100BANCH STORY

2017.07.06 Thu

100BANCHのキーマン3人に聞く、
「これからの100年」へのビジョン。
ロフトワーク 林千晶

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第3回は、ロフトワーク代表・林千晶さん。

さまざまなフィールドの企業やクリエイターたちとの「オープンコラボレーション」で社会に価値を提供していくロフトワークのアイデンティティは、この100BANCHプロジェクトの“核”の部分と相通ずるものでもあります。

私たちの未来像を常に外側へ外側へと求めてきた林さんにとって、100BANCHという場はどのような意味を持つのでしょうか。

日本を代表するエレクトロニクス・カンパニーのパナソニック、先進的なカフェ/ライフスタイルを提供するカフェ・カンパニー、オープンコラボレーションを推進するクリエイティブエージェンシーのロフトワーク。

これからの100年をつくる実験区「100BANCH」プロジェクトは、パナソニックの100周年を期に、3社による共同プロジェクトとしてスタートしました。 

業界も歴史もカルチャーも違うこの3社の歩みが、なぜこの渋谷という地で交わり、そしてどのように次へと進んでいくのか。それを占うため、100BANCH編集部は3社の代表者にインタビューを試みました。

第3回は、ロフトワーク代表・林千晶さん。さまざまなフィールドの企業やクリエイターたちとの「オープンコラボレーション」で社会に価値を提供していくロフトワークのアイデンティティは、この100BANCHプロジェクトの“核”の部分と相通ずるものでもあります。私たちの未来像を常に外側へ外側へと求めてきた林さんにとって、100BANCHという場はどのような意味を持つのでしょうか。

林千晶  株式会社ロフトワーク代表取締役
1971年生、アラブ首長国育ち。
早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間200件を超える。
森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」を岐阜県飛騨市に設立、代表取締役社長に就任(2015年4月〜)。

——「100年先の未来をつくる」というのはとても壮大なコンセプトですね。

「100年先」というキーワードが出てきたのは、パナソニックが100周年を迎えるということがきっかけでした。100年前、松下幸之助さんはどんな環境で何を考え、どんなものを作っていたかを知りたくて。パナソニック(創業当時は松下電気器具製作所)の事業は、当時は各家庭に電気のプラグが一つしかなく、電灯をつけると同時には他の電気器具が使えなくなってしまうのを解消するために改良した「二股ソケット」から発展していったんだそうです。

今の時代に生きている人からみると、パナソニックは世界的に有名な、日本を代表する企業。でも、そんな大企業にも、アイデア一発で勝負する起業の時があったんです。つまり、今は当たり前だと思われているものでも、すべては誰かがどこかのタイミングで作ったものなんですよね。

だとすると、今の私たちが未来に向けて何かをつくったら、100年先の人たちが「これって100年前に、100BANCHってとこから生まれたらしいよ」という会話を交わすかもしれない。100年前の松下幸之助が今の私たちに影響を与えているように、今の時代に私たちがこれからの社会をつくる、ビジネスを興す、そんなエネルギーが集まって実験が行われていく。これは、そういう夢を追いかけるプロジェクトなんです。

——100年先に残るものをつくることへの、具体的なイメージはあるんでしょうか。

新聞を読んでも、ネットを見ても、「未来の○○は」とか「△△の描く未来」といったことが書かれていて、世の中未来だらけなんだけど(笑)、その未来がどれくらい先なのかと考えたら、多くはそう遠くない未来なんですよね。私たちはつい自分がわかっている範囲で物事を捉えたくなるし、イメージできて実現しやすいことから始めてしまう。意図せず、発想が狭くなっちゃうんですよね。

とは言え、それも悪いことじゃない。例えば、東京オリンピックの開催が決まり「2020年までに、どうする?」となれば、各地で一斉にまちづくりが始まる、外国語対応が始まる、いろんな事が始まる。いつかは必要になると知りながら手をつけてこなかったようなものも、オリンピックが決まったら、急に「よし、やろう!」となるわけだから。

それと同じように、せっかくの100周年というタイミングを捉えて、今日や明日のことじゃなく、もっと長い目で、「100年先のことを考えよう!」というかけ声から始まったんです。100年という時間の長さは簡単に予測できるものではないし、一人の力で作れるものでもないだろうけど、このかけ声にワクワクする人たちがバンチ(束)になったら、どんな化学反応になるんだろう? そう思って、私もワクワクしているところです。

——100BANCHの核になる「GARAGE Program」ですが、なぜ、応募資格を35歳未満に絞ったんでしょう?

それぞれの年代がそれぞれ頑張っていると思うんですが、一番機会を必要としているのは若い人たちじゃないかな。若い人たちは夢や希望は持っているけど、それを実現する手段や力を持っていなくて、アンバランスな状態なんですよね。それに日本では「若造だからまだ物事を知らない」みたいな論調で、若さは未熟さと結びつけられやすい。でも、高校生と話をしてみると、私なんかよりずっと物事をわかっていたり、大きな夢を持っていたりしてビックリさせられる。そういう人たちが力を発揮できていないのは、むしろ先輩にあたる私たちの先入観のせいなのかもしれない。

だから常識にとらわれず各分野で活躍しているメンターたちと力を合わせ、若い人たちの溢れるエネルギーに実現力を補って、どんどん形にしていきたいなと思っているんです。

——100BANCHのメンター陣は、渋谷区長からバーの店主まで、幅広い人選ですね。

はい!ジャンルレスって、大事なことです。人は日々何かを食べ、自転車や車に乗り、テレビも観るし、デートもするし、投資もするかもしれない。人生のなかでさまざまなことをしているわけで、100年先を想定するときに、テクノロジーだけで解決できることなんてない。あらゆる領域を横断して、統合して、変化が起きるはず。だから、人の営みをいろんな角度から見られるように、さまざまなフィールドで活動している人たちに入ってもらいました。年齢も20代から60代までと幅広い。世代を超えた議論から、世の中をワクワクさせるアイデアを次々と生みだしていきたいと思っています。

——逆に、メンターの方々の共通点は?

