EVENT REPORT

2019.01.11 Fri

「日本の未来は移民が支える?」
今さら聞けない移民問題と外国人雇用のリアルな現状

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あなたが住んでいるマンション、近くの店、学校、職場、取引先、ママ友、など身近に外国人が増える。そんな未来が近々やってくることを知っていますか?

2018年12月8日、国会で外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理及び難民認定法改正案(以下「入管法」)が可決されました。日本は2019年4月から外国人労働者を大量に受け入れようとしています。

移民問題が連日ニュースで騒がれていても、「どこか他人事で身近な生活に影響があるとはなかなか考えにくい」 「身近なことだと思っていてもどう対処していいかわからない」と考えている方は多いのではないでしょうか? 

そんな移民問題について、100BANCHで外国人雇用や外国人への日本語教育について取り組む2つのプロジェクト「NIHONGO」と「LIGHTENED」と一緒に視野を広げていこうと試みるイベント「今さら聞けない移民問題 〜外国人雇用のリアルな現状+α〜」が12月13日に100BANCHで開催されました。

平日にも関わらず60人もの参加者が集まり、注目の高さを感じるこのイベントを100BANCH編集部でもあるライターの船寄がレポートします。

登壇者は日本語が理解できない言語難民に新しい日本語教育を提供するプロジェクト「NIHONGO」の永野将司さんと、高度外国人材に対して日本企業の魅力を発信するプロジェクト「LIGHTENED」の奥田亮史さんです。

このイベントは、入管法の審議で盛り上がりを見せる2018年11月、外国人労働者の未来を見つめる永野さんと奥田さんの対談「危機感を持つことが前進への第一歩——移民が引き起こす問題と日本社会の未来」をきっかけに生まれました。

リーダーインタビュー

NIHONGO・永野将司 × LIGHTENED・奥田亮史

危機感を持つことが前進への第一歩——移民が引き起こす問題と日本社会の未来

http://100banch.com/magazine/13956/

 

イベント前半は永野さんと奥田さんによるトークセッション。「そもそも日本にいる外国人って?」「なぜ突然移民問題?」「今回の法案ってどうなっているの?」など、今さら聞けない基本知識から、意外と知らないようなディープな内容まで紹介し、移民問題について考えました。

 

はじめに「今、在日外国人は全国に256万人いらっしゃいます」(平成29年末現在)と永野さん。ちなみに、この数字は名古屋市と同等の人口だと解説します。

永野:在日外国人は日本に滞在する目的別に在留資格を取得しています。日本に住んでいる外国人のうち約半数は何年にも渡って日本で暮らしている人たちです。例えば永住許可を得た「永住者」や、日本人の配偶者・実子などの「日本人の配偶者等」日系三世、外国人配偶者の連れ子等である「定住者」などです。

 

登壇した「NIHONGO」の永野将司

 

いわゆる外国人労働者としては、技能研修のためのビザである「技能実習生」や通訳や語学講師等の「技術・人文知識・国際業務」が多いです。一方で大学・専門学校、日本語学校等の学生である「留学」のビザ取得者は原則として就労は不可能ですが、現実的には大半の留学生は「資格外活動許可」を取得して働いています。

このような状況の中、なぜ突然日本で移民問題が賑わっているのでしょうか?

 

奥田:この問題は日本の人手不足の進行が原因となります。ここ数年、日本人の人口減や高齢化の影響で有効求人倍率は上昇し、欠員率や人手不足による倒産も増えています。今後さらに日本人の人口は減り続け、2017年に1億2600万人だった人口は2030年には1億1600万人、2060年には8800万人になると予測されています。

今から12年後の2030年には需要に対して644万人の労働人材の不足が発生し、産業別ではサービス・医療・福祉の分野が、また地域では東京都、神奈川県が特に深刻な人手不足に陥ると予測されています。この644万人の人手不足を補う対策として政府は「働く女性を増やす」「働くシニアを増やす」「生産性を上げる」、そして「働く外国人を増やす」と4つの対策を掲げています。

統計データを用いた推計によると2030年までに81万人もの外国人労働者を増やす必要があります。しかしながら、あまり多くの人がこの状況に気付いていないことに私は危機感を持っています。

 

登壇した「LIGHTENED」の奥田亮史

 

では、この先、実際に日本で多くの外国人が増加していくのでしょうか?

