EVENT REPORT

2019.03.13 Wed

地方で起業を成功させるには?———
U35農山漁村ビジネスアイデアソン×農林水産省

  • #GARAGE Program

  • #トークイベント

  • #ワークショップ

年々過疎化が進んでいく日本の農山漁村地域。そこに眠る資源はもちろんのこと、伝統の地域産業で培われたノウハウや知識が蓄積されているにも関わらず、ビジネスとしてうまく活用できていないのが現状です。
そんな状況を打破するため、農林水産省が仕掛けるローカルビジネス支援アクセラレーションプログラム「INACOME(イナカム)」と100BANCHのコラボで、35歳未満を参加対象としたビジネスアイデアソンイベントを開催しました。

 

農林水産省 島本さん「農山漁村地域に関心を持つ方は増えているが、地域資源とうまく結びついていない状況」

 

今回のアイデアソンの目的は、既に農山漁村地域での企業プランをもった起業家に対し、参加者のアイデアやアドバイスを付加していき、彼ら・彼女たちのビジネスをブラッシュアップさせること。

地方での挑戦を目指す起業家たちと参加者との議論により、それぞれのビジネスアイデアはどのようにジャンプアップしたのでしょうか。その様子をレポートします。

 

今回、自身のビジネスプランを提案する起業家はこの5人。

 

・邦高 柚樹(Now Aquaponics!)

 

関西外国語大学在学中にオランダへ留学し、偶然出会ったアクアポニックスの概念に興味を持つ。現在不動産業界で働く中で得たスペース活用のノウハウとアクアポニックスを組み合わせ、社会問題を解決したいと考えている。

邦高「アクアポニックスという循環型の農法を浸透させることから始めようと考え、今はアート作品にして見せているが、今後は実用的な養殖法や農法として取り入れたい。地方ではどのように展開すれば受け入れてもらえるのか、アドバイスがほしい」

 

・岩本 涼(TeaRoom)

 

11年を超える裏千家茶道での茶歴を持ち、2017年には米国へ渡り、茶会を開催。米国にてITスタートアップ、リクルートなど、多数の大手・ベンチャー企業を経験。その後株式会社TeaRoomを創業。『日本の「茶」で人類の「和」を創るを掲げ』日本茶をはじめ、日本の伝統財を扱い、事業を展開している。

岩本「静岡にある工場を譲渡されることに。世の中に出回っていないプロダクトを作るために、茶葉の過程加程からではなく生産工程である農業から関わりたいが、どのような要素が必要か、話し合いたい」

 

・小野 ウどん(SAVE THE UDON)

 

うどんアーティスト・プロ出張専門讃岐うどん職人。4年間のうどん修業を経て、手打ちライブパフォーマンスを武器に出張業で独立。2017年、家を捨て車上生活&物々交換生活、うどんバーを開始。

小野「うどんは今、機械化と低単価化が進む業界の波にさらされている。手打ち文化が失われていくということは、日本の文化が失われていくことであり、世界と戦う武器を失っているということ。日本で、どうしたら手打ち文化を存続させていけるかを考えたい」

 

・竹村 賢人(椎茸祭)

 

自由が丘の和食料理屋の息子として生まれ、大学卒業後、NTTコミュニケーションズ入社。 渡印をきっかけに「椎茸を中心とした菜食だしをつくり おだしのうまみを世界に分けへだてなく広め世界平和の一助になる」というミッションを掲げる椎茸祭を設立。

竹村「インドではベジタリアン人口が多い。和食が世界でもてはやされる中で、宗教や慣習で必然的に広まらない地域がある。おいしさを共有できない歯がゆさを感じて、椎茸のおだしを作りはじめた。今は売れる商品の原材料を作るという、効率のよい生産方法を模索中」

 

・大山 貴子(Food Waste Chopping Partyプロジェクト)

 

米ボストンサフォーク大にてゲリラ農村留学やアフリカで人道支援に従事、卒業。ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、広告代理店コピーライターを経て、東新宿の実験トライアングルコミュニティスペース&自然派カフェ「みせるま」に参加。小さな街角スペースから発信する平和活動を食を通じて行っている。2017年にEarthommUnityを立ち上げ、サステイナブルな暮らしの提案を行う。