できるだけ、めちゃくちゃなことを言いそうな人を選びました(笑)。「パナソニックの100周年です」と言われたら、多くの人は賢くて、正しくて、耳障りがいいことを言ってしまうかもしれませんが、人が交感神経と副交感神経がうまく噛み合って生きているように、綺麗ごとだけを言っていても社会は動いていかないんですよね。

入居するプロジェクトの人たちも、人間だから誰かの事を羨ましく思ったり、悔しかったり、焦ったりっていう思いを抱えも含めてその場にいる。その悔しさを受け止めながら、「じゃあその悔しさをどうビジネスにする?」という事を考えられるメンターにお願いしたつもりです。

だから、応募してくる人には綺麗ごとじゃなくて、本当にやりたいことをぶつけてほしい。やりたいことをやり通すのって、実はけっこう難しいんですよね。綺麗なこと、正しいことを考えるロジックを私たちはずいぶんトレーニングされているけど、自分のやりたいことにちゃんと向き合う機会は案外少ない。でも、100BANCHはそのための場所です。「本当にやりたいことは何か?」「自分は何に動かされて、何に悲しみ、何に喜ぶのか?」そんなことを考えて、自分にしかやれない、あるいは「これしかやりたくない」ということを見つけて、応募してほしいです。そうすれば、今回のメンター陣は「それは面白いね、応援する!」って受け止めてくれると思います。

——初期の入居プロジェクトを採択するにあたって、メンターが集合して審査会をやりましたよね。そこで何か気づいたことはありますか?

メンター陣のたくましさと、すさまじい「発見力」ですね(笑)。どんなアイデアがきても、その中に面白いところを見い出すのは私の得意分野だと思っていました。でも、今回のメンターの価値発見力はすごかった。単純に面白がるんじゃなくて、ハンターのように「ここが面白い、俺がサポートするともっと面白くなる!」というところまでイメージできるんです。

審査では通常、たくさんの応募から優れたものを選ばないといけないので、つい「どこが足りていないか」という減点法の議論になりがちです。でも今回は、その真逆。私はまるでオークションのオークショニアのように「このプロジェクトが欲しい人?」「はい、これは落合さんがゲット!次はこれです!」って、前のめりになるメンター陣をさばくのにひと苦労(笑)。まだ提案書しか見ていないのに、想像力と経験豊かなメンターが「自分ならこうできる」という価値や可能性を見出せる、それこそが最初の化学反応なんですよね。というか、むしろメンター間でもすでにすごく面白い化学反応が起こっているから、採択された100BANCHのメンバーたちは、ここから頑張って食らいつかないと、メンター陣のテンションについていけないかも(笑)。

——まずは、採択する側が目一杯楽しんだということですね。

あの審査会は楽しかったですね。正直、プロジェクトがどうなるかは誰にも予測ができないけど、この活動を起点に「未来がこう変わってほしい」という思いがベースにある審査になった。もし、正確な分析やマーケティングの数字に基づいた審査会だったら、採択できるプロジェクトはグッと少なかったと思います。

この場所をどう使うかも、今はまだ決まっていないんです。一応、オフィスとして使えるし、展示会も開ける。でも、想像もしていなかった使い方をする人たちが早く出てきてほしいし、きっとすぐに出会えるだろうとも思っています。「これは無理だろう」「いや、やれる」というぶつかり合いがあるほど100BANCHは育っていくだろうし、そういうコミュニケーションの場になるといいなと思いますね。

——最後に、ロフトワークとしてこの場所で仕掛けていきたいことがあれば聞かせてください。

ロフトワークがずっと大切にしているのは「価値を共につくる」こと。「コクリエイション」とか「オープンイノベーション」。まあ、カタカナにすると急に自分のものじゃなくなっちゃう気がして、普段はあまり使わないんですけど。「一人では何もできない、でもみんなが集まると驚くようなことができる」ということです。

ロフトワークは、これまでにも様々な化学反応のきっかけをつくってきた自負があります。元素記号で言うと、何でもくっつくことができる「水素」。化学反応しやすくて、扱い方を間違えると爆発する(笑)。でも、100BANCHでは、そこそこ爆発してもいいんじゃないかと思っていて。普段は化学反応しづらい金属のような安定感があるパナソニックであったり、1Fにはカフェ・カンパニーであったり、あとは各プロジェクトのメンバーやメンター陣などまったく違う要素を結びつける。それと同時に、「出会うことで化学反応が起こり、どちらも昔の自分には戻れない」という大きな変化を、ここにいるみんなに起こしていく触媒になりたい。ロフトワークがやりたいのは、そこですね。