2017年11月に施行された技能実習適正化法で、外国人技能実習生(※)の対象職種に介護が加わりました。政府は1年間で5000人の介護系の技能実習生を受け入れる体制を取りましたが、実際には247人しか来ませんでした。

※外国人技能実習生……日本の企業が中国やベトナム、インドネシアなどの若者を技能実習生として受け入れ、彼らが実務を通じて日本の高い技術を修得するための制度。

 

永野:現在の法律では、外国人が介護の技能実習生として日本に入国するためにはN1〜N5と5段階ある日本語能力試験においてN4レベル(基本的な日本語を理解することができる)を合格する必要があります。さらに、彼らが入国して1年後には次に難しい段階のN3レベル(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる)に合格しなければビザの更新ができません。つまり、合格できなければ帰国しなくてはいけないのです。しかし、技能実習生として働きながら1年でN3に合格することは非常に難しい状況にあります。

 

 

加えて、今年政府は日系ブラジル人4世を積極的に受け入れる制度を設け、年間4000人の来日を見込んでいましたが、実際にビザの発給を受けた人数は3人だったそうです。

 

永野:入管法や移民問題で盛り上がり「多くの外国人が日本に来たらどうしよう」「その場合、外国人の人権はどうなるんだ」など議論が進んでいますが、「そもそも外国人が日本に来るのか?」という意見が上がらなかったことを不思議に思います。

 

奥田:どんどん外国人が増えるという見込みだけが先行していて、実際に「外国人は増えていくのか?」まで議論している場面がないように思います。

 

 

イベントではベトナム在住で技能実習生の日本語指導をおこなう日本語教師の宮本勇樹さんと中継を結び、現地における技能実習生の状況を伝えていただきました。

 

宮本:入管法が可決し日本政府が外国人の受入上限数を想定する一方で、私個人としてはそこまで急激に外国人労働者が日本に増えることはないと考えています。現状、技能実習生にしても箸にも棒にもかからないような職種がいくつか存在しますし、特に介護分野は相当厳しいと思います。

当然、働く側にも仕事を選ぶ権利があり、その前に働く国を選ぶ権利を持っているので、このままの状況だと日本が働く国として選ばれる可能性はほぼないように感じます。

 

永野:介護分野でいうと、最近ベトナム人は台湾に注目しています。日本の技能実習生は最長で3年しか働くことができないのに(※)、台湾では最長で12年まで働くことができます。加えて日本では禁止されている家族滞在が台湾では認められています。さらに、台湾で働くことで中国語も学べるため、まだまだ発展著しい中国への進出も視野に入れられるというメリットがあります。最近では韓国にも注目度が高まっている状況です。

※新制度では5年までの可能になった

 

 

宮本:この先、日本はさらに人手不足が深刻化し、多くの外国人に頼らなくてはならない社会になると予想されます。それにも関わらず、技能実習生がどのような教育を受け、どのように日本語を学んでいるのかすら知らない日本の企業や技能実習生の監理団体が多いと感じます。

本当に日本が長期的な視野で外国人人材を受け入れていくのであれば、受け入れ企業が選ぶのではなく、外国人人材に選んでもらえる企業でなければならないと考えています。

 

後半では外国人留学生にフォーカスしたワークショップを実施。

日本の移民問題についてより深く考えるために、参加者が外国人留学生の立場になり、彼らの生活状況や課題を発見しました。

ワークショップは日本の外国人留学生のなかでも多いとされる以下のような「日本語学校に通うケース」を題材にスタート。

 

あなた (20歳、ベトナム人)

