• イベントレポート

アカバネクジラの声——DESIGNART TOKYO2024を終えて

街をフィールドに様々な音を、何らかの生命体をモチーフに可視化する制作チーム「Cyber Chrysalis」。DESIGNART TOKYOではオリジナル1作品「赤羽鯨の詩」を展示しました。
作品紹介と当日の様子を、Cyber Chrysalisの佐野(GARAGE Program 72期生)がお伝えします。

作品概要

東京都北区に位置する、集合団地:赤羽台をモチーフとしての「鯨」に例えて、赤羽周辺のフィールドレコーディングを行い、場所性が生み出した赤羽の特徴値に相当する音を拾い集めました。赤羽に木霊する生活音や一番街の賑わい、走り去る電車の音、荒川周辺の草木の音。それらの集合が、「赤羽鯨」が生み出す「声」であると定義し、私たちはこの「赤羽鯨の声」に耳を傾けたいと考えています。

 

コンセプト

かつてマンモス団地として知られた赤羽台。そこには多様な人々の暮らしが息づいていた。時は流れ、古きものは新しきものへと姿を変えながらも、赤羽の魂は脈々と受け継がれている。多様な人々の声が響き、絶えず変化する街。その姿は鯨に重なり、圧倒的な力と自由の象徴となる。古き良き昭和の風情と現代の息吹が交差し、複雑で美しい調べを奏でる赤羽。それは都市の海を悠然と泳ぐ赤羽鯨の詩となる。

 

スケッチブックが生む鯨の輪

今回、展示にあたって作品を鑑賞いただくだけではなく、実際に感想が書き込めるスケッチブックを用意し、リアクションの可視化を試みました。そこには、こちらが意図したわけではありませんでしたが、来場者の皆さんが沢山の鯨のイラストを綴ってくださり、鑑賞者間で新しいコミュニケーションが生まれることを学びました。結果、スケッチブックは沢山の鯨やそれに纏わるコメントで溢れ、素敵な画になり1工夫で鑑賞者との交流が生まれることに気づきました。

 

来場者からの声

多くの方が立ち止まってじっくりと赤羽鯨が都市を泳ぐ様子を観察してくださり、「どうして鯨がこのような形をしているのか」「なぜこの活動を始めたのか」など、活動自体に興味を持ってくださる方も多くいました。

中には、「佐渡島が出身地でトキが絶滅危惧種だからそれらのモチーフを活用して作品を制作してほしい」
「鯨のデザインをカスタマイズできるようにしてほしい」
と新しいアイデアに関する声も多くいただき、本作品をより鋭利に深めていくための提案に沢山の気づきを得ることができました。

また今回は録画映像のみでただ鯨の浮遊を“鑑賞する”に留まったため、操作可能な何かを備え付けて街の音や鯨の動きを制御した仕組みを制作し、より一層楽しみがいのある作品にしたいと考えています。

今後も引き続き、“多様な生命体と土地のコンテキストを掛け合わせた作品の実装”をテーマに、作品の深化に励んでいきます。

ご来場いただいた皆さん、ありがとうございました!

 

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