EVENT REPORT

2018.04.06 Fri

映画のこれから 百年先に向けて
ORQUESTプロジェクト
〜映画の在り方を考える〜

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映画が誕生してから123 年。
取り巻く環境も大きく変化している中、映画はどこに向かっていくのか———。

100BANCHプロジェクトメンバーである株式会社ポルトレ代表取締役石原氏の企画により、様々な立場から映画業界の活況を支えてきたプロフェッショナルをゲストに迎え、これからの映画について考えるイベントが開催されました。

 

第一部では、映画を軸とした各界の一翼を担うゲスト4名を招き、設問を通して現在までの映画の進化をひもときながら、映画の未来を見つめました。

「『人には人の乳酸菌』と同じく、『人には人の映画観(館)』がある。映画は人の価値観が現れる人生観のようなもの。」(石原氏)

 

▼今回のイベント開催に向けての意気込みインタビュー

新しい視点で「映画」と出会う。それは、新しい自分を知ること。

山上ドキュメンタリーを入れると70本以上の作品を製作してきて、映画を作ることについてはそれなりにやれてきたと思ってはいますが、これからは作った映画をどのようにせていくのか、ということに集中したいと思っています。現在は著作権の有効期間を延長しようとする動きがありますが、私はむしろ私たちが製作するようなドキュメンタリー映画などの場合は、著作権をフリーにしてしまった方が良いかもしれないと思っています。金銭的な保証は確かに重要かもしれませんが、著作権による制約がかえって新しい作品製作のイマジネーションを縛ってしまう可能性があるのではないか。加えて、マスターテープの規格など、メーカーの言うがままに何度もマスターを作り変えなければならない等、経済との対立関係も根深いと感じますね。

「どこかで誰かが観られる状態であれば、作品の命が繋がれる。」(山上氏)

 

北條「とにかく映画の数が増えすぎて大変、ということだけです。増えた要因としてはデジタル化で制作コストが激減したこと。昔はフィルムで撮影していたのが、今はiPhoneとパソコンがあれば手軽に映画が作れる。もう一つは、今はカフェなどで映画を上映することも可能で、映画館を離れて上映することも可能になってきたということ。また、配信など観られ方も多様になっている。30年前の映画と今の映画との接し方は全く違う。それだけ難しさがでてきたのではないでしょうか。」

「3つの要素が満たされれば映画館になる。まず窓を覆って真っ暗にできる。スクリーンがある。スクリーンを観る人が集まれる。つまり、この会場も映画館にできる。」(北條氏)

 

関口「山上さんが言ったように、かつて作った映画をどう見せていくかという取り組みは非常に重要です。現状、鑑賞する側にとっては、古いアーカイブになっている作品に接するのは映画のコアなファンだけ、といったハードルは確かにありますよね。どうにかして改善していきたいところです。

私自身が映画に対して最近残念に思うのは、広告に興味を制限されてしまうこと。仕事柄、高校生向けの映画を調べたりすると、検索機能のところにラブロマンスの広告がたくさん表示されてしまう。その度に、本当の興味はそこにはないのに、と思ってしまいます。」

 

梅津「今回、『映画』をテーマにすると言ったときに、シネマかムービーのどちらを指しているのか分からなかったのですが、メディアとしての映画と、コンテンツとして流通している映画は全く違うものです。議論の生産性には大事な視点だと思います。

広告のおすすめ機能の話に関連しますが、映画を語る上でテクノロジーの話は欠かせません。電話が5000万人に浸透するまでに70年もの歳月がかかりましたが、Facebookはたったの3年でした。技術によって伝達速度自体は劇的に変わっているものの、一方でプッシュ機能のように本質的な情報とうまく噛み合っていない部分もまだあります。これからは発見そのものを演出するまでに発展するまでになっていくのではないか、と楽しみにしています。」

「コミュニケーションの技術が発展している今、それぞれの映画にとって、その映画が刺さる『オンリーワン』となる人を的確に見つけ出すテクノロジーが生み出されることを期待している。」(梅津)

 

