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展覧会『砂の旅券 Emptiness passport in a handful of sand』

2019年5月25〜26日、『砂の旅券 Emptiness passport in a handful of sand』という展覧会を開催しました。当日の様子や今回の作品について、作者である私、井手尾雪が書いていきます。

本展では、会場に1トンの砂を敷き、そこへ訪れた人の一握りの砂をおさめた「砂の旅券(パスポート)」を発券しました。

  

それぞれの小瓶には、シリアルナンバーが振られます。その番号は、流出した砂の総重量になっています。

 

小瓶に一握りの砂を入れてもらう以外には、特にやるべきことはありません。

そんな中で、砂と戯れたり、座って喋ったり、寝転んだり、様々な過ごし方が見受けられ、砂の上で展開される景色は、訪れる人々によって変化していきました。

 

また今回は、展覧会内イベントとして、砂の上で食事を振る舞う「砂の料理店」と、砂の上で映画を観る「砂の映画館」を行いました。

 

 砂の料理店では、事前に予約をして来た方々と、「砂上の食卓」と称した一夜限りの特別な食事を共にしました。

 

砂の映画館では、約100年前の映画を砂の上のスクリーンに上映しました。

 

 

今回の制作では、「どのように一握りの砂と出会うのか」について向き合ってきました。その問いに至るきっかけには、たしかな実感というものへの意識があります。

それは、自分が立っている地続き上に、たしかに存在していると感じられるもの。そんな「地続き上の実感」が、次第に私が砂を敷く意味の一つとなっていきました。

 

一つの出来事に対して、あらゆる人々が様々な脚色を施し発信できる時代だからこそ、時折、自分が触れている質感を帯びた事実そのものに、妙に安心してしまう時があります。

 

事実の周りには、人それぞれの意味や解釈が映し出されます。つまり、実感を伴った事柄をつくりだすことは、その周りの余白を生み出すことにも繋がります。

砂は、そのような空白の器にもなりうるのです。

 

 

私は普段、四畳半の部屋に砂を200キロ敷いた「砂の部屋」にいます。その砂は、今回敷いた1トンの中にも含まれています。そして、展示の後に、その砂の一部が再び四畳半の部屋に帰ってきました。

 

今でも私は、あの砂の上にいます。これからも砂を敷き、あらゆるかたちで砂の流出を行なっていくのです。

そして、流れる砂の重さを増すごとに、その地続き上の実感は、たしかなものとなっていくのです。この文章を読んでくださっている方とも、その砂の行く先のどこかで交われればと願っています。

 

砂の部屋

https://www.sand-room.com/

 

文・井手尾雪

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