100BANCH STORY

2017.07.06 Thu

100BANCHのキーマン3人に聞く、
「これからの100年」へのビジョン。
カフェ・カンパニー 楠本修二郎

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カフェ・カンパニーは2017年秋、100BANCHの 1F「KITCHEN」に新たな食文化を提供するカフェを開業予定。

「場所」と「食」という、人間にとって根源的な要素を見つめてきた楠本さんの眼に映る、あるべき100年後の姿とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

日本を代表するエレクトロニクス・カンパニーのパナソニック、先進的なカフェ/ライフスタイルを提供するカフェ・カンパニー、オープンコラボレーションを推進するクリエイティブエージェンシーのロフトワーク。

これからの100年をつくる実験区「100BANCH」プロジェクトは、パナソニックの100周年を期に、3社による共同プロジェクトとしてスタートしました。 

業界も歴史もカルチャーも違うこの3社の歩みが、なぜこの渋谷という地で交わり、そしてどのように次へと進んでいくのか。それを占うため、100BANCH編集部は、3社の代表者にインタビューを試みました。

第2回は、2000年代をカフェをキーワードに店舗企画や空間デザインを通じて「次の時代のライフスタイル」を提案してきた、カフェ・カンパニー代表の楠本修二郎さんにお話をお伺いします。カフェ・カンパニーは2017年秋、100BANCHの 1F「Kitchen」に新たな食文化を提供するカフェを開業予定。「場所」と「食」という、人間にとって根源的な要素を見つめてきた楠本さんの眼に映る、あるべき100年後の姿とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

——100BANCHのある渋谷の新南口エリアは、実はカフェ・カンパニーにとって創業の地と言える場所なんだそうですね。

そうですね。カフェ・カンパニーの創業は2001年の6月なんですけども、当時は100BANCH になる建物の向かいに東急東横線の高架が走っていまして。その高架下の100坪の敷地で、42ヶ月=3年半という短い契約期間でカフェをやらせていただいたんです。「渋谷アンダーパスソサエティー(SUS)」という、とんがった名前で開業して(笑)。それがカフェカンパニーの第一歩ですね。

100BANCHの新しい未来に向けて若いベンチャーなどを輩出していこういうコンセプトは、実は、この時にSUSが目指していたものと通底しています。というのも、SUSを作ったのは、マニアックな話をすると、2000年に定期借家法ができたからなんですよ。それまでは、入居するテナントは基本的には長期契約が前提だったので、間違いのないよう慎重に大家さんが選ばなければいけなかった。ですが、定期借家法のおかげで、3年や5年という短期の契約を提案できるようになった。私は、渋谷はベンチャーで新しいビジネスなどを発信する街だと思っています。その性質と、さらに「高架下」というアンダーグラウンドの匂いのするような場所だからこそ、そこからニューヒーローが生まれるのだというストーリーを考えて、1年なら1年、3年なら3年と契約を切ってお貸しして、成功した人たちは、どんどん東急電鉄さんに応援してもらって出て行っていただく——というスキームを、東急さんに提案したのが始まりなんです。

——確かに、かなり100BANCHに近い発想ですね。

高架下という場所も、すごくよかったんですよね、上には電車が走ってるけど、当時の東横線は渋谷始発か渋谷終点しかなかったので、電車もそんなにスピードが出てなくて、あまりうるさくなかったし。ガタンゴトン、ガタンゴトンという「ゆるさ」の演出というか、まあカチッとしすぎてないムードが居心地の良さであり、当時そういうのを「いいよね」という感覚ははまだ珍しかったので、そこを逆手にとったといいますか。そこから始まり、ゆるさの中から自由が生まれて色々な発信につながればいいと考えてきたのが、カフェカンパニーなんです。

この100BANCH の場所も、特に3階のスペースは天井が高いですし、ずーっとこの場所に佇んできた建物ならではの雰囲気が、新しい時代の風にうまくマッチしていると思います。ここに来る人たちもこの場所の力を自由にキャッチして、既成概念にはまることなくいろんなコラボレーションをしたり、会話をしてコミュニティを作ったりする場所になるんじゃないか。そういった空気感がここにあると思いましたし、パナソニックさんの未来を見据える思いに共感した部分と、そこにロフトワークさんがいればバッチリだと思ったこともあって、お引き受けしました。

——渋谷と一口で言っても、この辺りは例えばスクランブル交差点の方などとはやや趣の違うエリアですね。

地形の力が渋谷にあると僕は思っているのですが、今までは青山方向、あるいは松濤の方に文化や音楽があり、キャットストリートはファッションなど、北側は発展していっている。でも、南は246(国道246号線)がドンと貫いてて、警察署もあったりするので、この新南口エリアとか、渋三(渋谷三丁目)と呼ばれるエリアは、ある意味ちょっと文化的な発信が遅れたんですね。それで、逆にいうと時が止まっている感覚がある。なので「ゆるさ」というか、新しいピカピカなものだけをよしとしない空気感、海外でいうとポートランドや、ブルックリンのような、古いものをもっと再活用していくムードが作りやすいエリアなんじゃないかと思っています。

渋谷と代官山、恵比寿の間でもあるので、再開発が適切に行われれば、実は回遊性も生まれそう。そんなに巨大な施設もないから、ちょっとヒューマンスケールな感覚で物事を感じたり、思考したり、語り合えるというところが、新南口エリアの大きな特徴になってくると思います。

——その場所に誕生した100BANCHには、「次の100年」につなぐどんな思いを託していますか?