山上技術的な問題ですが、作品をフィルムで上映していた時代は、映写機での上映で、間欠的に光源を切ってスクリーンに写していました。映画館で1時間の映画を観るとき、30分間は何も写っていないスクリーンと向き合っていることになるのです。それが人間に対してどんな影響を与えるのか、家でビデオで観るのと果たして同じ映画を見ていると言えるのか、検証もしないままで、進歩と呼んでいいのか。甚だ疑問に感じますね。

——続いては、あなたと映画の関係性について教えてください。(今井)

 

北條「映画作品を媒体として、それを取り巻く関係者とのコミュニケーションを通して成り立っている世界であると思っています。私は配給を受ける立場なので、配給会社の考え方や想いをどう受け止めるか、咀嚼するか、気持ちをどう通じさせていくかを常に考えて仕事をしていますね。また、上映する映画を選ぶのも一つの表現であり、映画館が社会的・経済的に負わなければならない責任であるということも忘れません。」

「一旦スクリーンで上映されてしまえば、プロもアマも関係なく等しく扱われる。映画館の『公平性』は非常に面白い。」(北條)

 

山上人々と映画との関係性で言えば、映画館は100年後も空間として残り続けるだろうと信じています。映画館の暗闇は特別なもので、人知れず涙したり、こっそり隣の恋人と手を握ったり、個人が個人として守られる空間であると同時に、知らない者同士で同じ映画を見るという一体感もある。ぼくは、映画館はある種の『アジール』だと思っています。

関口「異なる国や時代の映画を繋ぐことが私と映画との関係です。非常に印象的なことだったのですが、今年のキネマ旬報の読者が選ぶベストテン第一位は、『あゝ、荒野』でした。2週間限定公開で、前半だけで2時間半以上もあるのに一位になるというのは、類を見ない例です。タイムラグがなく、配信を通して観られた作品であったという特徴が功を奏したのでしょう。今回、配信がメインとなる作品を支持するファンが現れたというのはエポックと言って良いのではないでしょうか。読者投票で興行的な観点では説明できない作品がランクインするのは珍しいですね。」

梅津「映画館来場者の推移をみると、若者が映画館に戻ってきていることが分かります。スマートフォンで自分の画面を携帯している今、大勢で同じものをみる、という体験が現代の若者にとっては珍しく、希少価値が高まっているのではないか。」

 

——この要素が入っている映画が好きだ!というものはありますか?(今井)

 

北條「歴史認識がきちんと出ている作品ですね。3年ほど前に『サウルの息子』という、収容所の若者を主人公とした映画があるのですが、監督は戦後生まれであるにも関わらず、ヨーロッパ全体が共有しようとしている問題を映画で的確に表現しているんですよね。同じく戦争体験がない塚本晋也監督が映画化した『野火』は、8月15日で終わるのではなく、その後主人公が戦争中の傷をもちながらどう生きていくか、を描くことによって、日本人像を表そうとしていることが見て取れます。時代を経ることに、歴史の描き方が進化していると感じています。」

山上ナチスを題材にする映画は多いかもしれませんが、しかし、例えば現在のイスラエルとパレスチナの問題を置き去りにすることはできないと思います。常に複眼的にみていくことが重要です。今世界中で、他者に対する寛容さがなくなってきていることを危惧しています。映画の想像力の中で、多様性を提示していくことをこれからも大切にしていきたいですね。大きく時代が変わっていく中で、歴史を正しさだけで語るのではなく、検証しながら、歴史は自分で選んでいかなければならないものだと思います

第二部では、数々の話題作を手がけてきた脚本家の相沢友子氏をメインゲストに迎え、普段は知ることのできない、映画・ドラマ制作の裏側に迫ります。

 

——もともと一人で活動されていたかと思いますが、チームメンバーとして働くのは心地良いと感じますか。(参加者)

相沢「若いころは『全て自分でやらなければいけない』と窮屈に思い込んでいましたが、今では苦手なことは人を信頼して任せるというチームプレイが性に合っていると感じます。また、予想通りの成り行きにならないシチュエーションを楽しんだり、新しい自分を発見できるのは、他人とコラボレーションすることの醍醐味で非常に面白いですね。」

———新しいアイデアを生み出すために実践していることはありますか。(石原)

相沢「いつもアイデアは喋りながら口に出すことで整理していきます。私の打ち合わせは長いとよく言われるのですが、人と話す中で、必ず気づきがあります。仕事に行き詰まったときも、人と会って話してリフレッシュしますね。」

