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2019.05.25 Sat

Room con-Animaの最終展示『部屋』

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5/19、Room con-Animaの最終展示『部屋』が終了しました。その展示の様子と、展示の裏側に込めた想いについて、Room con-Animaのプロジェクトリーダーの増田 麻耶が書き起こします。
Room con-Anima プロジェクト詳細|http://100banch.com/projects/15158/

INDEX

 Room con-Anima は当初、生命と非生命の境界を通して、相対的に人間について考えるというプロジェクトでした。しかしながらその過程で生命/非生命の枠組みにまだ入る前の層、私/他者のレイヤーに、「私」と人間について考えるための多くの要素が眠っているのではないかという議論になったのが、プロジェクトを開始して間もない頃のことです。

 よって今回の展示である『部屋』は、人間とは何か? 私たちは本当にひとりぼっちであったり、もしくは本当に共同体の中にいるということができるのか? 「私」と「他者」との境界面にあるものは何か? といった、問いを投げかけるための空間になりました。

 

展示の入り口には3つの動画が設置されており、仮想の家具がどのように人間と交流しているのかを抽象的に描いた動画を見ていただくことから展示はスタートします。その後、仮想的な部屋の中を鑑賞者はヘッドフォンをつけて歩き回りながら、部屋に構成された家具や地図などの関係を視覚的にそして聴覚的に読み解いていくことになります。

 

今回の展示の背景には多数の複雑に絡み合った問題群が存在します。身体としての人間/失われた共同体/自己肯定感の喪失など、実際に展示した3つの仮想の家具はそれぞれ独立したテーマを持っているようで、それらのテーマは水面下において強いつながりをもっています。

 そして私たちがいわゆるインタラクティブ作品や思索的なデザインの展示で多く用いられる「キャプション」/「展示台」/「実際にその場で動くもの」といった要素を展示から排除したのも、そのような複雑に絡み合った問題が、ある種要素を絞ったり強調したりすることによってプロパガンダとなってしまうことを懸念してのことでした。この点においてこの作品、はプロパガンダや近年見られるレクチャー・アートの潮流を断ち切り、鑑賞者の中で生まれる思考と、それを作家と交換することによる対話そのもの(=リレーション)へと重点をシフトを試みています。

 

「人間の一番最初の創造物は、思考である」

 ___ヨーゼフ・ボイス

 

 作品をきっかけにした対話を最終目標に据えた一方で、対話は想像以上に、心の準備と消化の時間を必要とする行為でもありました。「考えた様々なことを整理するのに時間を要するから、いつか別の機会に話させてほしい」と話してくれた方がいます。この言葉は、対話を即時的かつ即興的にその場から生まれる何かだと捉えていた筆者にとって、対話とその時間軸について考え直す機会となりました。

 素朴な疑問や風景、場所の空気感についてなど、その時でしか生まれなかった話が存在する時、その裏には時間をおいてからではないと語られえなかった別の話の存在があります。対話は、この両方の段階において発生しえます。

加えて面白いことに、記憶は発生してから右肩下がりに思い出す機会が減っていくのではなく、関連する物事に触れたときや似たような風景を見たときに、人生において点のように突発的な事象として再度浮かび上がってくることもあります。

 よって、私たちが今回経験させていただいた対話はもしかしたらそのほんの一部に過ぎず、その本当の部分は、未だに見えていないものなのかもしれません。

 

 対話は一方向でなく双方向的な動きであり、真の対話は、時に両者の変容を余儀なくさせる。

 

 最終的に私たちが作品に対して期待したのは、現代を生きる”私(=私たち)”の視点から同世代に対して取り繕いや誇張のない開かれた作品として存在すること。そして訪れた人が最初に持つであろう「批評するための鑑賞者」、作り手側である私たちが無意識に抱いているであろう「見せるための作者」というロールを超え、人として両者を開かざるをえないほどの強度を持って存在することの2点でした。

 これら2点は受け手によって達成された場合もあれば、残念ながら1点目、2点目ともに達成できていないと感じる場合もありました。題材として共感をしにくかった場合も考えられますが、一部では2点目の強度の部分に穴があったことにより、1点目の開示への道を閉ざしてしまったのだと思います。

 一方で多くの方が展示中~展示終了後、ご自身が大切にされている映画 、本や、思想について共有をしてくださったことをきっかけに、そこには新しい共同体が生まれました。この共同体は場所性を持たず、また共通のビジョンや神話をもっていないからこそ、現代における「わからなさ」だけで繋がることができた弱い共同体です。それでもこの共同体は、明確な指針や神を失い、人同士の絶望的な「わかりえない」領域に対峙しなければならない今、私たちが獲得しうる唯一の確かな領域でもあります。

 Room con-Animaはここで生まれた共同体を大切に、これからも展示を重ねることによって、時間を超えた対話を重ねていきます。

 

執筆:増田 麻耶(Room con-Anima)

撮影:小野 瑞希

 

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WRITER

Room con-Anima

増田 麻耶

リーダー

D-LOCの美術担当。慶應義塾大学SFC3年次より多摩美術大学メディア芸術学科に編入。脳科学/インタラクションデザインを学ぶ過程で、「感情の外部からの制御が可能になりうる今、人間の精神とは何か?」という問いに突き当たる。以降人間の一般化できない部分に興味を持ち、美術という観点から学んでいる。趣味はサーキットベンディング。