LEADER INTERVIEW

2019.06.13 Thu

クリエイティブ町内会 権藤祐子&髙橋裕佳:防災・防犯など“助け合えるご近所さん”とその先にあるやさしい世界

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全国各地で縮小の一途を辿っている、地域の最小単位のコミュニティ「町内会」。その価値を再発掘し、在り方をアップデートしていくために立ち上がったプロジェクトが「クリエイティブ町内会」です。

プロジェクトの発起人である権藤祐子(ごんどう・ゆうこ)さんと髙橋裕佳(たかはし・ゆか)さんは、100BANCHに入居して町内会の現状の調査を進めていく中で、「自分たちが直接介入して変えていけるものではない」と気づきます。
けれども、まちにとっての第三者だからこそできることがあるはず……そう悩み抜いた先で、まちづくりにおける町内会のポテンシャルや、町内会を可視化していく意味を見出していきました。

現場を知り、3か月の入居期間を終えた今、本プロジェクトにどんな変化が生まれつつあるのか、お二人が拠点にしている千駄ヶ谷の街中を歩きながら、じっくりと話を伺いました。


ー権藤祐子さん(左)、髙橋裕佳さん(右)

 

──そもそもなぜ、町内会という存在に目を付けられたのでしょうか。

権藤:町内会に対する思い入れについては、ぜひ髙橋さんの方から。私は彼女の熱意に引っ張られて来た側面が大きいので(笑)

 

髙橋:実は私も、ちゃんと町内会の活動に参加したことって今まで全然なかったんです。大きなきっかけは、「近所のカメラ屋のおじいちゃん」とよくお話ししています。

そのおじいちゃんは夜、細い路地の入り口に椅子を置いて、懐中電灯を片手に座ってるんです。私は仕事の帰り道でよく遭遇するんですけど、「危ないから早く帰った方がいいよ」と声をかけてきて。知り合いでもないのにめちゃくちゃ心配してくれるし、通るたびに行く先を懐中電灯で照らしてくれるんですよ(笑)

ある日思い切って話しかけてみたら、そのおじいちゃんは町内会の防犯担当委員で、警察から依頼を受けて、注意喚起のためにそこに座っていることがわかったんです。その日を境に、暑い時にはおじいちゃんにアイスや冷たいお茶を差し入れたり、たまに世間話をしたりする仲になりました。

 

 

髙橋:そんなこともあって「そう言えば、私が今住んでいる地域の町内会ってどんな活動をしているんだろう?」と思ってネットで調べてみたら、全然情報が見つからないんですね。近所の掲示板を探して見ても、張り紙が5年前のものだったりして(笑)

本業の不動産会社の仕事を通じて出合う町内会は、まちの人たちが頑張って盛り上げようとしている所がほとんどでした。だから、こうした消滅直前の町内会が身近にあるなんて思いもしなかったんです。

 

権藤:私も髙橋さんと同じように大学でランドスケープデザインを学び、勤め先も同じだったので、よく「いつか自分たちのスキルを生かして、まちづくりにまつわることをやりたいね」と話していたんですよね。

髙橋さんはよく「スクラップ&ビルドでいいまちはできない」と言っているんですけど、ディベロッパーがやるまちづくりって、どうしてもそれに偏ることが多いんです。仕事柄、全国各地に出張に行くのですが、今はどこに行っても地方都市の駅前が同じような風景になっているんです。そのまちにしかない魅力って、絶対そこにあったはずなのに。

 

 

権藤:駅前は開発によってキレイになると、賃料が上がるんです。そうすると、ずっとその土地で少ない利益で頑張っていた個人商店などは立ち退かざるを得ない。代わりに入るのが資本力のあるチェーン店ばかりになって、似たような店舗構成の街並みができ上がっていく。その過程で“そのまちらしさ”が静かに死んでいってしまうんです。

私も髙橋さんも、仕事としてその過程に関わっていることに、少しずつモヤモヤが募っていて。そんな時に100BANCHの存在を知って、「ここに何か新しいまちづくりの企画をつくって応募してみない?」と相談したんです。そしたら、髙橋さんが「実は……クリエイティブ町内会、っていうのをやってみたいんだよね」って。もう、名前が決まっていて(笑)

 