大山「環境の循環の流れを良くしながら経済価値を生み出していこうとするサーキュラエコノミーの観点で企業、行政、地域コミュニティと伴走しながら、どうしたらもっと地域が良くなるかのコンサルを現在行なっている。土から始まって土に還るような、地域の中で完結する経済循環の仕組みを参加者の皆さんと話し合いたい」

 

WORK1|起業家のWhyを掘り起こせ

まずは起業家のビジネスを知ることから始めます。

参加者はそれぞれ興味のある起業家の周りに座り、起業家たちに質問したいことをポスト・イットに一問ずつ書き込みます。

模造紙には、参加者全員が同じイメージを描けるよう、できるだけイラストで書いていきます。

起業家は、模造紙の上に集まった質問に好きな順番で答えていきます。

 

WORK2|既存のモデルを分析し尽くせ

WORK1でビジネスの概要を理解したら、ビジネスモデルを分析するため、配布された分析カードのミッションに従って起業家に対する質問をよく考えます。

ミッションの例:「顧客 MISSION 誰がこの事業のお客さんなのかはっきりさせろ!」

 

参加者は質問、起業家はそれに対し回答します。これを繰り返します。

起業家の回答は模造紙上へ書き込みます。

 

WORK3|アイデアを重ねてジャンプさせろ

起業家は現状のボトルネックであるポイントを参加者に伝え、それに対してのアイデアをWORK1と同様にポスト・イットに書いていきます。

 

出たアイデアに対してさらにアイデアを思いついたら、付箋を重ねてアイデアを付加します。

最後に起業家は模造紙上に集まったアイデアをまとめ、プレゼンに臨みます。

漁山農村地域で挑戦を挑みたい5人の起業家は、参加者のアイデアを取り込み、初期のアイデアからどのようにブラッシュアップさせたのでしょうか。

 

・竹村 賢人(椎茸祭)

「椎茸祭では原木での椎茸栽培に取り組んでいるのですが、市場で普及している菌床栽培に比べて収穫までに2年という長い年月がかかってしまいます。

 

そこで、2年間の栽培のプロセスをエンタメ化できないかと考えました。例えば、原木のまま椎茸が家に届いて、家で毎日成長の様子を観察できるようにする。

 

または、椎茸を栽培している場所で音楽フェスを開催して、踊りながら収穫するなども面白いなと。育てるプロセスや収穫という成果をお祭りとしてコンテンツ化して、栽培をもっと楽しくできたら嬉しいですね」

農林水産省 島本さん「都会に住んでいる人は2年かけて育てることも知らないはず。そのことからまず伝えていくといいと思います」

 

・小野 ウどん(SAVE THE UDON)

「手打ちうどんのエクササイズキットを販売します。

うどんを打つ人間がそもそも少ない業界の課題と、健康という現代社会のトレンドを合わせてエクササイズのパッケージとして売り出し、うどんにスポーツ性を持たせたら面白いと思いました」

「食べて痩せられて、ロックの思想もインストールできる」

 

・邦高 柚樹(Now Aquaponics!)

「アクアポニックスという知名度の低い農法をどうやって浸透させていくかというのが目下の課題です。

 

短期的には、アート作品を作って展示場に置かせてもらったり、家庭用など小さなサイズを企業の受付や児童館に置いてもらう活動を続け、まずはアクアポニックスに見慣れてもらいたいです。

 

中長期的には、コンクリートでも農地として認める法改正が行われる動きがあるので、アクアポニックスを第3の農法としてパッケージ化できるような動きを進めたいと思います」

「農家と競合するのではなく、農法が特殊なところでブランディングしていきたい」

 

・岩本 涼(TeaRoom)

「商品の生産だけでなく、体験の価値も提供する新しい形の工場を運営したいと考えています。

 

しかしスタートアップということで信用が少なく、なかなか地域住民から賛同を得られない状況です。

チームメンバーの瀬戸山さんが発表

 

そこでまず民意を獲得するための活動をします。実は耕作放棄されている茶畑から栄養価の高いほうじ茶を作ることができるので、その土地を蘇らせることで環境保全と地域活性化をアピールして、信用を得ていくことから始めたいと思います」

