AstroIkebanaの、宇宙×生け花の新しい花展を開催します!
AstroIkebana
AstroIkebanaの、宇宙×生け花の新しい花展を開催します!
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多田 真希子
今回イベントを主催したプロジェクトリーダーでAstroIkebanaの創始者の多田真希子さんは、大学時代に実験系宇宙物理学を専攻したことをきっかけに、宇宙を舞台とした産業・研究・芸術に可能性を感じ。高校時代から始めたいけばなにそのインスピレーションを掛け合わせて、AstroIkebanaを開発しました。
日本で行われている宇宙事業のこと、いけばなのことに皆さんは興味がありますか?
どちらも専門にしている人しか触れられないイメージが強いものですが、実は宇宙の最新技術開発も、500年以上受け継がれる伝統としてのいけばなも身近に感じられる環境になりました。
宇宙芸術として多田真希子さんによって創出された「AstroIkebana」は、宇宙の世界観を、花を生ける行為に落とし込むことで感覚的に学び、宇宙ビジネスの加速に繋げ、科学的発見や産業から日本を豊かにしていく可能性を秘めた試みです。
2019年5月5日に「AstroIkebana Project」主催のイベントが100BANCHのGarageProgramに採択され、初めて開催されました。100BANCHは未来をつくる実験区として、次の100年先の未来をつくっていくような若者と一緒に、実験をしていくプログラムを運営しています。
GARAGE Program詳細|https://100banch.com/garage-program/
宇宙のことをより身近に感じ、宇宙ビジネスを加速すべく立ち上げられた「AstroIkebana」。そもそも宇宙を日常に感じる機会は位置情報程度の私達にも、宇宙で今どんなことが起きているのかをJAXAのエンジニアでもある村木祐介さんが丁寧に説明してくださいました。
JAXAにて国際宇宙ステーションの「きぼう」の開発運用に携わった後、アジア開発銀行に出向し、途上国開発援助での衛星データ利用を推進。
帰国後、JAXAの新規事業の企画立案を担当し、JAXAと民間企業の協業型研究開発プログラム「J-SPARC」を制度設計。現在は文部科学省に派遣され、衛星開発利用・宇宙産業振興に関する政策の企画・調整を担当している。茶道愛好者で宇宙芸術・文化の発展はライフワーク。今回は個人の立場で講演。
現在では様々な活動が行われており、大きく分けて、
などがあります。
側近のですと『下町ロケット』の様なドラマや、漫画『宇宙兄弟』などを通して、宇宙開発も様々なメディアで取り上げられ、宇宙でどんなことが起きているのか目にする機会も増えていると思います。
最近の宇宙に関する主要なニュースとしては、開発の敷居が下がり民間企業がプロジェクトを立ち上げを行い、参画する様になってきています。
有名なところでいうと、電気自動車メーカーのテスラ社を作ったイーロン・マスクが立ち上げたSpaceX社の大型ロケットファルコンヘビーが、従来の1/3程のコストで打ち上げに成功しました。同社はロケットだけではなく、有人宇宙船の打ち上げにも成功しています。まだ人は乗っていないですが、近々人を乗せた実験が計画されています。
宇宙利用の発展が進む一方で、インドが衛星にミサイルをぶつける衛星破壊実験を行い、これにより、衛星がバラバラになって多数の宇宙ゴミが宇宙空間に散ってしまう現象が起きています。この衛星破壊の何が問題かというと人工衛星に発生した宇宙ゴミが秒速8kmといった高速でぶつかってしまうと、当たった衛星がバラバラになってしまい、さらに新たなゴミが発生してしまうのです。
こういった出来事も発生するなか、宇宙のゴミを除去するAstroscaleという日本のベンチャーも現れ、宇宙のゴミ問題というのはこれからさらにホットな話題になっていくと言われています。
来年はオリンピックイヤー2020年ですが、JAXAにも盛り上がる話題が数多くあります。
例えば、今宇宙に打ち上がっているロケットはH-IIAというものですが、打ち上げから20年弱の時が経っており、新しいものを打ち上げる必要が出てきています。
JAXAでは、現在はH3という新型ロケットを開発しています。このロケットははコストを従来の半分にする野心的な目標を掲げ、2020年に初号機の打ち上げの予定です。また、先進光学衛星、先進レーダー衛星の打ち上げが行われます。これらシリーズの衛星は宇宙から地球の写真をとり、例えば東日本大震災が起きた時に写真をとって防災に役立てられています。