髙橋:そう、こっそり温めてました(笑)。町内会って「古くさい」「つまらなさそう」「めんどくさそう」というイメージを持たれることが多いし、自分もそう感じていた一人でした。でも、もし自分が「町内会」に入るなら、「なんか楽しそう」と思えるものにしたいなと思ったので、ポジティブな言葉をかけ合わせた「クリエイティブ町内会」という言葉を思いつきました。そうすることで自分と同じような気持ちの人にも町内会に興味もってもらえるんじゃないかなと。その時点で、活動の中身は全然考えてなかったんですけどね(笑)

──「クリエイティブ町内会」の企画は、100BANCHの入居前と現在とで、大きく変化したと伺っています。企画当初の「クリエイティブ町内会」の活動は、どのようなものをイメージされていたのでしょうか。

権藤:100BANCHに応募した段階での企画では「自分たちが現場に入っていって、町内会を変えていく」という、コンサルのようなイメージを持っていました。そのためにはまず、現状がどうなっているのかを知らないといけないと思い、メンターの長谷部区長にご紹介いただいて、千駄ヶ谷をはじめとした渋谷区内の町内会の方々にお話を聞かせてもらったり、活動を見学させてもらったりしました。

そうして入居してからの3か月間、現状把握に努めていたんですけど……「これは外から入って変えていくのは、相当厳しいぞ」というのが、正直な感想です。組織やシステムが、一昔前の社会や家族形態を前提としたシステムのまま、変わっていないんですよね。

 

 

髙橋:たとえば、「打合せが平日の15時から」だったり、「消防や警察との協議は必ず平日の日中」というのが定例になっていたり。「連絡は原則、回覧板で」とか、日中会社勤めをしている私たちにとっては、参加しづらいルールがたくさんあるんです。

それに、その土地にずっと住んでる方に「町内会ってどうやって入るんですか?」と聞いても、「それがよくわからないのよね」と返されてしまったりすることもあって。もう謎の秘密結社みたいな存在になっているケースも多くて(笑)

 

権藤:一方で、町内会は行政と連携して地域の防災・防犯活動を行なっていたりするなど、まちの基盤を担う側面も持っています。そういうインフラ的な要素に加えて、もっと「まちを面白くするための取っ掛かり」として、町内会が機能しないかなと。これだけ各地でまちおこしやまちづくりが盛り上がってきている今、昔からある「町内会」という組織がまったく活用されないなんて、もったいないなと思うんですよね。

 

 

髙橋:まちおこしのメジャーな対策方法が「再開発」だけになっているのが、大きな問題だと感じています。スクラップ&ビルドという手法だけでは、以前のまちではなくなってしまうと思うので。

そこでまちのベースに存在する町内会が、もっとまちを盛り上げる機能や、循環を生むような仕組みを内包していたら、再開発に頼らなくても生き続けられるんじゃないかと思っていて。まちが今の世界観を保ったまま、頑張っていける選択肢を増やしたいんです。

今その明確な答えがあるわけではないんですけど……まちを元気にするための町内会の在り方を一緒に考えていくこと、考えるきっかけをつくっていくことが、クリエイティブ町内会の意義なのかなと捉えるようになってきました。

 

──「外からは容易に変えられなさそうだ」という町内会の現状を知った上で、どのような活動方針にシフトさせていったのですか。

髙橋:第三者である私たちが、全国の町内会のためにできるのは「既存の町内会が、足りない何かを補い合える仕組みやプラットフォームをつくること」ではないかと考えています。さまざまな町内会の現状を俯瞰した動きは、きっとどこにも所属していない私たちだからこそできることだろうと。

 

 

権藤:不思議なことに「クリエイティブ町内会」を名乗ることで、自分の住むまちで何か活動したい、まちをよりよくしたい、という人が集まってくるようになりました。だから、「クリエイティブ町内会」という看板を掲げるだけで、まちづくりを身近に感じてもらえる。「自分も参加してみようかな」という気持ちになる。そういう意味で私も、クリエイティブ町内会は「まちづくりや町内会にまつわる、よりよいアイデアを広めるプラットフォーム」で、「自分たちは思想家なんだ!」と考えるようになりました。なんか、具体的な成果があまりない中でこういう話をすると、口先だけというか、自分でも「なんか詐欺師っぽい……?」って気持ちになることもあるんですけど(笑)

ただ、3か月の入居期間でさまざまな町内会の現場を見て、「既存のやり方を変えていくこと」よりも「ものの見方や考え方を変えるきっかけを提供すること」こそが、自分たちのアプローチできるポイントなんだろうという確信は得られました。だから3ヶ月先のKPIみたいな成果は出せないけど、100年後は語れる。プロダクトはいつか消えてしまうけど、思想は残ると思うから。

