EVENT REPORT

2018.11.08 Thu

新しい価値はどこから生まれるのか?
100BANCHの取り組みから見えてきた「未来の兆し」

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先日のパナソニック創業100周年記念「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」において、セミナー「見えてきた未来の兆し~U35とともに未来をつくる実験区100BANCHの取り組みから~」が開催されました。

セミナーでは、100BANCHを立ち上げたパナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーの3社の代表やプロジェクトを進めるメンバーが登壇。100BANCHの設計思想や現場の舞台裏を紹介しつつ、1年間の活動を通じて見えてきた未来の兆しとその実現に向けた鍵を探りました。

 

司会を務めたのは、100BANCHの運営に携わる、パナソニック株式会社 コーポレート戦略本部の則武 里恵さん(右)と、株式会社ロフトワーク Layout Unitの松井 創さん(左)。

 

はじめに100BANCHの取り組みを紹介。2017年7月7日にスタートした100BANCHは、これまでに約330件のGarage Projectへの応募があり、現在87プロジェクトが活動中です。

 

当日は260人を超える参加者があり、このセミナーの注目度がうかがえます。

続いて、100BANCHを立ち上げた3社の代表として、株式会社ロフトワーク 代表取締役の林 千晶さん、カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長の楠本 修二郎さん、そしてパナソニック株式会社 コーポレート戦略本部 経営企画部の高橋 大輔さんが登壇。

パナソニック株式会社 高橋 大輔さん(左)、カフェ・カンパニー株式会社 楠本 修二郎さん(中央)、株式会社ロフトワーク 林 千晶さん(右)

 

100BANCHの活動を通して生まれた「100BANCHの7原則」をもとにクロストークを展開しました。

 

100BANCHの7原則

 

① たった1人でも応援したら

② 思う存分できる場

③ 若者が未来をつくる

④ 短期集中同時多発

⑤ 常識にとらわれない

⑥ 視点が交差し混じり変化する

⑦ Willから未来はつくられる

 

楠本さんは7原則の「①たった1人でも応援したら」にフォーカス。100BANCHのGarage Projectの入居は、メンター(審査員)が1人でも応募プロジェクトに共感し「このプロジェクトを受け持ちたい」と手を挙げれば、採択されるというルールがあります。

 

楠本:僕が20年前くらいに創業したときは自分のアイデアを誰も理解してくれず、非常に孤独でした。そんなときに、ある友人が「絶対に応援する」と言ってくれて、とてもうれしかったことを覚えています。その、「たった1人の応援がどれだけ勇気付けられるか」を僕は知っているので、その恩返しを100BANCHでやっていきたいと思っています。

 

林:ロフトワークを立ち上げるときも、私のビジョンは共感されず多くの投資家の反対に合いました。でも、伊藤 穰一さん(MIT Media Lab 所長)が「そのアイデア、面白いよ」と応援してくれて、個人で投資をしてくれたんです。1人でも「それ、いいよ」って背中を押すことが、どれほど人の力になるのかをその経験から学びました。

 

 

 

伝統下着”ふんどし”を未来に伝えるプロジェクト「FHP〜Fundoshi Hack Project〜」の星野 雄三さんが登壇(右)。このプロジェクトは、メンターの落合陽一さんの一声で採択が決まりました。

 

林:みんなで何かを選ぼうとすると、どれだけリスクを見つけられるかの競い合いになってしまいます。そうなると、世の中でよいと言われるものしか生まれない。でも、ひとりの判断だけで採択できるとなると、審査員はプロジェクトのよい部分をあげて、採用合戦がはじまるんです。「どうすれば、前向きな意見が生まれるか」「どうすれば、より挑戦的なものが得られるか」という方向性を設計して採択ルールを設計した点は、振り返ると非常に効果的だったと思います。

 

高橋:大企業では多くのコンセンサスを取らないと物事が進まないない状況にあります。100BANCHの「たった1人でも応援したら」という原理で、いろいろな事が前向きに進んでいる姿は非常に驚きでした。

 

「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」の100BANCHブースに参加するプロジェクトの紹介もおこなわれました。

 

各プロジェクトメンバーの紹介を終えると、「100BANCHは良いかたちのピアプレッシャーが働いている場所」だと林さんがコメントします。

 

林:100BANCHメンバーは互いにプレッシャーを掛け合いつつ、助け合いながら成長する姿が印象的です。

 

楠本:ポジティブの掛け合わせで、どんどん成長していますよね。

 

林:他にも、彼らは環境についての意識が強いことも印象的です。先日、オランダ・アムステルダムの人たちが「我々の世代は世界がどれだけ違うかがビジネスになる時代だった。でも、これからの若い世代は同じ世界を見ているから、コミュニケーションはもっと世界につながっていく」と話していました。100BANCHメンバーも含め、他の国の若者たちは「どうやったら環境にいい食べ物や仕組みが作れるか」と本気で考えています。

