BANCH PROJECTS

2017.12.07 Thu

ECOLOGGIE リーダー葦苅晟矢:
誰も成し遂げていない昆虫コオロギの養魚飼料の実用化に挑む

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世界の食糧問題を救うのは昆虫ーー。2013年、FAO(国連食糧農業機関)が発表した報告書「Edible Insects – Future prospects for food and feed security(昆虫食ー食料及び飼料の安全保障に対する将来展望)」に触発され、ごくごく普通の大学生だった一人の男の子が、日本でひとり立ち上がった。

早稲田大学に在学する葦苅晟矢さんは昆虫コオロギを水産養殖用の飼料に活用するプロジェクト「ECOLOGGIE」を立ち上げ、100BANCHのGARAGE Program第一期メンバーとして入居中。コオロギを人工的に大量繫殖させるシステムの確立を目指し、他のプロジェクトのメンバーにも刺激を受けながら奮闘を続けています。

今後学部を理系にチェンジしてまでも、誰も成し遂げていない未来へ向かう彼に、これまでとこれからを語っていただきました。

――葦苅さんはもともと水産養殖が盛んな地域で育ったんですよね。

地元は九州で、養殖の中でも淡水魚養殖が盛んだったところです。海っていうよりは川、山ですね。

 

――中高ぐらいから社会貢献的なこととか、世界のいろいろな課題に対して関心は強い方だったんですか。

中高時代はほとんど関心はありませんでした。特に高校時代は完全に寮生活で、インターネットも使えなくて、基本的に情報が遮断された生活だったので(苦笑)。

 

――東京に出て、大学に入って一気に世界が広がったんじゃないですか。

相当広がりましたね。特に大学で入った「模擬国連」というサークルの影響が大きかったです。簡単に言うとディスカッションサークルなんですが、議題が北朝鮮の人権問題とか、いわゆる国連で扱うような国際問題限定で、各自がある国の外交官を演じる形でディスカッションしていました。サークルのメンバーに変わった仲間が多くて、新歓合宿で災害用の非常用袋をしょってきた人とかいて(笑)。そいつは今も極限環境微生物の研究していて、ずっとアラスカに行っていたような奴で。

そういう僕の知らない世界をたくさん教えてくれた仲間がいましたし、変なことをしても受け入れられる環境がありましたね。結構夢のある人が多かったので、自分もどうしたいのか、大学1年生の頃に、やっと考えるようになりました。

葦苅晟矢
大分県出身。現在早稲田大学大学院先進理工学研究科1年に在学中。学部2年の頃からの自身の「昆虫コオロギを活用した養魚飼料としての開発・販売事業」の事業化を目指して奮闘している。本事業案における今までの既存実績には東京都主催の「Tokyo Startup Gateway 2016」における最優秀賞&オーディエンス賞、日刊工業新聞社主催「キャンパスベンチャーグランプリ全国大会2016」におけるテクノロジー部門大賞・文部科学大臣賞などがある。

――模擬国連でいろいろな社会問題を研究する中で、今のECOLOGIEのプロジェクトに繋がる食糧問題解決のアイデアに行きついたんでしょうか。

模擬国連で食糧問題を調べていた当時、ちょうど国連のFAOが昆虫の食用資源としての可能性について公式にレポートを発表したことがあって、まずは単純にすごく面白いなって思いました。どちらかというと、最初は昆虫の飼料活用というよりは、食用の方がインパクトが大きかったですね。

そこですぐに飼料ビジネスのアイデアに行きついたわけではなくて、サークルを大学2年生の12月で引退した後、大学3年でゼミ選びをする段階で、自分は本当に何をテーマにしていこうかと考え出しました。それで、商学部の起業家養成講座という授業があったんですけど、この講座がきっかけで今まで頭の片隅にあった昆虫という存在と、食料としての可能性がちょうど飼料に結びつきました。

 

――どうやって結びついたんでしょうか。

当初は昆虫を食用として考えていたんですが、いろいろ調査していく中で、やっぱりまだ壁が高いのかな、と。特に日本では結局食べなくてもいいし、学食とかで周りの大学生に聞いても食べる人は一人もいなかったので(笑)。でも、講師の先生とも「これだけ栄養価が高くてポテンシャルがあるんだったら、何か使い道はあるよね」と話していて、昆虫を飼料として使うこともレポートの項目に書いたりしていました。

 

