- イベントレポート
發明の貯蔵庫<INVENTORY>における顕教と密教ー科学を文化の次元で捉える──ナナナナ祭2024を終えて
2024年の100BANCH、最大のハレの場となったのは、7月7日から14日の8日間にわたって開催したナナナナ祭。今年は27プロジェクトが関わって33のプログラムを展開し、4000人を超える来場者でにぎわいました。2024年の年末に1年を振り返るべく、ナナナナ祭2024のダイジェストムービーを公開。ナナナナ祭の企画段階から本番までの軌跡を「えんぎ」の観点から振り返ります。
2024年7月7日に7周年を迎えた100BANCH。「7」という数字をキーナンバーとして大切にしてきた100BANCHにとって、「7・7・7」が揃うトリプルセブンのナナナナ祭はどこか特別な気がしていて、企画前からなんだかソワソワしていました。この数字の並びに連想するものといえば、「スロットマシンの777」「ラッキー」「なんとなく、うれしい」などいろんな声がありましたが、どれも総じて縁起が良い!
こんなふうに「なんだか縁起がいいね」なんて時に「縁起」という言葉を使いがちですが、そもそもは「縁よりて起こる」という仏教の教えから来ています。100BANCHには設立当初から、「出会ったらもう元の自分には戻れない」という言葉がありますが、その言葉の通り、100BANCHで出会ったさまざまな人やチャンスなど、他との関係が縁となって進化を遂げたというエピソードは数え上げたらキリがなく、まさに100BANCHは「縁起の場所」。また、100BANCHを「えんぎ」の場所と捉えると、100BANCHの場を成してきた活動要素には、「援技」「宴儀」「縁儀」「演技」「円議」など、さまざまな「えんぎ」が詰まっていることも浮かび上がってきました。
お祭りを通じてさらなる「縁起」につながるよう、7回目のナナナナ祭のテーマは「とにかくえんぎがいい祭り」に決定!そこから、いろいろな角度で発想を広げていきました。
百年短冊鳥居に自分の願いをしたためた短冊をくくりつける来場者たち
ナナナナ祭メインビジュアルの懸垂幕
100BANCH最大のハレの場であるナナナナ祭は、アクセラレーションプログラムの「DEMO DAY(成果発表会)」としての位置付けでもあり、メンバー自らが企画し工夫を凝らしたプログラムを実施する「文化祭」でもあります。
メンバーたちにとっては、自らの信じる未来について、来場者に伝えられる絶好の機会。それぞれのプログラムが結集したナナナナ祭をどんなお祭りにしていくか、今年は2月に実施した和歌山への植林ツアーの際にメンバーたちと話し合いました。ディスカッションのテーマは「あなたと100BANCHの縁起」「7周年のナナナナ祭、こんなことが起きたら縁起がいい」「100BANCHにとって、起きたらウルトララッキーな出来事」「できたら楽しそうな宴儀」の4つ。
2018年入居から2023年入居まで、活動時期は違えども、それぞれに100BANCHで得たきっかけが現在につながっている。たくさんの点が線として見えてくるような対話の時間でした。印象的だったのは「縁起というと他人の力をあてにしているように聞こえるけど、実際に100BANCHに集まる人たちは自ら縁をつかみに行く。奇跡を起こしに行く人が多い」という言葉。いつも貪欲にチャンスをつかみに行き、決して同じ場所にとどまることをしない。縁とはどんなところに繋がるのか?そのヒントをもらえた気がします。
木や森の一生の時間軸に想いを馳せ、100年先を考える
植林ツアーで実施したアイディエーションの様子
ナナナナ祭のようなハレの場は、日常のリズムを崩し、普段では出会えないような触発を期待するものですが、ナナナナ祭に向けた過程の中で最も大きな「変態」を遂げる機会がブラッシュアップ合宿です。今年は5月17〜19日の3日間、ナナナナ祭に出展するプロジェクトリーダーら総勢25人で大阪に出向きました。今回の行き先は、合宿では定番になっている松下幸之助ミュージアムとパナソニック本社をはじめ、カオスでディープな味園ビル、爆発的エネルギーを放つ太陽の塔、多様な文化に触れられる民族学博物館など。一見、何の脈絡もなさそうな訪問先なのですが、どれも100BANCHの構想や運営のインスピレーションになっている場所。今回、メンバーと共に訪れることで、100BANCHの今につながるさまざまな「縁」を一緒に感じたいと企画したものです。
