なテーマであり最大の実験。8回目となる今年のナナナナ祭にどのような思いを込めたのか、100BANCHオーガナイザーの則武が振り返ります。
100BANCHにとって最大の「ハレの場」であるナナナナ祭も今年で8回目。周年祭としてスタートしたこのお祭りは、100BANCHが未来をつくり続ける上で欠かすことのできないものとなっています。
だからこそ、ナナナナ祭を通じて成長につながる機会をいかに創出できるかが事務局にとっての大きなテーマであり、これまでも毎年、その時々に考え得る限りの実験的な取り組みにチャレンジしてきました。
特にコロナ期においては、お祭りの基本要素とも言える「人々が集まる」という行動自体に制限がある中で、「配信×配送」のオンラインーオフラインハイブリッド型、小規模・分散型で全国6拠点を巡るキャラバン形式など、やったことのないフォーマットのお祭りを開発。どんな状況下でも、メンバーにとって新たなインスピレーションの源となる「触発」の機会をつくり続け、「実験」という営みを鈍化させなかったことが今の100BANCHの活気にもつながっています。
そんな挑戦を経て、8回目となる今年のナナナナ祭は結果的に「原点回帰」とも言える企画になったように思います。「脱・オンライン」「ギュッと凝縮した会場」「流しそうめん」など、いくつかのキーワードとともに振り返っていきます。
プロジェクトの成長のきっかけとなるのは何か?──その問いへの答えはありきたりですが「人と人との率直な対話」だと思います。プロジェクト内、事務局とメンバー、メンバー同士、そして来場者とメンバー、あらゆる対話の中にプロジェクトを進化させるヒントが埋まっています。
改めて見直してみると、やっているようで意外と「対話」できていないところや、対話の機会としてもっとブラッシュアップできそうなところが見つかりました。例えば、ナナナナ祭参画メンバーとの定例ミーティング。コロナ期以降、昨年まではオンラインで実施していたのですが、事務連絡など一方通行のコミュニケーションになってしまうことが多く、横のプロジェクトの進捗もつかみづらい形となってしまっていました。
そこで今年は定例ミーティングの数を減らしつつ、やる時には出展メンバーに100BANCHに来てもらい、全プロジェクト集まって実施することにしました。ミーティングでは、それぞれのプロジェクトがピッチやロールプレイングで進捗を共有。それを聞いたメンバー同士、お互いへのメッセージや気づきを伝え合いました。
あっちでもこっちでも会話が自然発生している状態は、リアルならでは。オンラインとは対話の総量が圧倒的に違います。定例ミーティングの脱・オンライン化によって、企画のブラッシュアップやプロジェクトをまたぐコラボレーションが格段に進み、ナナナナ祭本番に向けてどんどん一体感も高まっていきました。
学校や仕事など忙しいメンバーにとっても好都合だろうと思って実施していたオンラインでのミーティングでも、実際にはその便利さと引き換えに、もっと大事なことがないがしろになっていた。皆さんの周りにもそんなことが隠れているかもしれません。
リアル開催した定例ミーティング
合宿での企画ワークショップ
4月に出展プロジェクトが決まり、5月16日〜18日には「ジャンプアップ合宿」を実施しました。今年のハイライトはなんといっても大阪・関西万博です。100以上の展示、しかも国や企業が考える未来社会を一気に体験できる機会というのは、これから展示をつくろうとするメンバーにとって、非常に貴重な機会です。100BANCHからは何組ものクリエイターたちが建築や空間演出、イベントなどで関わっており、合宿を機に先輩プロジェクトたちの活躍をみんなで観れたことも有意義でした。
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」など、いくつかのパビリオンはみんな一緒に見学しましたが、同じものを見ても着目するポイントやとらえ方はさまざま。しかし、それぞれに鋭い視点で考察していて、お互いの感想を語り合うことで体験がさらに深いものになったように思います。
メンバーたちの声では、
ーという感想が共通のものとして多く、ナナナナ祭と万博とは規模は違えども、自分たちの学びを体験にどのように入れ込むか、その後の企画でも考え続けていました。
自分たちのプロジェクトはどこを目指していて、ナナナナ祭を通じてどんなことを来場者に感じてもらいたいのか?何を実証したいのか?準備期間中を通じて、それぞれがこの問いを何度も繰り返し問いかけたと思います。