――その後、実際に地元で魚の養殖している人に話を聞きに行ったりもしたんですよね。得られた情報でビジネスプランが発展したのでしょうか。

夏休みに九州の実家に帰ったときに、何人か当たってみたんです。第一次産業の人に話を聞くのは初めての経験だったんですけど、直接当事者である人に聞いた上で、やっぱりこの問題、深刻なんだなっていうのを実感しました。

今、魚の飼料のうち、6~7割がいわゆる魚なんですね、「魚粉」っていう。ブリとかタイとか大きな魚を育てるために、自然界の生の小魚を与えているという感じですが、生の魚は量が限られているので、値段がここ10年で3~5倍上がっている。小魚は南米から取っていたんですが、もうそこが取れなくなって、今は東南アジアにシフトしているんですね。そこから、昆虫を飼料にするビジネスの可能性を感じて起業家養成講座で発表したら、面白いねって評価してもらえました。

――ビジネスモデルをバージョンアップしていこうとしているのが今ですよね。ビジネスプランを立てた後はどのような事をやってきたんですか。

プランを考えた後は、そもそもコオロギはちゃんと飼料として使えるのか、安定供給できるかなどの検証を行いました。一番大事なそもそも魚が本当にコオロギを食べてもらえるのか?も実際に検証してみたんですが、魚はコオロギを食べるし、成長はするということは確かめることができました。

まだ、コオロギを食べて育った魚の味がどうなるかまではまだ検証していないんですが、魚が消費の段階で売れる状態を作らなければいけないため、美味しい魚を育てる飼料作りという切り口は絶対に大事だな、と改めて強く意識して研究を進めています。餌によって成長スピードも味も変わってくるのは学問的に一番面白いと思っているし、コオロギを新しい素材として付加価値を付ける意味でも、今後きちんと検証する必要があると思います。

 

――100BANCHでは昆虫の大量繁殖の研究を行ってきましたよね。素人的な考えだと、昆虫ってほおっておけば無限に繁殖するような存在に思えるんですが、そうでもないんですか。

コオロギは基本的に水、温度、湿度、換気が適切であれば育つんですが、やっぱり何かミスすると大量死のリスクがあったりもします。今はコオロギが死なない環境を作るというのを研究しています。コオロギの品種によって死んでしまうリスクに違いがあることを確認することができました。

テクノロジーの面で言えば、100がゴールとして、昆虫工場は今、1から10の方向に向かいつつある段階です。欧米はもう20、30の方向に行ってますが、それでも根本的に昆虫の大量生産はまだ爆発的に広がっていません。研究しがいのある課題です。

――9月からは理系の大学院でコオロギの研究をされるんですよね。

これまでは家とかで飼育をしていたんですが、規模を大きくして研究する必要もありましたし、結局、コオロギをやる以上、やっぱりその道の専門家とともに、専門的な知識を付けながら取り組む必要があると考えたからです。これからより本格的に、コオロギの飼育環境のシステムを研究をしていく予定です。

例えばですが、人間の扱いやすいコオロギを選抜したり、有用成分をより多く蓄積する飼育方法を研究のうえで確立したいと思っています。コオロギと言っても品種とコオロギの食べる餌、そしてストレスなどの環境要因によって生産されるコオロギの成分が変化します。品種×食性×環境の組み合わせの最適解を見つけながら、大規模供給へ向けた生産システムを確立したいと考えています。

 

――葦苅さんが考えているゴールは何ですか。

最初のゴールは、昆虫が養魚飼料の一部として使われて、消費者の口に届くという一連の流れを作ることです。まずは自分の地元など、特定の地域を対象として取り組んでいければと思っています。

大きな目標としては、昆虫という忌み嫌われていて使われていない生物資源が、社会的にある程度の利用価値があるということを、初めて聞く人でもわかるぐらいの世界観を生み出すこと。しかも、それが社会一般的な食糧と結びついて捉えられる時代が来たら、それが本当のゴールかな、と思います。

 

――食に対する価値観は、これから大きく変わっていきそうな領域ですよね。

これから5年、10年で食の価値観は激しく変化すると思います。昆虫を人が食べる時代もいずれは来るだろうと・・・。それから環境意識も高まってきて、食糧生産のエネルギー的なところも考える時代が来ると思います。養殖に限っても環境に良い養殖を考えないといけない。そういうときにやっぱり昆虫ってエコなんですよね。

原稿構成:山本直子、岡徳之(Livit)

GARAGE Program

100BANCHでは野心的な若者たちのプロジェクトを支援するGARAGE Programを展開しています。毎月エントリーと審査を実施しています。