LEADER INTERVIEW

2018.12.19 Wed

Teenet 柳川優稀:高校生が考える次世代の教育、中高生の学ぶモチベーションを高める「学びと実践」の一本化

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学校の用事があって少し遅れてやってきた彼は、何度も謝りながら、大人たちが居並ぶテーブルにつきました。これからの時間に対する不安からか、どこかそわそわしているよう。「高校はどのあたりにあるの?」と聞いてみると、浦安との答え。「BANCH(バンチ)からはちょっと遠いですね」と笑う顔は、もはや高校生のそれではなく、この100BANCHというスペースを愛称で呼ぶほどに通い詰める、未来を育む若き起業家でした。

Teenet(ティーネット)を率いる柳川優稀(やながわ・ゆうき)さん、高校2年生。中学生からプログラミングの技術を習得し、ITスタートアップでのインターンやアプリ開発を経て、自らの事業を立ち上げました。主にプログラミングなどの初学者向け教材を開発し、修了生はTeenetが受託した業務で開発経験を積みます。その後、登録クリエイターになると、インターン先の斡旋や業務マッチングが行われます。言わば、ステップアップ式の実践型スクール。

IT関連の学習サポート事業は先行者がいる中で、Teenetは名前の通りに10代の学習者を念頭に置いています。その出発点には、柳川さん自身の苦い体験と、そこから得た学びが生かされていました。

──Teenetの学びのステップは、どういったものなんでしょうか。

今までは、基本的にプログラミング教室を行なっていました。Scratchやブロックベースのプログラミングを勉強したあとに、Ozobotを使ってJavaScriptを学びます。他にもウェブデザインやRuby on Railsなど実務で使うプログラミング言語も勉強していく育成の過程をとっていました。

この過程をクリアした人は、次のステップである「Teenet Creators」に進むことができ、クリエイター同士でコミュニティを作って、プロジェクトや作品制作を行います。僕らとしては、コミュニティの交流を促したり、実際に制作資金を提供したりします。

 

 

──制作資金の調達は、どうしていますか。
現実的に資金を提供できる体力はまだありませんから、インターン先や業務の案件提供を斡旋することで、実績と資金を同時に得てもらいたいと考えています。案件から得た成果物、あるいは自主的に制作したものを発表する場としてのリアルイベントも企画中です。また、社内では「イノベーションキャンプ」というビジネスアイデアなどを考えるイベントも実施します。

10代のうちに、アイデア出しからコンセプトメイキング、それに基づくプロトタイピングや開発、さらにはマネタイズまでの全てを体験し、卒業してもらうのが僕らの目標だと思っています。

さらに今後は、Teenetとしてどういったものをつくり、どういうふうに社会へインパクトを与えたのかを、ひとつのポートフォリオとしてアウトプットする方法を考えています。とはいえ、まだ卒業生が出ていないので、発表媒体も方法も構想中ですね。

 

──Teenetの事業モデルを思いついたきっかけはあったんでしょうか。
高1の冬あたりに、それまで続けてきたスタートアップのインターンを辞めて、携わってきた友人のプロジェクトでも手が空いてきたので、今度は自分で新しいプロジェクトを立てようと思いました。

もともとTeenetではプログラミングを勉強するためのソフトを作っていたのですが、勉強するだけではなく、育ったプログラマーが技術を応用できる環境があるといいな、と考えていました。今まで作っていたソフトウェア開発は他者に譲ることにして、僕としては勉強し終えた人たちを巻き込むほうに、一旦は舵を切って活動を始めたんです。

 

 

僕も今のようにプログラマーとして開発に携わるまで、実はかなり遠回りしてきた自覚があります。そんな実体験から、学習と実践のための一本道を通すことで、普段の学校生活や部活動で忙しくて割ける時間が少ない人でも、もっと気軽に取り組めるプロジェクトが可能なのではないかと考えました。