 

楠本:「持たない」という発想も持っていますよね。昔の「いい車に乗って、いい家に住んで、美味しいものを食べて…」という世代とは、カッコよさの意味や価値観が全く違うからね。

 

林:若い世代はだからといって、食べないわけでも、暮らさないわけでも、買わないわけでもない。ただ、かたちが変わっていくだけだと思います。これからは何かを所有し固定する時代から、可動の時代になり、その可動域も10年など長いスパンではなく、1日単位で動かし繋いでいく感覚でビジネスが成り立っていく。100BANCHメンバーを見ていて、そう思います。

 

高橋:次の100年に向けて企業はどのように社会貢献ができるのかと考えたときに、パナソニックはモノからコトへと変化している時代の流れを本当の意味で理解していなかったように思います。そのような状況のなか、モノからコトへ価値観を変化させている100BANCHの活動を直に見ることだけでも、パナソニックにとっては大きな価値があると考えています。

他にも、100BANCHの活動を通して見えてきた「6つの領域」などを紹介しながら、3人でそれぞれの意見を交わしました。

セミナー後半では、「食の原点と未来」をテーマに、楠本さんと100BANCHで活動する「ECOLOGGIE」の葦苅 晟矢さんと、「The Herbal Hub to nourish our life.」の新田 理恵さんのクロストークを展開。

 

 

ECOLOGGIE

コオロギの大量繁殖技術と養魚飼料としての普及で食料問題を解決するプロジェクト

http://100banch.com/projects/ecologgie/

 

The Herbal Hub to nourish our life.

日本の在来種である薬草を日常に取り入れることによって、健やかな体へと導こうというプロジェクト

http://100banch.com/projects/the-herbal-hub-to-nourish-our-life/

新田:人類が文明を持つもっと前から、チンパンジーやゴリラは薬草を使う習慣があったと言われています。私たちが頭で考えているよりも根源的な本能で「よりよく生きたい」と考える気持ちが人間にはあるんだなと、薬草のプロジェクトを通して感じています。この先、薬草を通して、もう一度人間の生きる力を取り戻したいと思います。

 

葦苅:薬草と同じように、昆虫食も新しい概念ではなく、私たち人類が昔から食べているものです。その昔からある昆虫食の価値をアップデートをしたいと考えています。

楠本:最近はガストロノミー(美食術、美食学)の概念が変わってきています。1970年代くらいは、例えば「フランス料理をどうやって美味しく食べられるか」というガストロノミーの10箇条があり、それは調理方法や従業員教育などが記されていました。一方、現在3年連続で予約が取れないデンマーク・コペンハーゲンにあるレストラン「noma」が作ったガストロノミーの10箇条には「いかに美味しく作るか」という項目はひとつもありません。「どれだけ健康に寄与するか」「どれだけ地域の材料を食べるか」など、価値が美食から概念食に切り替わっています。昆虫食や薬草も含め、地球全体の食の現状が原始的に回帰しているような気がします。

 

他にも、「温かくて柔らかいテクノロジー」をテーマに林さんと、100BANCHで活動するプロジェクト「RGB_Light」の河野 未彩さん、「Solidknit」の廣瀬 悠一さんのクロストークがおこなわれました。

 

 

RGB_Light

光の3原色を利用して、ワクワクするような照明体験を提供するプロジェクト

http://100banch.com/projects/rgb_light/

 

Solidknit

中実な立体物を編む「ソリッド編み」によって、デジタルなものづくりを実現するプロジェクト

http://100banch.com/projects/10126/

最後に今回のセミナーを振り返り、林さんと高橋さん、楠本さんが総括としてコメント。楠本さんは、以下のように話しました。

 

楠本:多くの100BANCHのキーワードに触れ、「どのプロジェクトも現代のルネサンスだな」と思いました。今、ユヴァル・ノア・ハラリの著書『サピエンス全史』(河出書房新社)がベストセラーになるように、人間は本来の人間性を取り戻すことが重要だと感じています。それは、人間の回復であり、テクノロジーが人間の野生をもう一度回帰させているような気がします。これからも100BANCHと一緒に人間の原点をアップデートできるようなワクワクするチームを生みだしていきたいと思います。

 

100BANCHの活動を通して、登壇者が思い思いに未来の兆しを語り合った2時間。これから私たちが見つめていきたい本質や向かうべき先を大いに感じられた時間となりました。今後の100BANCHの活躍にも目が離せません。100BANCHに興味がある方は、ぜひ見学にお越しください!

WRITER

100BANCH編集部

船寄 洋之

writer / gallery / coffee

鳥取県生まれ。アパレルメーカー、出版社を経て、横浜・反町にH.Funayose galleryをオープン。ギャラリー運営のほか、ライター業や出張コーヒースタンドもおこなう。

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