BANCH PROJECTS

2017.10.31 Tue

Run your hotel with Smartphone only!:
沸騰する民泊市場に先手を打つ!
チームのモットーは“人ありき”

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訪日外国人の数が右肩上がりで増加するなか、民泊市場が飛躍的な伸びを見せています。GARAGE program第1期の「Run your hotel with Smartphone only!」は、そんな民泊市場の未来を見据えるプロジェクト。

ホスト業務の遠隔化「リモート民泊」を実現するこのプロジェクトでは、三ヵ月の活動中、民泊ゲストのスマートフォンでのチェックイン手続き、住宅宿泊事業法(民泊新法)で備付けが義務化される宿泊者名簿をクラウド管理するサービス「ABCチェックイン」をローンチしました。さらなるサービス開発のためにプロジェクトを延長、日夜100BANCH 2FのGARAGEで活動しています。

プロジェクトリーダーは、高校生メンバーの柳川さん。プロジェクトを立ち上げたベンチャー企業チャプターエイトの代表・高野さんから最近交代しました。兄弟のような新旧リーダーに共通するのは現状に満足しない向上心と劣等感、その両方をテコに描く未来への柔軟なビジョンでした。

——チャプターエイトのビジョンは「言語、文化などのあらゆる障壁を乗り越え、人々がモノやアイデア、情報などを共有し、共感し合える世界を創る」。どこから着想を得たのですか?

高野 政治家になりたいと思った17歳の体験からですね。修学旅行で広島の原爆ドームを訪れたのです。そこにはお母さんが子どもを抱いている写真が展示されていました。腕の中の子どもはすでに死んでしまっている。僕は母子家庭で育っていますから、その写真にことさら胸がえぐられました。“戦争を止められる人間にならないとだめだ! 戦争を止められるのは誰? 総理大臣しかない!”。政治家になろう、そう決意しました。修学旅行では広島からディズニーランドに行くことになっていたのですが、僕はそこから外れて駒場東大前に行きました。政治家になるなら東大に行くしかないと。

——大胆な行動ですね!

高野 偏差値30から猛勉強しました。でも東大は2回落ちて、ギリギリで早稲田大学に入学しました。大学に入ったら周りは政治家になりたい奴らばっかりで。強烈な劣等感を抱えこむことになったのですが、田原総一朗さんのゼミに入ったり、当時話題だった堀江貴文さんや村上世彰さんの活動を知ったりして、次第に変わっていきました。

——どのような変化がおとずれたのですか?

高野 2005年、当時のライブドアの堀江貴文さんが衆議院議員選挙に出馬しました。そして広島6区で亀井静香さんと競って僅差で負けた。ベテラン政治家と戦う堀江さんの姿に憧れました。その頃、サイバーエージェント藤田さんや村上ファンドで世間を賑わせていた村上世彰さんにも影響を受けました。政治家だけじゃない、起業家だって世界を変えられると思ったんです。

——世界を変える存在として起業家も視野に入った。

高野 そうです。就職活動は当時勢いのあるベンチャー企業に標的を定め、「あ行」から探しました。その頃、インターネット広告が雑誌広告を抜いたタイミングだったことと、将来インターネット選挙の時代が来るだろうと予想したこともあり、アドウェイズというインターネットの広告代理店に入りました。

——海外で現地法人を立ち上げるなど、大活躍されたそうですね。

高野 大坂で営業としてバリバリ働き、インドネシアに現地法人を設立しました。インドネシアでは言語や文化や宗教の違いなど、日本にいたら知りえなかったさまざまなことを学びました。その経験が契機になり、自分自身で勝負する時がきたなと帰国した2015年3月、チャプターエイトを立ち上げました。

左)高野 勇斗 2007年4月、株式会社アドウェイズに新卒入社。入社1ヶ月目にして大阪支社を責任者として立ち上げ、その後も同様に責任者として名古屋支社、福岡支社の設立を手掛ける。2011年7月、株式会社アドウェイズインドネシアを設立し、3年半現地法人代表を務め、中国向け転送サービス「楽一番」立ち上げ。2015年4月に株式会社チャプターエイトを設立。早稲田大学卒。 
右)柳川 優稀 2001年東京都生まれ。現役高校生1年生。中学2年生の時にプログラミングに出会い、ITスタートアップに携わる。現在はチャプターエイトで無人宿泊施設向けチェックインサービスのアプリ版を開発中。

——柳川さんがこの世界に入ったきっかけは?

柳川 大学付属の中高一貫校に通っているので、中学に入学した途端に進学する大学も決まった感じになっちゃったんです。目的を持たないまま中学、高校、大学へと進んでいくのは怖いし、嫌だな、何でもいいから飛び抜けた才能やスキルが欲しいと思いました。iPhoneのアプリだったら簡単に作れるっていうのを聞いて、プログラミングのスクールに通って勉強を始めました。でも、プログラミングを学んでもそれを活かす場がない。焦燥感に駆られました。

——スキルはあるのに活かす機会が見つからなかったんですね。

柳川 はい。スクールを飛び出してTECH LAB PAAKに出入りするようになりました。2017年の1月、そこで高野さんに出会ったのです。

——自ら開発したABCチェックインが運用されています。どういう気持ちですか?

