EVENT REPORT

2018.02.24 Sat

KIMONO HACK vol.0 〜未来の着物の話をしよう〜
未来の着物のカタチとは。古きをたずねて、新しきモノを創る。

  • #ワークショップ

  • #ファッション

言わずと知れた日本の伝統的な民族衣装である着物。現在の姿が原形だと思われがちですが、実は平安時代以降、各時代のファッションリーダーたちがアレンジを加えて今の形になっていきました。だとすれば、現代の生活にも馴染む着物の形もあるのでは?

「こんな着物だったら欲しい」をみんなで考え、話し合い、手を動かして着物の可能性を切り拓くワークショップ「KIMONO HACK vol.0」が、「KIMONO HACK」プロジェクトのローンチとして開催されました。

洋服を着用する機会が多くなった今の生活にも馴染む着物をどうやって創っていくか。主催のキサブロー氏が、本プロジェクトを始動させた思いを語りました。

 

キサブロー 「経済産業省が「きものの日」という記念日を制定しているのをご存知でしょうか。七五三の日でもある11月15日です。この日は着物を着ることが推奨されているわけですが、着物を着る時期としては寒暖がはっきりしておらず、生地選びが非常に難しい。加えて平日であることも多く、現状オフィスに着ていくにはハードルが高い。といった理由から、「きものの日」に合わせて着物を着ることは現実的でない。それなので、別に年に一回着物を着る日を作れないかと。」

 

「年に一回、みんなで変な格好して練り歩くイベントが日本にありますよね。そう、ハロウィーンです。『ハロウィーン…着物…江戸…そうだ、江戸ウィーンだ!』と思い立ち、メンバー3人を集めて、ジーンズメーカーのエドウィンに話をしに行きました。結果、提案に賛同頂き、今年具体的な形でコラボレーションする運びとなりました。本日のイベントはその下書きとして位置付けています。」

 

そんな奇想天外な着想で誕生したエドウィンとのコラボレーションスケジュールは以下の通り。

・2018年4月~5月…KIMONO HACK vol.1開催

  テーマ:「世界に1着。デニム生地の着物を育てる

・6月…KIMONO HACK vol.2開催

  テーマ:「生地の産地とコラボレーションしながら育てる」

・8月~9月…江戸ウィーン開催

大胆なアイデアから生まれたエドウィンとのコラボレーションに一同笑顔、拍手喝采。

「着物のデザインや展示はしてきたが、着物を実際に着る場作りができてこなかった。これからはイベントを通して着物を “育てて” いきたい。

デニムはこれまで、時間をかけて履き倒し、生地を自分に合うようするものでしたが、今はたった1,000円で買える時代になっています。かつ安くても、品質は非常に高いものが多いです。何でも『受け継ぐ』重要性は注目されやすいですが、変化に対応しながらそのものを “育てる” 意識は希薄だったように思います。それなので、『育てる』を本プロジェクトの一つのキーワードとしています。」

イベントは、100BANCHプロジェクトの一つ オーガニック抹茶パウダー「NODOKA」のお茶で乾杯するところからスタートしました。

「オーセンティックな茶道とペットボトルでの手軽な飲み方に二極化しているお茶だが、もっと多様な飲み方があって良いと思う。古きをたずねて新しいモノを創りたい想いはこのイベントと同じ。」(「NODOKA」代表者洪(ホン))

具体的な未来の着物のデザインを考えるワークショップの前に、花村氏が着物の歴史について説明を加えました。

花村「着物の変遷を知っていたほうが、ワークショップも取り組みやすいと思うので。着物は平安時代の小袖という、当時の下着が原形となったと言われています。応仁の乱以後、上位の貴族からどんどん上着を脱いでいき、残ったのが小袖というわけです。

その後、小袖を紐で縛るようになりました。江戸中期には商人が力を持つと帯を目立たせる着方が流行ったり、帯の結び目が前後したり、どんどん変化していきました。結ぶのが面倒だと思われている太鼓結びも、動き回るにはシステマチックで簡素化された形なんです。作らなければならないと思われているおはしょりも、元々は引きずっていた裾を上げるためで、用途から来ています。

戦後の昭和は、女性が進出し始め、着崩れない着方が求められました。平成は、自己表現の手段としても着られるようになりました。既存の概念が揺れ動いている面白い時期だと思います。伝えたいのは、形自体はいつの時代でも変わって良い、ということです。」

洋服が体の形に沿った形でデザインされるのに対して、着物は体の形に囚われない直線裁ちで作られるという大きな違いがあります。今回のワークショップでは、この定義を守りつつ、「これだったらほしい」と思える未来の着物をデザインしました。