———伝えたい想いがあって小説を執筆しているのですが、行き詰まっています。(参加者)

相沢「まず先に伝えたいテーマが決まっているのは良いことだと思います。私も最初の企画会議は必ず長い時間をかけるようにして、何を伝えるのかを十分に話し合って決めます。次は自分の伝えたいことを伝えるために、どのようなステップを踏んでいけば良いのかを逆算してエピソードを構築してみてはいかがでしょうか。」

参加者も設問に対する思い思いの解答を壁に貼り、お互いの主張を読んで「映画のこれから」を考えました。

Q1.今、映画に対してあなたが思っていることは?

「配信が主流となって来ている事のメリット。海外に住んでいる友人に配信を通して観てもらえる。どこにいても 観られる環境は素晴らしい。」、「(チケットが)高い。」など。

Q2.あなたと映画の関係性は?

「映画を共通言語とした街づくり」、「自分との対話」など。

Q3. この要素が入っている映画が好きだ!どの要素?

「セル画で作られた映画(デジタル制作ではないアニメ)」、「女性がきちんと描かれている」、「自分の知らない世界を見せてくれる映画」など。

イベント終了後も、参加者の方々から多くの感想やご意見をいただきました。その一部をご紹介します。

・映画の抱える構造的な問題、人にどう伝えるか、というところを伺うことができて面白かった。
・いろんな形の映画への愛を感じて、刺激を受けた。
・映画について考えるのはこんなに楽しいのだと初めて知った。
・映画に対する思いが人それぞれ違うけれど、向かっている方向が何か似ていると感じたのが嬉しかった。
・映画というメディアについて私は「経験を立体に落とし込んで、感覚を拡散する媒体」だと思った。
・映画の在り方が、人への問題に通じる話が聞けたのが良かった。
・進化していく中でも残していかなきゃいけないものがある。奥深い映画の魅力を少し知ることができた。

最後に、企画を担当した石原からのメッセージをお届けします。

 

今回のイベントを終えてより強く感じたことは、『百年先の映画のあり方』を見つめる時に、何が一番大切なのかというと、それは映画そのものではなく、映画以外のものに深く目を向ける行為ではないか、ということでした。その上で、映画にしかできないことは何か?を各々が考え、実行していかなければと思います。もちろん『映画以外のもの』と一括りに言っても、幅広いです。何に着目するか。私自身は『人の生活、働くこと、経済』このようなキーワードに着目していきます。

百年先の映画のあり方を考える時に、今後意識していきたい視点が2つあります。一つ目は、映画の敷居を下げる、という視点です。ネガティブな意味ではなく、もっと拓けたものにしようということです。敷居が高いと特に若い世代が関わってくれません。二つ目は、映画とプラスαで何を組み合わせていくか、という視点です。まだ人が気づいていない場所や物事の中に、映画を取り入れ、伝導していく姿勢です。あらゆるものがリンクし合う世の中ですので、映画が人を繋げていく可能性はまだまだ開拓の余地があると思います。

映画というメディアは、現代社会の中で、新しい価値を生み出しづらくなってきていると思います。それはテクノロジーが発達した時代において、コンテンツというソフトの宿命かもしれません。それでも映画の素晴らしさは、人と人とを繋げたり、感動を共有できる所にあり、その魅力はこれからも決して色褪せることはないと思います。

映画が誕生して123年。20世紀に大きな進化を遂げて最大化した映画というメディアは、21世紀も18年目が過ぎた今、生まれ変わろうとしている。そんな過渡期の只中で、映画と向き合うことができることに、恵まれているなと感じています。これからも敏感に映画を感じ、映画を通して人と関わり、社会と関わり続けていきたいと思います。」

今回のイベント概要や、登壇者プロフィールなどはこちらから。

WRITER

100BANCH編集部

芦沢 恵利香

大手IT企業でデジタルアーカイブソリューション展開を経験後、動画メディアベンチャーにてコンテンツ企画を担当。人々の日常に焦点を当て執筆活動も行う。学生時代はフィンランド留学ブログ「Run the World」を運営。横須賀市出身。

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