──「考え方を変えるきっかけ」という言葉がありましたが、現状の町内会について「変えていくべき」だと思われているポイントは、どんなところでしょうか。

権藤:もっと合理的に、人が参加しやすいように間口を開いていけるといいですね。告知の仕方も回覧板や掲示板だけじゃなくて、TwitterやInstagramを活用してみたりとか。「ずっとこうしてきたから、こうしなきゃいけない」という既成概念を、ひとつずつ取っ払っていくことが必要だなと思っています。

企業と違って、町内会には競争原理が働かないんですよね。だから、組織自体にアップデートしていこうという力がかかりにくい。それで「来れる人だけでやればいい」という状態がずっと続いてきた結果として、今のシステムがあるなのかなと。

 

──それで、どんどん閉鎖的なコミュニティになってしまっていると。

髙橋:私たちは今、千駄ヶ谷の町内会の方々にお世話になっているのですが、そこに岡崎さんという方がいて、彼は年間250日以上を町内会活動に割いているんです。そして、岡崎さんみたいな地域活動におけるスーパーマンって、話を聞いてみると各地に結構いらっしゃるんです。

 

 

髙橋:その方々は本当に立派だし、「もう誰か給料を払ってあげて」って思うくらいの仕事をされているんですけど、町内会活動がその人たち頼りな状態になってしまうのは、組織としてはやっぱり不健康なんですよね。「来れる人だけでやればいい」という状態から、誰かに極端な負担が発生する構造が生まれているんです。

だから、もっと組織として情報をオープンにしていくこと、フルコミットじゃなくても小さく参加できるようにすることが、今の町内会には切実に必要だと感じます。現状やっている人たちの負担も減らすためにも。

 

──先ほど、町内会の必要性について「まちのインフラ的要素を担っている」とのコメントがありましたが、もう少し詳しくお伺いできますか。

権藤:防犯や防災など、有事の時に頼りになるというか、なくてはならない存在なんだなと感じています。何かあった時に真っ先に助け合えるのはご近所さんだし、たとえば、避難所の運営や平時の防災活動も町内会が担っていますし、緊急避難時の食料の配布も町内会単位なんですよ。

自分事として捉えても、頼りになる地域コミュニティがあるところに住みたいと思います。家族ができたり、長く定住を検討したりすると、よりそういう部分って大事になってきますよね。東日本大震災以来、そういう意識は誰しもが持ち始めているんじゃないかと思います。だから、今こそ町内会って、大きな価値を発揮できるんじゃないかなと。

 

 

髙橋:普段は見えにくいけど、水道や電気などのライフラインと同じくらい、防犯や防災って生活に必要な要素なんですよね。それを担ってきたのが町内会だったからこそ、担い手が減ってるのは真剣に考えなきゃいけない問題だと思います。

 

権藤:少し話を広げると、町内会の活動を通して地域に居場所ができてくることって、生活における豊かさにもつながってくると思うんです。「ヒトとつながりたい、認められたい」って、人間の根源的な欲求じゃないですか。

いま、都会にいる人たちって、ちょっと働きすぎているというか、働き疲れている人が多いと感じます。それはきっと、都会は多くのことが貨幣経済で補われているから。地域で取り組むはずの防犯や防災も、セキュリティ会社を頼ったり耐震強度の高いマンションに住んだりと、金銭的に補完している側面があって。子どもの見守りや高齢者の介護も同様ですよね。生活におけるさまざまなことを、お金で何とかしようとしているから、余計に「お金がなくちゃ、働かなきゃ」という気持ちに駆られているんじゃないかな。

「忙しいから、町内会の活動なんてとてもじゃないけど……」と思われるかもしれませんが、逆に参加することで「なんのためにこんなに忙しいんだろう?」と、自分の生活を見直すきっかけにもなり得る気がします。

 

 

髙橋:時代的にも、これからもっと地域に回帰していくと思っています。テレワークやフリーランスが一般的になって、会社という場に縛られない働き方が増えてくる一方で、やっぱり「どこかに属していたい、拠り所がほしい」という願いは、誰しも持つんじゃないかなと。その選択肢のひとつとして、町内会のような地縁があることは、とても健全だと思います。

だから、今こそ「自分のアイデンティティを、地域の中にも見出していきませんか?」という話がしやすいと思うんです。ライフにおける選択肢が「ワーク」や「マネー」に偏っている昨今において、「ローカルもいいですよ、楽しいですよ」ということを、クリエイティブ町内会の活動を通して伝えていきたいですね。