まずは、着物の気に入らない点をワークシートに挙げました。

「視線を集めてしまう…」「気合が入ってしまう」「トイレに行きにくい」など、開始早々様々な意見が飛び交います。

そして、次にそのマイナス点の反対を考えます。

帯が苦しい→ふわっと快感、巻かれて気持ちがいい! などポジティブ変換していきました。

そしてグループを作り、意見を発表し合いながら、欲しい着物のデザインをまとめていきます。

そしてついに発表の時間。それぞれのグループが思い思いのアイデアを語りました。

 

①    チーム「テント」

現代の生活を生き抜くための着物―「CITY サバイバル KIMONO」―を提案。裾をジッパーで取り外すこともできるので雨の日も安心。さらに汚れに強く、暖もとれるハイテクノロジーな素材がポイント。

 

②チーム「イメルダーズ」

とにかく動きやすさを追求し、裾がカーテンのようにロールアップできる仕組みを搭載。さらに前だけでなく後ろにもスリットを入れて広がりを持たせ、着物で全力疾走することも可能に。

 

③チーム「KIMO nomad」

KIMONO×ノマドワーカーを着眼点とし、パーツごとに分解できる着物を提案。小さくできるので洗いやすい、干しやすい、収納しやすいなどの利点を備える。

「着物は八枚のピースでできており、規格化しやすいので、実現性が高い。」(キサブロー)

 

④チーム「白菜」

着物のマイナスポイントとして、「女将っぽく見えてしまうこと」を挙げ、そのイメージを覆す大胆な「白菜柄」を提案。さらに、昼寝もできるスウェット素材の着物、冬用のダウン素材の着物も併せて発表した。

 

⑤チーム「未来」

全体が折り曲がる一枚のモニターとなっている着物を提案。ボタン一つでデザインをいつでもどこでも変更可能で、ツイッターやインスタグラムでフォロワー数が多い人は広告を表示させることもできる。

花村「広告は平面が大きい着物ならではの発想で、洋服にはできないので面白い。」

 

今回見事、「予想だにしなかったで賞」を受賞したのは、チーム「イメルダーズ」でした!

花村氏は「動きやすいことを仕組みから作ってしまう発想が面白かった。」と評価し

キサブロー氏からは自ら制作した生地で作った小物入れがプレゼントされました。

KIMONO HACKから創造される未来の着物の形。

大盛況で閉幕したvol.0ですが、次回はどのような進化を見せるのでしょうか。vol.1以降も乞うご期待下さい。

▼プレゼンテーター

キサブロー (主催)

「和服と洋服」、「男性と女性」、全てのボーダーを越えた新しい表現を提案する新進気鋭のブランド。多摩美術大学情報デザイン学科を卒業後、アートユニット・明和電機に入社。その後映像制作会社にて実績を積む傍ら、家業である和裁の修行を開始。着物のデザインから空間デザインまでを手がけるアーティストとして活動中。着物を通して世界が楽しくなるよう活動を広げる。

花村えみ (イベントプロデュース&司会)

コンセプチュアルなイベントを発案・企画運営する。着付け師。2016年東京都染色工業協同組合の依頼で江戸小紋・江戸更紗・東京無地染の魅力を伝えるPRを担当。海外への着物文化発信事業に精力的。2014年より着物の愉しみ方を広げる自由大学講義「TOKYO着物学」主催。

 

▼モデレーター

澤本佑子

代理店やデザイン事務所を経て、フリーのグラフィックデザイナーとして、またシェアオフィス、みどり荘のコミュニティ・オーガナイザーとしても活動中。日々、新しい仕事や面白いコト、0から1を作る状況、場をかき混ぜている。洋服では難しい、大胆な色使いや柄を重ねて着ることができる着物に魅せられ、デザインの観点から新しい着物の未来・可能性を探っている着物好き。

松元由紀乃

大島紬の職人の家に育ち、地場産業の活性や職人の後継者育成に強い関心を持つ。幼い頃のおもちゃは着物づくりの道具。中小企業支援機関にて伝統工芸・ファッション分野を中心に商品開発や販路開拓を多数経験後、独立。現在は豪州に日本の地場産業を広める会社を設立し、販路開拓に取り組んでいる。着物を改めて勉強中。

WRITER

100BANCH編集部

芦沢 恵利香

大手IT企業でデジタルアーカイブソリューション展開を経験後、動画メディアベンチャーにてコンテンツ企画を担当。人々の日常に焦点を当て執筆活動も行う。学生時代はフィンランド留学ブログ「Run the World」を運営。横須賀市出身。