一方的な発信、紹介ではなく、いかに世界観に引き込み、お客様ご自身の肌感覚でプロジェクトの意図を感じていただくか? 考え抜いてつくりあげて迎えた当日、それぞれのブースで100以上のお客様との対話を創出することができました。誰かと話す対話の一つ一つがプレゼンテーションであり、ディスカッションやヒアリングの機会。3日間のデモデーの中でもどんどんプログラムや言葉が磨かれていくのが印象的でした。
来場者からは「対応してくれる一人一人の目指す未来が聞けて面白かった」「例年より体験として練られたプログラムが多かった」という声もいただきました。人と人が出会い、共通の体験を通して未来を共に思考すること。来場者の存在がプロジェクトを進化させ、お客様にとっても未来に向けた行動のきっかけになるような循環が生まれていたように思います。
当日までの試行錯誤の軌跡は、これまでに発信してきたメンバーそれぞれのメンバーレポートに詳しく書いてあるので、ぜひご覧いただければと思います。
https://100banch.com/magazine/nananana2025/
万博では、GARAGE Program1期生の三谷・野中が手がけたメディアセンターを本人の案内で見学
落合陽一さんのパビリオン「null²」の見学後の感想はみんな違って話が尽きませんでした。
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」では、kinariのオブジェの手触りも味わいました。
7月7日前後に行われるナナナナ祭。七夕の日は晴れないというジンクスがありますが、ここ数年、暑すぎて熱中症が心配だったり、逆に大雨だったりで大規模に屋外でお祭りを実施することは難しいと感じていました。
約30プログラム程度が実施されるナナナナ祭では、ここ数年は渋谷リバーストリートに大きく展開していたのですが、今年はギュッとほぼ全てのプログラムを100BANCH屋内に詰め込みました。代わりに屋外には、ヤグラを建てて、その上で取り組みを紹介していくステージとして展開。
中を見ると、見渡せる範囲にところせましとプロジェクトが並んでいて、それも祭りらしい熱気を生んでいました。肩を並べることにより、お互いのプロジェクトに関する理解や連携も進んでいて、物理的な距離を近づけることが「触発」には有効だということも改めて感じました。
屋外のステージでは、7月12日にナナナナ祭の風物詩とも言える「流しそうめん」を実施。100BANCHにとって、流しそうめんにはちょっと特別な思いがあります。1度目のナナナナ祭では、100BANCHの3階から流しそうめんを流すという壮大な(トンデモ)企画があり、2度目のナナナナ祭では、メンバー持ち寄りのゲリラ企画として、リバーストリートで流しそうめんを振る舞いました。
その後、しばらくはコロナの影響もあって実施できていなかったのですが、大人も子どもも、みんながそうめんをキャッチしようとお箸を持って、流れの上流を見つめている様子や湧き上がる歓声はとても幸せな記憶として残っていて、ずっと忘れられない街の風景でした。6年ぶりの流しそうめん復活は、長く携わっている者にとっては、地域の中での100BANCHを感じる、とても感慨深いプログラムでした。
「ナせばナる、ナさねばナらぬ」ナナナナ祭は、100BANCHのアクセラレーションプログラムにとって重要な成長の機会でもありますが、それと同じくらい、私たちが活動させてもらっている地域の皆さんと一緒に未来を考え、「いつか地域のお祭りにしたい」とつくってきたものでもあります。
8回目のナナナナ祭では、渋谷区様や渋谷区観光協会様に初めて後援いただきました。渋谷ストリームの皆さんにも毎年ご協力をいただいており、今後はさらに地域との連携も深めていけたらと思っています。2025年のナナナナ祭にご尽力いただいた全ての皆さんに心からお礼を申し上げるとともに、これからも共に未来に向けた歩みを進めていけたら幸いです。
そして100BANCHは、これからも「未来の発信地」として社会にインパクトをもたらしていけるよう、今日も明日も実験を続けていきます。ここまで準備してきたメンバー、事務局もお疲れさまでした!もっともっと面白い未来に向けて、これからも頑張りましょう!
渋谷リバーストリートに設置したヤグラ。近所の皆さんにも立ち寄っていただきました。
子どもに大人気の流しそうめん
ようやく復活したこの光景にじーんとしました。