柳川 半分遊びでプログラミングしていたのが、人に利用されることで責任感が生まれました。そして徐々にですが大学や社会でのチャンスが広がったと実感できるようになりました。とはいえ、僕はプログラマーになりたいとは思っていません。プログラミングは、将来当たり前の技術になると思っているので、他にもいろいろな武器を手に入れていきたいなと思っています。

——そのモチベーションはどこからくるんですか?

柳川 学歴コンプレックスです。

高野 柳川の学歴コンプレックスはすごいんですよ。卑下するような大学じゃないのに…。

柳川 考えすぎなのかもしれないですけど…。学校というラベルではなく、スキルやキャラクターで人を評価する社会になって欲しいと強く思っています。

——高野さんは起業時から「民泊」につながる事業を視野に入れていましたか。

高野 僕は人が大好きなんです。だから人のまわりに事業ができる会社を立ち上げることが目標で、どんな事業を興すかは正直まったく考えていませんでした。最初に展開した事業は日本の商品を海外から購入できる“越境EC”サービスです。自分の強みであるインターネット広告と東南アジアでの経験をかけ合わせたもので、次にスマホでバーコードをスキャンするだけで日本の商品情報を英語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語で閲覧できるアプリ/サービスを展開しました。

——続々と事業を立ち上げたんですね。

高野 その次にアウトバウンドとインバウンド両サイドのサービスも展開したんですが、為替レートの変動や爆買いの終焉などがあってうまく軌道に乗せることができませんでした。そこで、訪日外国人を分析することにしました。精査するうちに、外国人が必ず通るルートには空港と宿泊施設があるということにあらためて気づいたのです。当時は民泊がまだグレーゾーンで、大手が参入しづらい状況でしたし、プレイヤーも未熟だった。

——どのように民泊ビジネスに参入したのですか?

高野 民泊ビジネスのコアは家の空きスペースを主に外国人に貸して宿泊料をもらうことで、プラットフォームとして有名なのがAirbnbです。しかし、法律に照らし合わせるとグレーゾーンがけっこう多い。そこで僕は民泊の周辺サービスを他に先駆けて打ち出すビジネスを考えました。

——他に先駆けたビジネスとは?

高野 宿泊施設内を無人化した状態をイメージして、そのイメージをサービスで実現しようとしました。柳川が手掛けた「ABCチェックイン」もそれにあたります。ABCチェックインは宿泊者がスマートフォンやタブレットでチェックインする際に、広告やサンプリングも提供できます。これは日本で初めての試みになるでしょう。今後もホストが遠隔で民泊運営するために必要なサービスを拡充していきます。この業界の最近の動向は、新しいサービスが始まるやいなや続々と類似サービスがでてくるパクリ競争状態で、プレイヤーがひしめき合うようになっています。民泊業界の情報を一早く得て発信できるよう「民泊大学」という情報メディアも運営し、先取りしたサービスを早くかつ的確なタイミングでローンチできるよう心がけています。

チャプターエイト作成の民泊のカオスマップ。多くのプレイヤーがうごめいている

「ABCチェックイン」宿泊施設内でのイメージ図

「ABCチェックイン」6つの主要機能

——高校生の柳川君のほか、高野さんのまわりには才能溢れるメンバーが集まってくる印象があります。チームづくりへのこだわりはありますか?

高野 僕のこだわりは、チーム作りというよりは、主体性のある個人に集まってもらうことですね。

柳川 高野さんと会ったとき、僕は大学試験の過去問題をインターネット上で公開するサービスを手掛けていました。

高野 過去問は有料サイトでの掲載や本屋でお金を払って買う場合が多いため、貧富の差が学力の差につながってしまう。それを解消したいという柳川のセンスと、コミュニケーション能力の高さに惹かれました。彼だけではなく、「民泊大学」の編集長は元新聞記者です。先にも言いましたが、人のまわりに事業は作られると信じています。新聞記者の友人が新たな道を模索しているから「民泊大学」を、柳川がiOSのエンジニアだから「ABCチェックイン」を立ち上げたというのもあります。

——高野さん、柳川さんの未来づくりビジョンはどこにありますか? 

高野 僕の最終的なビジョンは、抽象的ですが、人種や言語、文化や宗教による断絶をインターネットの力で超えることです。そのビジョンに即していれば、究極、事業は何でもいい。そして仲間が主体性を発揮できること。これにはこだわっていきたいですね。

柳川 僕よりもプログラミングができる中高生はたくさんいるはずで、世の中に出てこないのはもったいないと思います。僕が積極的にチャレンジをすることで活躍する高校生が増えればいいなと思っています。

高野 いいこと言うなあ、柳川!

原稿構成:水迫尚子、岡徳之(Livit)