- 100BANCHストーリー
100BANCHが大切にしたい 未来をつくる実験・6テーマ【前編】 〜SIX THEMES FOR EXPLORATION〜
これまで紹介した「温故創新」「食の原点と未来」「温かくて柔らかいテクノロジー」は、100BNACHで新しいコトやモノを生み出すための実験テーマだ。
このテーマが実験できる土壌として、「Diversity & Inclution」「サスティナブル・ソサエティ」「人生100年時代の働き方・生き方」という3つのテーマも大切にしたい。
直訳すれば多様性と包摂。この包摂が、どんな時代も、なかなかどうして難しい。LGBTのALLYに取り組むCHANGE 92% – TEAM ALLY Projectのリーダーが、あるゲイカップルの話を教えてくれた。カップルは、ある日、自治体に婚姻届を提出す。いわゆる同性愛者向けのパートナーシップ証明書でなく、婚姻届だったから受理されなかったという。それでもカップルは分かっていて、あえて婚姻届を選んだ。二人は「将来、世の中が同性婚を正式に認めるようになった時、婚姻届を出したこの日を振り返って、二人の結婚の日としたい。」と言って意思表明したそうだ。この逸話は、パートナーシップ証明書が、ダイバシティ時代の一つの解でなく、当事者にとっては、その先にまだ時間を要して解決しなければならない課題が残っているという気づきを与えてくれると共に、いまでもポジティブな解決策を創出できることを教えてくれる。
もし、あなたがこの婚姻届を拒否した自治体の首長や担当課長だったら、この行動を受けて、どのような次のアクションを考えられるだろう。ここで大事なのは、双方からの視点、保守と革新の衝突、そして双方向のイノベーションだ。
「多様性」という言葉をよく聞く時代にあって今なお、異なる立場、世代、性別、理念や価値観の異なる個人が、それぞの思考や思想を理解しあって認め、共通言語をみつけて対話したり、共創したりする社会というのは容易なことでない。容易でないからこそDivesityは、Inclutionとセットにある。点と点が相互に交信して繋がり、さらに別の点とも相互接続する「連環」と「包摂」が重要であって、多くの個性的な点が散在していても、どれとも相互接続してない状態は、全体は仮死状態と変わりない。
異なる神経、細胞や臓器同士が互いに信号を送りあって、一つの身体が動いているように、個々人が異なる情報(価値観)を相互に送り受信し何らかの応答をしつづけることで社会が前進できる。
「ちがいをちからに変える街」をコンセプトにする渋谷区に構える100BANCHでは、個々のアクションについて、できる限り別の異なるアクションを接続する実験を繰り返していきたい。最初は互いが異質で理解しがたく、ときに不快にさえ感じること(人)でさえ、相互に何か情報交換を繰り返すことで、前進できることがあるはずだ。
「持続可能」と「現状維持」は意味合いが違う。ひとりの人体が日々、水と栄養の吸収と新陳代謝によって、数週間前の自分とは科学的には全くの別人であるように、都市も田舎も、社会も会社も健全な新陳代謝と成長、そして次世代への継承が必要だ。インプットとアウトプットによってサスティナブルな状態=物心ともに豊かに、心身ともに心地よく生活し続けられる状態であれる。Garageプログラムは毎月、数組のプロジェクトの卒業と新入があって、このサスティナブル・ソサエティを正に実感している。
Now Aquaponics!は、循環型の都市農法をテクノロジーを交えて実現する仕組を開発するプロジェクトだ。大都市で乖離してしまった人間生活と農作の関係をテクノロジーによって、極めて自然なフロー(=地球と同じ構造)にしようとしている。
GoSWABは、都市の空気中の微生物をバイオ分析して、都市環境の変化を見える化しようというプロジェクト。例えば、外国人旅行客が増えるオリンピック前後で、東京の微生物環境がどう変化するかを探求する(日本人と外国人が所有する体内の微生物が異なる為、環境変化はあると言われている)。微生物の変化の影響で東京は、都市の風景や生活文化までも変化するだろうか。もし、その変化自体を予めシミュレーションしたり手を加えたりすることができたら、人為的にデザインされた対象物をバイオテクノロジーによって微調整し、地球環境に最適化された都市開発といったデザイン行為が新たにできるかもしれない。
一見、何の役に立っているか、価値があるのかわからないものが、全体にとって物凄く重要な役割を担っているというものは自然界にも人間社会にもある。私たちが、その分からない物のどこに焦点をあてるか次第で、社会の持続可能性を高められるか否かという時代になってきた。それは渋谷の屋上利用の新発想や、中古バスと住まいの新結合によるライフスタイルの新提案かもしれないし、新機軸をもった河川敷や公道での社会実験かもしれない。100BANCHでは、「新陳代謝のある」仮説・実験・検証の繰り返し、インプットとアウトプットの繰り返しを受け入れてサスティナブル・ソサエティに取り組む。
近い将来、人間の健康寿命は平均100歳になるという。だから、これまでの働き方の概念のままでいられないと、人生100年時代の生き方の議論まで発展している。大事なのは、複業、ワークライフバランスなど個人のマインドセットや働き方がどう変わるかという議論よりも、皆が100歳まで生きている事態、例えば80代と20代のプログラマーが協働するという経済活動やコミュニティ形成がどうなったら良いかというフィロソフィーの話だと個人的には思う。
オープンして間もなく100BANCHで開かれた、伊藤穣一(Joi)さんのトークイベントで、シンギュラリティを迎えて、残りあと人間がする行動は「子育てと哲学のふたつくらい」とJoiさんは言っていた。いま私たちが苦戦しているような経済活動は人工知能や機械が処理してくれるなら、次世代への行為と、私たちがどう生きるかという哲学の議論だという話にとても共感する。
一昨年、息子が生まれて以来、自分の為にやる目先の事よりも息子が幸せに生きる未来への行為の方がもっと大事と思えるようになった。この人生100年時代の議論と掛け合わせると、さらには自分は、100歳になったとき曽孫や玄孫と一緒に生きているかもしれない。曽孫や玄孫やコミュニティから生きて直接「幸せです。ありがとう。」と言ってもらえるような日から逆算して、いま自分は何を考え、成すべきだろうか。そしてどんな実験、トライ&エラーをすべきだろうか。
以上、いま100BANCHが大切にしたい6つのテーマ、温故創新のコトづくり、モノづくり、食の原点と未来、温かくて柔らかいテクノロジー、サスティナブル・ソサエティ、人生100年時代の働き方・生き方を紹介した。これらのテーマを重点に、幸せな未来に生きる人たちが過去に振り返って「ありがとう」と言ってくれるような千里眼的仮説をもった、それでいて「いまどき」で粋な実験的活動を100BANCHは集めて(BUNCHして)いきたい。