ここに掲載されているのは一例ですが、数多くの宇宙の話題が、沢山の人々に夢を与えるとともに、宇宙に関連したビジネスやアートを生み出すきっかけをもたらすでしょう。
また、最近の大きな流れとして、ITやエレクトロニクスなどの技術が進歩し、宇宙機の小型化が進み、以前に比べ格段に低いコストで宇宙開発利用に取り組めるようになったことで、民間企業から個人まで宇宙プロジェクトに参画できる様になったことがあります。
従来のロケットや衛星は、1台で数1000kg、数百億円だったものが、今では数kg、数千万円で作成できるようになっています。
もう一つの流れとして、リスクの高い宇宙開発に出資する投資家がが増えたことがあります。
宇宙開発には失敗がつきもので、中々投資家から出資を得るのが難しかったのですが、主にシリコンバレーなどを中心とした挑戦的資金(リスクマネー)が宇宙分野に投資されるようになりました。
政府も宇宙ビジネスの創出支援策を打つようになり、JAXAが民間企業と手を取り合って共同で研究開発を進めるオープンイノベーションの取組みも活発に行なわれています。
このように、宇宙開発利用の敷居が下がり、宇宙を活用した芸術活動も身近になってきています。宇宙を活用した芸術、宇宙芸術には様々な種類、例えば、
などがあります。
地上で宇宙をイメージし創出された芸術としては、今回の「AstroIkebana」や、月の模擬砂を利用したお茶碗を作った「月焼き」、宇宙茶会、宇宙柄の着物が、既存の衛星データ(衛星写真など)を使って作られた作品や商品としては、ドイツ人の現代写真家 Thomas Ruffの”Cassini”シリーズや、Pokemon GO、衛星降水データを活用したVR『世界一の雨降り体験VR』などがあります。
コストはかかりますが、国際宇宙ステーション/宇宙飛行士にアート活動を行なってもらうというのも可能な時代です。
例えば、宇宙舞踊、宇宙抹茶、宇宙楽器などなど実験の位置づけで芸術活動を行なった例は既にいくつか存在しています。
また、人工衛星を使った芸術・エンタメ活動として、流れ星の「もと」を宇宙で放出して人工流れ星を作る人工衛星や、米国のアーティストが美術館と協力して、鏡のような風船を膨らませることで地上から星のように見ることのできる人工衛星を打ち上げる計画などが進められています。
別途打ち上げの費用がかかりますが、安いものでも数十万〜数千万円のコストで実施することができます。
宇宙芸術は人々にとってどのような意味を持つのでしょうか?
芸術活動は、表現者あるいは物と、鑑賞者が相互に作用し合うことで、人々の価値観や生き方を変え、社会的な新たな価値を創造していく力があるとされています。
こうした芸術活動に宇宙を掛け算した「宇宙芸術」には、次のような考察の機会・視点を人々にもたらす力があると考えています。
まず、宇宙時代にも普遍な「人間らしさ・人間性」に関する考察の機会を与えてくれます。宇宙空間に人々が本格的に進出するとき、何を持っていくかを考えることは、本当に人間として大切なものは何なのか、人間らしさ・人間性とは何かを考えることにつながります。例えば、ゆっくりとした食事の時間は必要なのか?など。
次に、宇宙空間は「地球を俯瞰する」視点を与えてくれます。宇宙空間にたった一つぽつんと浮かぶ地球を見下ろすことで、かけがえのない地球が持続的に維持されるように、国境を超えて環境問題や紛争解決に向き合う必要があることを理解させてくれます。
最後に、宇宙は時間的、空間的に壮大な広がりを持ち、我々に時空間的に広い視点を与えてくれます。壮大な宇宙史、地球史、生命史、人類史の中で、このたかだか50年に生命体が宇宙に進出した意味とは?星・銀河の消滅と人生の対比などです。
アポロ計画で撮影された地球の画像は「史上最も影響のあった環境写真」とも言われており、これまでの宇宙空間での芸術的な活動によって人々が大きな影響を受けてきたことがわかります。宇宙的視点を人々にもたらす 宇宙芸術は、これからの時代に必要な価値観・思想共感をもたらす大きな価値があると考えています。宇宙利用がますます身近になる今こそ、宇宙空間での芸術活動がますます広がることを期待しています。
※この発表は村木さんの個人的見解に基づくものです。
いけばなとは、大自然の縮図というだけではなく、作品の背後に、広い宇宙空間や無限を感じさせ、生命の躍動と今に生きるもの同士の調和を花瓶の上で表すものです。
立花・生花・自由花のうちの自由花を実践していただきます。
いけばなには、様々な型が存在します。
多田さんの習っている池坊という流派における型は、立花(りっか)、生花(しょうか)、自由花(じゆうか)の3種類あると言われています。