日頃はプロジェクト単位で活動することが多く、いろんなプロジェクトのメンバーが一緒になって何かをする機会はほとんどありません。そんなメンバーたちが寝食を共にする貴重な機会の設計で大切にしているのが、「決めすぎないこと」「無目的の時間をつくる」の2つ。いつもは自分たちの目標に向かって全力で走っているメンバーたちだからこそ、ふと出くわした余白の中で何が生まれてくるのか。即興的に生まれる創発はとても面白い。
「ご飯をつくって食べる」ということしか決まっていない中で、それぞれがそこにあるもので試行錯誤しながら料理をしたり、くじ引きで決めたチームで味園ビルに潜入したり……。合宿のときだからこそできる深い話やそこでのインスピレーションは、メンバーそれぞれの中に深く刻まれているようで、「合宿こそが100BANCHを凝集した体験」「合宿でみんなと話して、自分ももっとプロジェクトにコミットしようと思った」という声も。合宿が自らのターニングポイントだったというメンバーも多く、もはや合宿は、100BANCHを語る上で欠かせない支援プログラム=援技となっています。
太陽の塔からパワーをもらう
ディープでカオスな味園ビルに潜入
ナナナナ祭2024のクライマックスは、ラスト3日間に実施された「縁日」。渋谷リバーストリートを中心に25のブース展示・体験展示が立ち並びました。プロジェクトごとに趣向を凝らしたプログラムが繰り広げられる中で、お祭りムードを盛り上げたのが「《蛸みこし》」「獅子舞」という2体の生き物たち。
足の一本一本に独立した知性がある「蛸」をモチーフに製作したふにゃふにゃの《蛸みこし》を8人で担ぐという体験では、8人が1本ずつの足になり、ほかの足の動きを感じながら、みんなで一体の蛸になりきっていきます。ナナナナ祭では2回目の出現となった「100BANCHのシシ」は、今年はその胴幕に100BANCHメンバーの活動を記録した100のSNS投稿をプリントし、よりコミュニティを表すシシへと進化。長い胴幕に道ゆく人たちにも入ってもらい、「100BANCHの獅子舞」として一緒に街を練り歩きました。
この「一緒に何かになりきる=演技する」という営みを通じて、知らない人同士が息を合わせて非日常の時間を共有できる。ナナナナ祭という情報の渦の中において、何も語らずとも来場者に一体感をもたらしてくれる獅子舞や《蛸みこし》は、今後のナナナナ祭においても重要な役割を果たしてくれるに違いありません。
来場者の頭を噛む100BANCHの獅子舞
力を合わせて屋外設営
目が見えても見えなくても楽しめるゲームに没頭
「7周年のナナナナ祭、こんなことが起きたらうれしい!」という声でもっとも多かったのが、「歴代メンバー大集合」という企画。100BANCHの縁起を最も感じるのは、メンバー同士のつながりということかもしれません。
7月7日の7周年の記念日に「100BANCHのえんぎ」というイベントとして実現したこの会には、開設当初に入居した1期生から最新の84期生まで、50を超えるプロジェクトのメンバーたちが参加しました。オープニングのクロストークには、100BANCH出身プロジェクトの中でも、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している株式会社へラルボニーの代表、松田 崇弥・文登の兄弟が登壇。まだへラルボニーを創業する前、「MUKU」というプロジェクト名でGARAGE Program7期生として入居した頃から、さまざまな縁をたぐり寄せながらチャンスをつかみ、進化してきたエピソードを2人で掛け合いながら話してくれました。
後輩プロジェクトにとって、へラルボニーは目標とも言える存在。そんなプロジェクトにも、今の自分たちと同じように悩んだり、迷ったり、いろんな実験を繰り返していた時期があったということに、続くメンバーたちも大いに勇気づけられるとともに、「いつかは自分も!」という思いを強くしたに違いありません。
これだけ大きくなったへラルボニーですが、今でも100BANCHで共に切磋琢磨したプロジェクトとのコラボレーションは続いています。縁起から生起していく未来は、プロジェクトの数がさらに増え、それぞれの活躍の幅が広がった時、今よりさらに力強く、確かなものになっていくのでしょう。自らが願う未来が現実のものとなるように、日々の実験を楽しみ、前に進むことで、これからもたくさんの運と縁を引き寄せていってほしい。そして100BANCHも、未来が生起する縁起の場所として、これからもたくさんの物語を紡いでいきたいと思います。
ヘラルボニーが手掛けたメインビジュアル
終了後の打ち上げで熱いハグを交わす
ヘラルボニーの松田兄弟も登壇