 

権藤:それに合わせて「働き方も自由なんだから、もっと町内会も自由でいいんだよね」ということを、これからも思想家として(笑)、言い続けていきたいと思います。

──今後のクリエイティブ町内会の活動について、何か具体的な目標などはありますか。

髙橋:活動のひとつとして「グッド・クリエイティブ町内会賞」の設立を計画しています。ノリとしては、グッドデザイン賞みたいなイメージで(笑)

 

権藤:私たちが勝手に出向いて、すごい活動をしている町内会の人たちを勝手に表彰して。その人に詳しく話を聞いて、記事にして広くシェアしつつ、アーカイブしていく予定です。

地域の課題には共通点があると思うんですよね。いろんな地域がバラバラにやっている活動を目に見える形でシェアしていくことで、町内のグッドプラクティスが自然と外に伝播していってくれたらいいな、と。

 

 

権藤:あと、私たち、岡崎さんを表彰したくてしょうがないんです(笑)。町内会の活動って大変なのに、誰からも褒められないんです。「ほんとすごいです、お疲れ様です」って労いたい。「そういう人たちの献身に、まちが支えられているんだよ」ってことを、皆に知ってもらいたいんですよね。

 

髙橋:この入居期間の3か月、現場を見てあらためて思ったのは、「まちづくりは短期間で答えを出すもんじゃない」ということでした。

思えば仕事でやっていたまちの再開発も、プロジェクトが10年20年単位なんですよね。だから、半年や1年くらいの下見で「これだ!」というパキっとした目標を立てちゃいけないんじゃないかと。「立てなくてもいい、やめないことに意味がある」ぐらいのゆるさを、このプロジェクトでは持っていたいと思っています。

 

権藤:町内会の活動を見えるようにして、いろんな発信手段を持つだけでも、結構大きな効果を生むと思っているんです。とてもいい活動をしているのに、PRがあまり上手じゃないことが多いので。

 

 

髙橋:そうやって情報をストックしていって、いつか「まちづくりや町内会活動について悩みがあるんだけど、どこに相談したらいいんだろう?」と思って調べたときに、ゆるい入り口としてクリエイティブ町内会が機能してくれたらいいなと思い描いています。

 

権藤:将来的には「広い意味での町内活動の集合知」みたいになってくれたらいいなと。それはきっと、まちづくりのハウツーとしてだけでなくて、たとえば引っ越しをする際に参照するような情報源にもなり得るはずで。

 

髙橋:スーパーがいくつあるとか、交通の便がいいとか、ハード面だけがまちの魅力じゃない。「どんな人が住んでる」とか、「どんな活動があるか」という要素も、そのまちの資産なんです。ただ、そういう部分って住んでみないと分からないことが多い。

クリエイティブ町内会で検索すれば「こんな人がいて、活動があるんだ」「ここに住んだら自分もおもしろいことができるかな」など、まちとの関わり方を想像できる……あくまで理想ですが、そんなプラットフォームにもなれるかもしれません。

 

 

──クリエイティブ町内会の活動を続けて、いいまち、いい町内会づくりの集合知が形成できていった先、どんな世の中になっているのが理想だと思われますか。

髙橋:既存の町内会のような存在は、もしかしたら無くなってるかもしれないですね。今のように明確に役割があるわけじゃなくて、「そこに住む人たちが、それぞれ自分たちにできることをやって、うまくまちが回っている」と素敵だな。

 

権藤:思いやりを持ってそれぞれが自立するやさしい世界、ですね。それでいて、近くに住む人たちの顔が、ちゃんと見える社会になってたらいいなと思います。自分のまちに対する愛着って、きっと「そこに暮らしている人たちの顔が見えている」状態から生まれてくるはずなので。

 

髙橋:「町内会がなくなるのが良し」という話ではなくて、「いい町内会づくり、いいまちづくりをしていったら、自然と無くてもいい状態になる」という社会が、なんとなく理想的なのかなと感じます。

 

権藤:そんな社会を目指して、少しでもいいアイデアを広められるように、クリエイティブ町内会という旗を、これから息長く振っていきたいと思います。

 

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WRITER

西山 武志

writer

埼玉県生まれ。大学在学中からライター業を始め、卒業後よりフリーランスとして活動。銭湯は見かけたら大体入る。パイプ椅子が並んでるような中華料理屋のあるお店通りが好き。

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