農林水産省 島本さん「地方ビジネスの問題が凝縮している話。支援していきたい」

 

・大山 貴子(Food Waste Chopping Partyプロジェクト)

「引き続き『土着文化のアップデート』をテーマとします。

まず高齢化が進んだ地域でヒアリングを行い、土着の人々の目線に合った若い人向けのコミュニティを作る。そこで双方のアイデアをマッチングさせます。

土に還る循環システムが何においても理想だと考えます。例えば土に還らないゴミは環境の負担になりますよね。消えゆく地域や地球そのものにとって大事なことは、土を使った循環をいかに成立させるかではないでしょうか。土着文化は地域にとっての答えだと思います。

 

新しい人と出会うことによって土着文化をアップデートさせ、地域を、ひいては地球を助ける活動を続けていきたいです」

  農林水産省の島本さん「100BANCHのコンセプトに合致する壮大なプロジェクトだと思う」

最後に、農林水産省INACOME担当島本さんから、3つのワークを通じて初期のアイデアから最も変化があったアイデアの発表がありました。

見事最優秀賞を獲得したのは、新しい農法であるアクアポニックスの普及を推進する邦高柚樹さん。

邦高さん「今回の議論を活かして、今後もアイデアのブラッシュアップを重ねていきたい」

 

島本さんは邦高さんのアイデアについて、「家庭用などで身近に見てもらうところから、実際に農産物・水産物の生産まで大きく発想を拡げられていた。最終的にどこに結びつけたいのか、わかりやすかった」と講評しました。

午後はINACOMEに採択された全国の起業家たちが事業を10分間でプレゼンするファイナリストプレゼン会が行われました。

 

全国の農村漁村地域で事業を行う10人の起業家たちがそれぞれ活動を紹介し、それに対して審査員のベンチャーキャピタリストや銀行関係者から鋭い質問が飛び交いました。

 

午前の部で最優勝を飾った邦高柚樹さんも特別枠でこのプレゼンに参加をし、Aquaponicsの可能性。午前の部で議論がなされた、これまでのアート的な見せ方以外の食糧生産プラントとしてのAquaponicsの有用性をプレゼンしました。

審査員からは、水産養殖と水耕栽培を同時にやることのコスト面の指摘があった一方で、テクノロジーを駆使した新しい「農業」に若い人が参入するきっかけが作れるのではというポジティブな意見も頂けました。

今回優勝を飾ったのは、合同会社 南信州米俵保存会の酒井裕司さん。「わらしべ長者プロジェクト」という名の下、農家さんから稲藁を買取り、それを縄細工の技術をつかって商品化。今では相撲の土俵まで制作の依頼を受けています。地元の伝統技術を活かしつつ、地方に雇用と産業を創出する点が高く評価がされました。

 

今回のワークを経て、5人の若き起業家はどのようにアイデアを実行していくのでしょうか。農山漁村地域でのこれからの活躍に期待が高まります。

 

100BANCHでは、今後も外部機関と連携してビジネスのコラボレーションを推進し、新たな化学反応を生み続けていきます。今後のイベントにも乞うご期待ください。

 

100BANCH メンバーが参加するGarage Program

 

プロジェクトの実験報告が終わると、参加者は登壇者へ質問したり2FのGARAGEの見学したり、事務局メンバーにGARAGE Program応募の質問をしたりと、それぞれが思い思いに100BANCHの取り組みを知る時間となりました。

 

次回は【GARAGE Program応募者向け見学説明会&プロジェクト成果報告会】を3月27日(水)に開催します。

URL|http://100banch.com/events/15696/

各プロジェクトの活動の様子を知りたい方や、GARAGE Programへの応募を考えている方は是非ご参加ください!

WRITER

100BANCH編集部

芦沢 恵利香

大手IT企業でデジタルアーカイブソリューション展開を経験後、動画メディアベンチャーにてコンテンツ企画を担当。人々の日常に焦点を当て執筆活動も行う。学生時代はフィンランド留学ブログ「Run the World」を運営。横須賀市出身。