立花(りっか)とは、いけばなの起源とされる「立花(たてはな)」をベースに、江戸時代に創造された草木の調和に美を見出す形式。仏前に供える様式としても知られ、型が決められています。
生花(しょうか)とは、草木が懸命に生きる様に美を見出したいけばなで、伝統的な型を持つものと、型を持たないものが存在します。
自由花(じゆうか)は、型は存在せず、床の間を離れて生ける人の想いに委ねられたいけばなのことです。ディスプレイ装花や、なんとなく自宅に飾ってみるいけばながこれに当たります。「AstroIkebana」は宇宙に起こる色々な現象を学び、宇宙を生け花で思い想いに表現する自由花のうちの一つです。
今回は、人類史上初めて宇宙空間の中で観測を可能としたハッブル宇宙望遠鏡により観測された「銀河のバラ」の画像をテーマに、多田さんがiPadを用いながら花生けレクチャーを行い、参加者は見てコツを学び、実践。
枝花葉の中から3種類を選び、参加者は思い想いに生けていく方式のワークショップでした。
銀河のバラは銀河の合体を観測した画像であり、瞬星の様な若者たちが渦巻く集合体としての100BANCHがまさに銀河みたいでぴったりの場所だと思い決めたそうです。
実際に生けてみると、思ったよりも「銀河のバラ」の星々の渦巻く姿を枝葉で捉えるのは難しく、他のテーブルを回って、自分の思い描く花を探しに行ったり、隣の人と相談しながら生けたりと子供から大人まで、年齢を問わず、和気藹々とした空気でした。
いけばなは女性がお稽古事として行うイメージが強いのですが、会場の6割ほどが男性で、真剣に花と対峙している姿が見受けられました。
ワークショップの最後には、最新プロジェクトのお披露目が行われました。AstroIkebanaをより直感的に訴えられたらいいなと思い、ARを開発してみたそうです。いけばなの間合いに想像の余地があると言われています。
多田さんの思う花の周りにある環境が、ARというデバイスの中に存在するある種の特殊空間の中に現れていました。
お稽古事としての華道でなく、宇宙を想像し、自己と花との対話、芸術を通して人々を楽しませ、癒す、そんな新しい芸術がそこにはありました。
100BANCHという常識に囚われない枠と、多田さん率いるAstroIkebanaProjectメンバーの溌剌とした若いエネルギーがピタリと一致したイベントだったように感じました。
参加者からは、村木さんの宇宙開発・宇宙芸術の解説と、多田さんのいけばなワークショップが好評だった様子。研究者でなくては届かないと思われていた宇宙開発の世界がグッと身近に、お堅いイメージの強いいけばなの魅力をワクワクする仕組みで直感的に体感することができるイベントになっていました。
これから宇宙事業へ取り組もうと考える若い世代へのアプローチと、宇宙を利用した芸術への取り組み、AstroIkebana Projectチームのジャンルを超えた活動が、人々を巻き込みを宇宙への関心を大きく後押しする企画だと言えそうです。
「自分は宇宙事業とは関係がないのですが面白そうなことをやっているな、と思って多田さんに惹かれてやってきました。元々ワークショップのデザインやシステムデザインに興味があって、参加を決めました。」(20代後半 女性)
「100BANCHのホームページGARAGE Programに申し込もうと思っていて、自分のやりたいことに近いことをやている「AstroIkebana」を見て参加を決めました。大学は宇宙は専門で行なっていたけれど、どうやって芸術に落とし込むのか気になりました。実際に花を手に取って、やってみると腑に落ちました。」(20代前半 男性)
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今回のイベントを主催した、AstroIkebanaは100BANCHが主催する3ヶ月のアクセラレーションプログラムGARAGE Programの採択プロジェクトです。
GARAGE Programでは3ヶ月間に及んであなたの実験プロジェクトをサポートいたします。
具体的には
あなたのプロジェクトが採択されれば以上のサポートを「無料」で受けることが可能です。
「試したいアイデアはあるんだけど、どうすれば良いのか分からなくて…」「普段は会社勤めをしているけれど、なにか面白いことをやってみたい」「今行っている活動を、ブラッシュアップさせていきたい」
そんな方はぜひ、まずはGARAGE Program報告会の様子を見に来てください。
同年代の人たちが、様々な実験に取り組んでいます。実験を楽しむ仲間の姿を見ることは、きっと新しい刺激となるでしょう。