・高校を卒業後に来日して、現在は新宿にある日本語学校に平日の9時から12時半まで通っています。来年の学費のためには毎月6万円の貯金が必要です。

・(学費や渡航費など)来日するために両親の住む実家を担保にした借金が200万円あり、毎月3万円の返済が必要です。

・両親は「日本でお金を稼いで送金して欲しい」とお願いされ毎月2万円の仕送りを母国にしています。

・来日して半年経ちますが日本語能力は低く、日常会話も満足にできません。もちろん英語も話せません。

・今の悩みは来年の学費を自分で稼ぐことです。学費を払わなければビザの更新ができないので……。

 

各参加者は家賃や食費や光熱費などに加えて学費や仕送り、借金返済が必要な“あなた”の生活を想像し、実際に1か月で必要になる金額を考えます。その後、その金額をグループで共有し意見をまとめました。

 

 

多くのグループは「毎月20〜21万円くらいは必要」と発表するなか、最も金額が低かったグループは「月に15万6千円は必要」と話し、最も金額が高かったグループは「月に24万円は必要」と発表しました。

各グループの考えを踏まえて、永野さんは以下のように話します。

 

永野:私が想定した金額も多くのグループと一緒で毎月20万円前後は必要になると考えています。内訳は「家賃:3万円」「食費:2万円」「光熱費:1万円」「雑費:1万円」「携帯電話代:1万円」「交通費:1万円」「学費:6万円」「借金返済:3万円」「母国への送金:2万円」の計20万円です。ちなみに、家賃の3万円は寮生活を想定した金額であり、“あなた”の状況ではクレジットカードは作れず格安スマホの契約はできないため携帯電話代は1万円としています。

 

 

では、毎月20万円を稼ぐために、“あなた”は1日にいくら稼ぐ必要があるのでしょうか。

参加者は、“あなた”が9時から12時半まで学校に通いつつ、1日に「1万円」を稼ぐ平日のスケジュールを考えました。

 

「居酒屋で20時から翌5時までアルバイトをします」「17時から23時まで飲食店でアルバイトをして、その後24時から翌3時までコンビニでアルバイトをします」など、どのグループも学校と睡眠以外はほぼアルバイトで埋まってしまうことに気付き、“あなた”の置かれている状況が非常に苦しことに驚いていました。

 

 

永野:実は外国人留学生をアルバイトで雇う場合、1週28時間という上限があります。その上限を踏まえると、各グループが考えた“あなた”のスケジュールは成り立たないと思います。また、日本語もままならない外国人留学生は、居酒屋やコンビニで働くことさえできず、配送の仕分けや弁当工場で盛り付けるなど、普段日本人が見かけない場所に通い、最低賃金で働いくことが多いです。このような苦しい現状が外国人留学生の生活を追い詰めています。

 

奥田:1日中、働き詰めで学校以外に学べる時間がない。そんな外国人留学生における負のスパイラルを打破するポイントは2つあると永野さんと私は考えています。

 

ひとつは日本語教育を抜本的に改革し、彼らが日本語を使って働ける状況をつくること。もうひとつは、単純労働ではなくオフィスワークの就業経験を積んでもらうことにより、彼らと受け入れる日本企業のミスマッチをなくしていくことです。それを実現するために私は「LIGHTENED」を通して、そして永野さんは「NIHONGO」を通して、日本で生活する外国人留学生が生きやすい環境をこれからも目指していきたいと考えています。

 

 

今回のイベントを通して参加者は移民問題の基本的な知識や考えとともに、外国人労働者や留学生の実態や、今後の動向を知る時間となったのではないでしょうか。

入管法が12月8日に可決され、2019年4月にはこの法案が実施されます。日本政府はこの法案の開始から5年間で34万人もの外国人労働者を受け入れようとしています。

果たしてどのような未来が待ち受けているのでしょうか?

永野さんと奥田さんは、多様性のある組織づくりという切り口から「移民問題」についてより理解を深めるイベントを1月31日(木)に計画しています。日程・内容が決まり次第、100BANCHのホームページでお知らせいたしますので、興味のある方はぜひ参加をご検討ください!

WRITER

100BANCH編集部

船寄 洋之

writer / gallery / coffee

鳥取県生まれ。アパレルメーカー、出版社を経て、横浜・反町にH.Funayose galleryをオープン。ギャラリー運営のほか、ライター業や出張コーヒースタンドもおこなう。