ただ、先ほど述べたような学習機会の提供から、リアルイベントの開催までを1つの団体で行うのは体力がとても要りますし、限界も感じていました。そこで、すでにプログラミング教室とキャリア教室を展開なさっていたNPO法人ハックジャパンと事業を統合させることで、よりハイクオリティなものを提供しようと話がまとまり、今に至ります。

 

──学びの教材や料金体系は?
最初はすべて僕を含めたTeenetのメンバーで制作し、ほぼ無償で受講できる教室と教材を提供していました。費用がかかるものについても、1講座500円のような低価格で受けられるものです。現在は、これをベースにした新しいプラットフォームを企画中で、こちらも低価格で提供する予定です。(※2018年11月取材現在)そこも、10代のクリエイター候補が取り組めることが念頭にあるからですね。

──先ほど、ご自身の活動を「遠回りしてきた」と振り返っていましたが、プログラミングに出会ったきっかけは?

ちょっとさかのぼりますが、僕は小4のときに図書館でウォルト・ディズニーの伝記を読んで「エンターテインメントってすごいなぁ」と思ったんです。ディズニーが好きになって、中学受験で進学先を選ぶときに、家からもディズニーランドからも近い……という軽い気持ちで、浦安にある中高一環の私立高校に決めました。

学校の部活は「ディズニーの楽曲を吹奏楽部で演奏したい!」と勢いのままに入部して、週7日活動するような日々を送っていました。ただ、いろいろうまくいかないこともあり、8月には退部することにしたんです。

そのとき、僕は運動に長けているわけでもないし、勉強の成績も真ん中あたりで、誰かに「僕はこれができます」と言えるものが浮かばなかった。それこそ吹奏楽ばかりをしていたので、辞めてしまったら本当に自分が「無」になったというか……。

 

──無になる、という感覚は、強い焦りや寂しさを生みますね。
そこで思い出したのが、以前から興味はあったプログラミングでした。両親から買ってもらっていたiPhoneで使えるアプリが作れたら面白いよなぁ、と思ったんです。しかも、App Storeなら年間約1万円払えば、世界中の人と肩を並べてアプリをリリースできる。それらのアプリで、無限にスマートフォンの可能性が拡張できるのもすごいと感じました。そんな素朴な理由で、中1の終わりぐらいから勉強を始めたんです。

 

 

──勉強は順調だったんですか?
いえ、App Storeへのリリースも、一度は挫折していて(笑)。アプリを作るのに必要な知識が足りないままで、プログラミングへの向き合い方も中途半端になってしまって……。

それで、中2の春ぐらいに、Life is Tech!というプログラミング教室が主催するキャンプを目にしたんです。当時は大人向けの講座が多い中で、中高生を対象にしたものもあり、参加してみることにしました。

実は、僕がそれまで勉強していたのがJavaで、iPhone向けアプリを作る言語ではなかったというのも、そのときに知りました。Javaで学んできたことをSwiftで勉強し直して、Xcodeを使ってスマホの画面にアウトプットすることを覚えたら、すいすいと技術も身についていきました。中3の頃には「入試の過去問を解いた点数の平均点を、オンライン上で見せ合える」というアプリを作ることができました。

 

──スタートアップでのインターンは、いつ頃から参加されたんですか。
中3の終わりです。100BANCHにも入居しているYokiの東出風馬と知り合って、「何か手伝えることない?」と声をかけたんです。プログラミングや技術まわりのアドバイザーのような役割を担っているうちに交流が続きました。

そんなときに、YokiがリクルートさんのTECH LAB PAAKというインキュベーター(起業家を支援する制度)に入ることができました。そこで、「仕事としてプログラミングをしないか」とキャプチャーエイトの高野勇斗さんに勧められ、有給のインターンシップをさせてもらうことになったんです。そこで100BANCHに入居するきっかけになった『Run your hotel』という宿泊所を運営できるサービスの開発に携わることになりました。