僕は学者じゃないので、未来予測に関してはまったく自信ないですけど、ただ、自分が社会を変えていく主体でありたいとは常々思っていて。そう考えた時に、100年後はどうなるんだろうという考えはいつも持っています。分析というよりは自分の夢に近いですね。もちろん、裏返しの期待や不安もいっぱいありますが、それを不安なこととして表現すると世の中はつまんなくなる。不安的なファクターがあったら、その「トホホ」をどうやって「アハハ」に変えるかが、まさに僕の仕事の一番大事なことだと常に思うんですよね

そういうことを考えながら100年後の重大なトピックを見てみると、まずは人口減少。どれだけ減るか、22世紀の初頭には日本は人口5,000万人になるという観測もあるし、そんな先じゃなくても、2040年までに日本の生産人口は6,000万人を割るという。そんな中で、この先のためにみんなでなんとかしようよ、みんなで何かを解決しようよ、今までの常識がこれからの常識とは限らないよねというコンセンサスが急激な勢いでできてきたし、たぶん、今後の5〜10年でそれはさらに顕著になっていくんだと思います。そんなタイミングで100BANCHをやることには、大きな意味があると思ってて。つまり、単に新しいテクノロジーを使った新しい発見や発明だけではなくて、僕たちの100年先のためにこんなことを作ろうよという意志に基づいた「トホホ」を「アハハ」に変える活力の集合体がコミュニティ化された際、人類は絶対に、ネガティブな方面に行かないですむと思う。そのパワーを作っていこうということなんです。

——そのために、具体的にはどんな考え方をすればいいんでしょうか?

例えば、新卒の説明会とかで人口が5,000万人になるぞという話をして「ラッキーと思う人!」と言っても、なかなかそんな人いないんだよね。でも、この間、大学生が一人手を上げて、「すげー、だって人口が減るんでしょう?ってことは、今まで満員電車だったのがそうならなくなるってことですことですよね。」って(笑)。それまで数百人に聞いて、「人口減少、いいじゃん!」なんて言う人はいなかったんですけど、それを言ったのは、一番長生きしそうな大学生だったというね。

だから、経済の規模で考えると当然人は多い方がいいとは思うんですけど、一方でライフスタイルについて考えると、人口が半減するということは一人あたりの国土が倍増するということですから、ということはその時のために日本がもっと遊び心があって、生活文化を僕らが作りながら楽しんで、それをシェアするという国になっていけば、そこに行きたいという方々が海外からも来るかもしれない。今までの、20世紀の社会のあり方が行き詰まってきたとして「そうじゃない方向に進める」という可能性があれば、そこをなんとか頑張って、知恵を作っていくというのが楽しいと思いますね。100年後のネガティブを、全部ポジティブにしていきたい。

——カフェ・カンパニーが運営する1Fのカフェも、そういう考えが生まれる場になるといいと思いますか?

もちろん。100年後を考えると言うことは、私たちが100年前からどう変わって何が変わってないのかを知る必要があると思っています。

例えば、食に関して言えば、東京の素晴らしさはレシピやメニューのバリエーションが多く、インターナショナルフードも増えて、多様性と奥行きがあるところだと思います。一方で、これからもっと緩やかな時代になっていくとするなら、人間の日常はもっと根源的に、ベーシックになっていくはず。

これから先は「クリエイティブ社会」になると言われています。じゃあ、クリエイティブの本質はなんだろうと考えた時、いったん、近代的な合理主義や産業主義などから生まれたいろんな利便性や表層の刺激から離れて、本質を見つめることが大事なんです。シェフの世界でもそういった動きが始まっていて、今、世界中のシェフはペルーに行っているんです。ペルーにはほとんどの野菜の原種があり、原点回帰と言いますか、クリエイティブに未来のことを考えるほど、一度ベーシックを深く知ることに戻っていくんですね。

100年後の食は、もっと日本の発酵技術を見つめたり、自然のままのものをいただいていくとか、ナチュラルな方向に向かうんだとも思っています。新しい時代のメニュー開発も行いたいんですけど、ベーシックなこと、例えば、原種にこだわった食べ物を集めたりとか、調理方法だけじゃなくて、みんなでコミュニティとしてそういう活動に参加してみようよとか。もちろん、100BANCHに参加してくださる方もそうですが、どうせなら新しく生まれ変わるこの地域で次の食の100年を考えるようなワークショップをやったり、物産展をやれたりするといいなとも考えています。

単純にカフェとして、美味しいご飯を提供することも大事ですが、この場所に求められるあり方として、中にいる人たちだけじゃなくて外の人との接点を作り、会話が生まれるきっかけになる場所にしたいですね。

今秋オープン予定のカフェイメージ