──「無」になった柳川さんにとって、まさにプログラミングが新しいパートナーになっていった。性に合ったのでしょうね。

もともとの性格で「なぜ、これができているのだろう?」と、仕組みを調べたりするのが好きだったのかもしれないです。プログラミングでも新しい技術に出合うと、どういった言語やプロセスで動いているのか、気になります。中2から生物部に入っていたのですが、そこでも課題研究をする過程で「ゴールに対してどういったプロセスで実験をしていけば発見できるのか」を考え、学びました。いまの活動にもすごく役に立っていると感じています。

 

──Teenetの今後として、同業他社もある中で、サービスの差別化をいかに図っていく予定ですか。
僕が通っていたプログラミング教室をはじめ、エンターテインメントとして多くの人に楽しくプログラミングを勉強してもらうというアプローチを取ってらっしゃるサービスがあります。それをきっかけに僕はプログラミングができるようになって、もっと本気でプロダクトを作っていきたいという考えに変わっていきました。Teenetはそれを反映していますから、志向性や客層のアプローチが異なると考えています。

僕たちはエンターテインメントというよりは、職業訓練校のように「どうしてもやりたいんだ!」という思いを持つ人をターゲットにした場をつくりたい。Teenetの考え方は世の中ではまだマイナーかもしれないですが、僕はこれからメジャーになっていくのではないかと見ています。

 

 

──「Teenetの考え方」というのは?
仕事ベースで実践し、世の中から影響を受けて成長していく教育方法」ということです。プログラミング教室を卒業してエンジニアになった方が、現場でなかなかフィットできないということも耳にします。ただ、プログラマーが求められ、これから増えていく中においても、学習と実践の間をつなぐような機会の提供は、もっと必要になってくると思うんです。

2020年あたりに入試改革があり、今で言うAO入試に近いような仕組みがだんだん取り入れられていくと、先日ある方から伺いました。その時代において、学校で勉強しただけでは部活動の頑張りくらいしか、個人のポートフォリオには盛り込みにくいですよね。だからこそ、もっと気軽に課外活動に参加できるような考え方やサポートが、近い未来に必要になってくると見ています。

 

 

昔は、勉強が「何者かになるための段階」として概念的に捉えられてきたと思います。小中学校は義務教育ですが、高校は「とりあえず行くもの」になり、僕もこれから大学生になるわけですが、大学も同様の状態になっているのではないでしょうか。「何を自分はやりたいんだろう?」と思いながら大学へ行くのは、やはり本質的な学びを得られない、つまり非効率的・非論理的だとは感じます。

それならば、まずは世の中と接点を持ってみて自分の不足を知り、「僕はやりたいことがあり、そのために学ばなければいけない」という強い意志を持って進路を選ぶ中高生が増えたほうがいいのではないかと。少なくとも僕の次の世代、あるいは次の次の世代では絶対に必要だと感じますし、今後は学ぶモチベーションを持ってもらうことが大事になるはずだと、当事者のひとりとしても思います。

 

──柳川さんは「遠回り」をした分、時間はかかったけれど、今の道に出会えた。それと同じようなことを、より効率的に、モチベーション高く、進める人を増やしたいと。
僕と同じ境遇に遭わざるを得ない人は、結構いるはずです。そういうときにつまずいてほしくない。それに、人間は失敗を繰り返さないでなんぼの生き物なんじゃないかなと思うので、実際に僕がその道をたどってきているのだから、僕なりの羅針盤を手渡してあげればいいのではないかと。現状、Teenetはプログラミングが主体ですが、今後は写真や絵画など、異なるアプローチにも拡大していきたいです。

 

■柳川さん登壇イベント
サイエンスキャッスル2018
日程:
 2018年12月23日(日)11:30-17:00(予定)
 2018年12月24日(月・祝)9:30-17:00(予定)
場所:神田女学園中学校高等学校(〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2丁目3−6)

 

WRITER

長谷川 賢人

writer

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。